米Microsoftが今年4月2日からサンフランシスコで開催していた開発者向けカンファレンス「Build 2014」で発表したように、「Windows 8.1 Update」が4月9日から公開される予定である。それに伴い日本マイクロソフトは、都内で同アップデートに関する説明を行った。最初に登壇したのは、同社執行役 常務 コンシューマー&パートナーグループ担当の香山春明氏だ(図01)。

図01 日本マイクロソフトの香山春明氏

香山氏は最初に担当分野である法人市場の急成長に触れた。2013年7月からWindows搭載PCの出荷台数は二桁成長となり、10月以降は昨年度比で毎月150パーセント以上を記録。法人に比べてエンジンのかかりが遅かったコンシューマー市場も、年明けからプラスに転じ、2014年3月は昨年度に比べて倍に近い出荷台数だったという。

もちろんWindows XPのサポート終了や、消費税アップの駆け込み需要も考えられる。と前置きしながらも、選択肢の多いコンシューマー向けデバイスの中で、Windows搭載PCが選ばれる理由として、「お客様が(Windows搭載PCの)価値を見直しているのではないか」と述べた。

さらに香山氏は、IDC Japanが4月7日に発表した「国内Windows XP搭載PC稼働台数の実績および予測」を引用し、Windows XP搭載PCの国内シェアが順調に低下していることを明らかにした。資料によると、2012年12月末は法人が45.5%、個人が2%と比較的高い。だが、2014年6月末は法人が8.7%と一桁台に達し、個人も6.6%と、法人と個人が逆転した。

さらに、7~11.6インチにおけるOSシェアにも言及。2013年第1四半期は10パーセント程度だったWindows OSも、2013年には26%まで成長。iOSやAndroidが占めていたタブレットOS市場にも"食い込んでいる"ことを明らかにした。香山氏によると、8インチサイズの各社Windowsタブレットが発売されてから、シェアも向上したという。日本マイクロソフトの調査によれば倍に近い出荷台数を実現し、同社が掲げている年内33%の目標も実現可能と自信を見せていた(図02~03)。

図02 Windows XP搭載PCのシェア。2014年6月末時点で法人・コンシューマーともに一桁台まで落ちた

図03 7~11.6インチタブレットのOSシェア率。Windows OSのシェアは順調に成長し、Microsoftが掲げた目標に達する可能性は高い

最後にBuild 2014で明らかになった発表内容についても言及。MicrosoftのOperating Systemグループ担当EVP(エグゼクティブ・バイスプレジデント)のTerry Myerson(テリー・マイヤーソン)氏の発言を引用し、「継続的なWindowsのイノベーションを進めていく」と述べた(図04)。

図04 米Microsoftのカンファレンス「Build 2014」で語られたTerry Myerson氏の発言や、同カンファレンスで明らかにされた製品/サービス群

Microsoft CEO(最高経営責任者)のSatya Nadella(サティア・ナデラ)氏が「(世界は)モバイルファースト、クラウドファースト(へ向かっている)」と述べているように、Microsoftの戦略を見ると従来のソフトウェアを軽んじている印象を受けるユーザーも少なくないだろう。そのことを鑑みてか、香山氏は「Terryが語ったようにパートナーと協力しつつ、Windows開発に関して今後も強化する」と述べた。

次に登壇したのは日本マイクロソフト 業務執行役員 Windows本部 本部長の藤本恭史氏。Windows搭載PCの導入事例などを紹介しつつ、Windows 8以降の流れを改めて説明。Windows 8以降のアップデートを「ユーザーの声を迅速に製品に反映して提供」した結果であると述べた(図05)。

振り返ってみれば、Windows 8は2012年10月、Windows 8.1は2013年10月、そして今回のWindows 8.1 Updateは2014年4月と、1年、半年という間隔でリリースしている。藤本氏は、Windows 8を(Windows 7からの)メジャーバージョンアップ、Windows 8から同8.1をマイナーバージョンアップ、そして今回リリースするWindows 8.1 Updateをアップデートとして紹介した(図06)。

図05 日本マイクロソフトの藤本恭史氏

図06 Windows 8からWindows 8.1 Updateまでのリリースタイミング

以前からMicrosoftの発表会では、「ラピッド・リリース」という言葉が使われてきた。これは当時CEOだったSteve Ballmer(スティーブ・バルマー)氏が掲げたものだが、「Windows OSを頻繁に更新」する仕組みを採るとしたものだ。Windows 8.1のリリースも(Windows OSに限れば)短い期間だったが、今回のWindows 8.1 Updateはさらに短い期間でリリースにいたっている。

藤本氏は今後のリリースタイミングなどに関しては一切非公開と回答を避けたが、Microsoft関係者が各所で語っているように、ユーザーフィードバックを反映し、適切なタイミングで頻繁にアップデートが続く可能性は高そうだ。

Windows 8.1 Updateの特徴 - 5つのポイント

図07 Windows 8.1 Updateに加わった5つのキーポイント

話をWindows 8.1 Updateに戻そう。藤本氏によると「世界には約15億人のWindowsユーザー」が存在するが、その中の約40%がタッチ機能をサポートするデバイスを使っているという。だが、残る60%のユーザーに対して、キーボードやマウスを中心に使用するユーザーのUX(User Experience:ユーザーエクスペリエンス)を提供するのが、Windows 8.1 Updateであると紹介した。

