JR九州の新幹線・在来線で走行試験を行うフリーゲージトレイン(軌間可変電車)新試験車両のプレス公開が19日に行われた。20日未明から走行試験もスタートしている。

プレス公開されたフリーゲージトレイン新試験車両

新試験車両は、「FGT-9001」(1号車)・「FGT-9002」(2号車)・「FGT-9003」(3号車)・「FGT-9004」(4号車)の4両編成。新幹線(標準軌1,435mm)・在来線(狭軌1,067mm)の両区間で走行可能とされ、軌間変換装置にて車輪のロックを解除し、ガイドレールに沿って車輪が移動することで、左右の間隔を自動的に変換できるという。

プレス公開はJR九州の熊本総合車両所で実施され、車両外観のほか、運転室と2号車車内も公開された。とくに台車への関心が高く、カメラを向ける関係者の姿が多く見られた。

新試験車両の車体は「新在直通運転」に対応したサイズ

公開に先立ち、国土交通省、鉄道・運輸機構、JR九州による概要説明も行われた。国土交通省鉄道局の技術開発室長、岸谷克己氏はフリーゲージトレインの技術開発の経緯について、「鉄道・運輸機構を開発主体とし、平成9年度から技術開発に取り組んでいます。現在、技術評価委員会において、基本的な走行性能に関する技術は確立していると評価いただき、あとは耐久性の検証・分析を残すのみ。新たに耐久走行試験を行うこととし、平成24年度にさらなる軽量化を図った新型車両の設計・製作に着手しました」と説明した。

先頭車側面にデザインされた「FGT」のロゴも目立つ

2012年6月、国土交通省は九州新幹線長崎ルートに関して、フリーゲージトレイン導入を前提に工事実施計画を認可している。同ルートへのフリーゲージトレイン導入をめざし、技術開発が進められてきた。

岸谷氏は九州新幹線新八代駅付近の接続線に設置する軌間変換装置にも触れた上で、「新しい試験車両で新幹線区間・在来線区間・軌間変換装置を繰り返し走行し、3年間で60万km走り込む『3モード耐久走行試験』を行います。この3年間はフリーゲージトレインの開発と今後の実用化に向けて非常に重要な時期。最後の大詰めの段階と考えており、鉄道・運輸機構やJR九州と連携を取りつつ、平成34(2022)年度の九州新幹線長崎~武雄温泉間の開業に間に合うよう、着実に試験を進めたい」と述べた。

新試験車両の概要については、JR九州の鉄道事業本部フリーゲージトレイン開発推進部長、森光毅氏が説明を行った。「この車両は新在直通運転を行うため、在来線に対応した車体の4両編成となります。先頭形状は流線形のなめらかなフォルムで、トンネル進入時の騒音などにも配慮し、先頭部の長さを8mに伸ばしました。内外装とも赤を基調とし、外観は『ディープレッド』『シャンパンゴールド』の2色。『FGT』のロゴを側面の4カ所に付けました」と森光氏。動力性能・ブレーキ性能は新幹線区間で800系相当、在来線区間で885系相当とされ、新幹線区間の目標最高速度は時速270km、在来線区間は時速130kmとなった。

さらに、「JR九州管内の新幹線区間には35パーミルの勾配があるため、全電動車の4両編成で、機器配置上は4両1ユニット方式としております。新幹線の2万5,000ボルト、在来線の2万ボルトに対応した交流専用車両となります。台車はこれまで開発されてきたものをベースに、今回の耐久試験に備え、メンテナンス性・信頼性に配慮したつくりとしています」と森光氏は説明。軽量化にも取り組み、主電動機やダンパー類の小型化などにより、1両あたり約2トンの軽量化が図られた。「車体はアルミ合金製の気密構造で、先頭部の一部にCFRP(炭素繊維強化プラスチック)を採用しました」とのこと。