Web/モバイル技術を活用したシステムによるITサービス・ソリューションを提供するオープンストリームは、先月、スマートデバイス向けアプリケーションプラットフォーム「Biz/Browser AI」の新バージョンをリリースした。

Biz/Browser AIは、業務用Webプラットフォームとして10年以上の実績を持つ「Biz/Browser」の特性を引き継ぎながら、スマートデバイスに対応。新バージョンは新たにiOS端末もサポートし、スマートデバイスの業務活用に選択肢が広がった格好だ。

同一のソースでiPad、Androidの両環境で動作するアプリケーション環境を提供し、ネイティブアプリケーション開発が不要なために高い開発効率とメンテナンスコスト低減が期待できる。従来のBiz/Browserと同じ言語での開発が可能なため、これまでの資産を活かしながら、デスクトップ向けの「Biz/Browser V」、ハンディターミナル向けの「Biz/Browser Mobile」と組み合わせるなど多様な業務システムへの応用が可能になる。

Biz/Browser AI システム概要図

三菱重工の汎用機・特車事業本部 本工場(神奈川県相模原市)では、早くからこの「Biz/Browser AI」とタブレット端末を活用した生産現場の"見える化"に取り組んでいる。日本を代表する生産規模を持つこの企業も、製造現場は多機種少量生産の波の中にあり、常に改善・改革が求められている。しかし現場には『紙文化』が根強く、現状把握から改善施策導入までにどうしても時間がかかっていたという。

そこで注目されたのが、タブレット端末を利用した『ペーパーレス化』だ。生産現場のリアルタイムな"見える化"を目指した。

現場の"見える化"から品質チェックまでリアルタイムで

最初に導入されたのは、ラインの稼働時間や完成した製品数を登録する「実績把握システム」。稼働率や生産計画の達成率をリアルタイムに確認できるようになったことで、"見える化"の手応えを掴んだという。これは2012年11月に10台の端末で稼働を開始し、2014年度内に大幅な機能向上と工場内全ラインへの導入を計画している。

また、2013年10月から導入された「e-KIT報告システム」では、大型エンジンの組み立てに必要な部品の情報をタブレット端末に配信し、部品置き場から製造ラインに払い出すための指示とチェックを電子化。日々の生産計画に効率よく対応しながら、正確な作業が可能になった。今後は音声による指示・入力機能を採用した新バージョンが本格的に展開される予定だ。この他、2014年度から稼働予定の「棚卸しシステム」や、生産品質チェックリストの電子化もBiz/Browser AIをプラットフォームにして進められている。

「e-KIT報告システム」システム概要図

ネイディブ開発が不要、自社メンテナンス可能な点が最大の理由

同事業本部がタブレットを利用したシステム構築にBiz/Browser AIを選んだ理由のひとつが、システムの企画・開発から運用・改修まで、そのライフサイクル全般に自社内で対応できることだ。これをアウトソーシングすれば小さな改修も外部に委託せざるを得ず、対応に時間がかかってしまう。製造現場からのニーズに対応するまで数ヶ月かかるのと、きめ細かに対応するのとでは、現場の協力姿勢も変わってくる。

また、クラウド環境で動作するBiz/Browser AIならクライアントのOSに依存せずに動かせることも長期的な運用にとって重要なポイントだ。OSに依存したシステムがOSサポート終了に伴ってどんな影響を受けたかは、記憶に新しいところだ。また、端末の機種選択に幅が広がることから運用だけでなく導入コストや拡張時のコストも抑えることができる。

Biz/Browser AIはObjective-CやJavaによるネイティブアプリの開発を必要とせず、専用ツールを使って簡単に開発を習得できることに加え、豊富なライブラリも提供されている。インタフェースやマニュアルが日本語で、技術サポート情報が充実していることも、新たなシステム構築に臨む開発者にとっては心強いはずだ。

実務上の導入効果としては、リアルタイムで稼働を把握できるようになったことから、現場ごとにそれぞれ独自の進め方をしていた部分が明確になったことが挙げられる。紙の書類では同じ書式でありながら異なる使い方をされていたのだ。現在は、こうした作業の標準化を進めながらシステムが展開されている。Biz/Browser AI採用により、システム構築の大幅なスピードアップとコスト削減、そして現場改善という導入効果が形になったと言える。

時代や環境がどんなに変わっても、本当に役立つシステムを作るには、各工程の作業から製造計画全体までの深い理解が必要であることに変わりはない。同時に、進化するスマートデバイスのポテンシャルを活かした柔軟なシステム構築が、現場の改善にも効果を発揮することが事例から読み取れる。同事業本部では、今後Biz/Browser AIをスマートデバイスを使ったモバイルシステムの標準環境として採用することを構想している。