そして藤本氏は、Windows 8.1 Updateの特徴として、5つのポイントを取り上げて紹介。「洗練されたユーザーエクスペリエンス」は前述したキーボード&マウスのUX改善、「低コスト&最新ハードウェアへの対応」はCPUやメモリーといったシステム要件の改善、IntelのBay Trail-T(ベイトレイル)対応などをアピール(図07)。

「Internet Explorerの互換性向上」は新たに搭載したエンタープライズモードを指し、「幅広いモバイルデバイス管理」はBYoDなどのモバイルシナリオに対応するため、ポリシー設定の強化が加わっている。そして「より簡単になった企業内展開」は、Windowsストアアプリのサイドローディングに関するライセンスの変更が加わったことを明らかにした(図08~11)。

図08 スタート画面に関する変更点を紹介したスライド

図09 Windowsストアアプリとデスクトップとの連動性を紹介したスライド

図10 マウス用ユーザーインタフェースがWindowsストアアプリに加わった

図11 Windowsストアアプリ使用中もタスクバーにアクセスできる

Windows 8.1のデモンストレーションは、日本マイクロソフト Windows本部 溝口宗太郎氏が行った。スタート画面に加わった電源ボタンの操作や、新規インストールしたアプリケーションのメッセージを紹介。さらにアプリビューに加わった新規アプリケーションのハイライト表示や、スタート画面におけるコンテキストメニューの動作などを披露した(図12~16)。

図12 日本マイクロソフトの溝口宗太郎氏

図13 Windows 8.1 Updateは、スタート画面からスリープや再起動といった電源操作が可能に

図14 スタート画面左下には、新規インストールしたアプリケーション数が示される。このメッセージはマウスオーバーで再表示可能

図15 アプリビューに切り替えると、新規アプリケーションはハイライト表示される

図16 スタート画面のタイルを右クリックするとコンテキストメニューが現れる。複数のタイルに対しての操作も可能だ

筆者は見落としていたが、Windowsストアアプリ版Internet Explorer 11には、「常にアドレスバーとタブを表示します」というオプション項目が加わり、文字どおり常にタブが表示させることが可能になったという。溝口氏が説明したように、本来、Windowsストアアプリ版Internet Explorer 11は、「コンテンツをすべて表示する」というコンセプトで開発されたものだ。確かにユーザーの好みに応じて選択できるので、UXという面では向上しているが、個人的には首をかしげてしまう(図17)。

図17 Windowsストアアプリ版Internet Explorer 11には、常にタブやアドレスバーを表示するオプション項目が加わった

Internet Explorer 11に加わったエンタープライズモードのデモンストレーションも披露した。エンタープライズモードは、イントラネットなどで多く見られる「Internet Explorer 8専用ページ」を正しく表示させるというもの。デモンストレーションでは、デスクトップアプリ版Internet Explorer 11を使っているにもかかわらず、「最新バージョンではない」というエラーメッセージが示され、バージョンチェックに失敗していた。

だが、エンタープライズモードを有効にすることでコンテンツは正しく表示された。アドレスバーの先頭には同モードが有効であることを示す、ビルディング状のアイコンが現れる。

エクスプローラーに関しては、ナビゲーションウィンドウに並ぶ「OneDrive」のコンテキストメニューに、「同期する」「同期を一時停止する」などの項目が加わったことを紹介。溝口氏は「従量課金制ネットワークなどを利用する際に使って欲しい」と述べていた。なお、同様の機能はWindowsストアアプリ版OneDriveのアプリバーにも用意されている(図18~20)。

図18 Internet Explorer 11でアクセスした状態。バージョンチェックに失敗し、「IE 8より古い」といわれてしまう

図19 エンタープライズモードを有効にした状態。コンテンツが正しく表示されている

図20 ナビゲーションウィンドウに並ぶ「OneDrive」のコンテキストメニューには、OneDriveとの同期に関する項目が加わっている

この他にも、Xbox Musicのコンテンツをスタート画面にピン留めし、同アプリケーション(ミュージックアプリ)経由の再生や、タスクバー上のボタンをマウスオーバーすると現れるサムネイル画面にコントロールが加わったことを紹介。同アプリケーションが非アクティブでも楽曲の再生が可能だという(図21~23)。

図21 Xbox Musicのコンテンツは、スタート画面にピン留めできるようになった

図22 スタート画面にピン留めされた状態。関連付け先はXbox Musicとなる

図23 ボタンのサムネイル画面から楽曲の一時停止や再生と行ったコントロールが可能

Windows 8.1 Updateは、その名が示す通り、SP(Service Pack)やSR(Service Release)のように、サポートライフサイクルへ影響をおよぼさない存在である。そのため本アップデートを適用しても、Windows 8.1の延長サポート終了日はWindows 8と同じく2023年1月10日のままだ。さらに、以前から提供されていたWindows 8からWindows 8.1へのアップデートプログラムは、Windows 8.1 Updateが適用済みになるという(図24)。

図24 Windows 8.1 Updateのリリース方法と各種タイミング

阿久津良和(Cactus)