元フィギュアスケート日本代表の鈴木明子さんがこのほど、自身初の著書「ひとつひとつ。少しずつ。」(税別1200円)の刊行を記念したサイン会を紀伊国屋書店(東京都新宿区)にて行った。会場ではファンとの触れ合いを楽しんだほか、現役を引退した率直な気持ちや今後の活動への思いを語った。

初の著書「ひとつひとつ。少しずつ。」(税別1200円)を刊行するフィギュアスケーターの鈴木明子さん

まだ引退の実感がない

バンクーバー、ソチと冬季五輪で2大会連続入賞するなど、女子フィギュアスケート界の第一線で活躍してきた鈴木さん。3月の世界選手権を最後に現役を引退したが、「現在もバタバタとアイスショーなどに出演していて、まだ(引退の)実感がない。けれど競技生活を無事終えられて、ほっとした。幸せな競技生活だった」と、満足げな表情を見せた。「でも、まだまだ私のスケート人生は、競技という形ではないですが続いていくので、これからもよろしくお願いします」と、今後もフィギュアスケートにさまざまな形で関わっていくことを明言した。

スケート人生はまだまだ、と語る

そっと背中に手を添えてあげられるような本に

現役時代から「自分が経験してきたことを、スケートを滑ること以外でも伝えたい」との思いがあり、その第一歩として同書を書き上げた鈴木さん。いくつものスランプを乗り越えてきたことから、「立ち止まってしまったとき、そっと手を背中に添えてあげるような」本に仕上げようと、素直な言葉をつづったという。

摂食障害を患い、体重が32kgまで落ちたこともあったとのこと。「スケートしかしてこなかったから、スケートができないことが一番つらかった」と語り、そんな時代を支えた母の言葉なども書かれている。

恩師の「誰が教えていると思ってるの? 」

フィギュアスケーターとして好成績を残せるようになったのは20代半ばを過ぎてからと、遅咲きだった鈴木さん。「オリンピックに出られるとも思っていなかったし、人生何があるかわからない。希望だけは失っちゃいけない」と思っていたという。

その鈴木さんを二人三脚で支えたのが、著書にも頻繁に登場する恩師・長久保裕コーチだ。「時に反発することもあったそうですが……」と水を向けられると、「よく反発、ですね」と笑いながら即座に訂正。それでも、2004年に同じく長久保コーチの教え子である荒川静香さんが世界選手権で優勝した際に、「本当に何気なく小さな声で『あんなふうになりたいな』って言ったら、長久保先生が隣で『できるよ。誰が教えていると思ってるの? 』と言ってくれた」と続け、恩師とのマル秘エピソードを明かした。

当時、やせ細っていた鈴木さんは、「そんなことを言ってくれるのは、世界中でこの人だけ」と、ずっとついていこうと決めたという。2週間、口をきかないこともあったそうだが、その師弟関係の絆の強さが伺えた。

恩師とのエピソードを明かした

夢は振付師、そして結婚も

今後は振付師にもなりたいそうだが、「今はまだいろいろな人の振り付けを見て、学んでいる状態」と、まだまだ勉強中とのこと。まずは自分のプログラムを自分で振り付けしたいそうで、「(競技では)ジャッジの受けが悪いかな、と思って入れなかったプログラムや選ばなかった曲もあった。今後はもっと自由に、いろんな顔を見せていきたい」と意欲を見せた。

また、先月末に誕生日を迎え、今年が20代最後となる鈴木さん。「(結婚を)母にもせかされる」とはにかみ、「いいご縁があれば……結婚はしたいと思っています」と結婚願望も明かした。

その場でサインを書く鈴木さん

ファンとのツーショット撮影も行った

先着100名のみのサイン会には多くの女性ファンが駆けつけ、「同世代の女性が多く来てくれていて、読んでほしいと思っていた世代の方たちなのでとてもうれしい」と喜んだ。鈴木さんはツーショットの写真撮影をまじえながら、訪れたファンとの交流を楽しんでいた。

終始、おだやかな笑みとともにファンと言葉を交わした