講談社の別冊少年マガジンに連載されている「進撃の巨人」が、年齢性別を問わない幅広い層に人気だ。講談社では2月から、KDDI(au)とコラボレーションしたスマートフォン向け公式サイト「進撃の巨人 for auスマートパス」を公開した。こちらもファンから高い支持を得ている。

そこで今回、マイナビニュース編集部は講談社を訪れ、モバイルコンテンツや電子書籍などを統括する責任者に同サイトの制作秘話や読者の反響などを聞いてきた。応対してくれたのは、デジタルビジネス局 局次長 デジタル第一営業部 部長の吉村浩氏だ。

講談社 デジタルビジネス局 局次長 デジタル第一営業部 部長の吉村浩氏。「auスマートパスだからこそできる表現がある」と語る

―― どのような経緯で、講談社とKDDI(au)のコラボレーションが決定したのでしょうか。また公式サイトを提供するプラットフォームにauスマートパスを選んだ理由についても教えて下さい。

講談社では、"ガラケー時代"からKDDIさんと様々なコラボを展開してきました。今回のコラボは担当者同士の何気ない会話を発端にして、徐々にかたちになった―― という感じです。

auスマートパスには「良いコンテンツがあれば、お金を出してでも楽しみたい」と考えるお客様がたくさんいらっしゃいます。会員数は1,000万人を突破したとのことですが、その多くが"コンテンツ消費意欲"のある方々です。こうしたサービスは、日本でも数少ないと認識しています。したがってファンの方にはもちろん、「進撃の巨人」をまだ読んだことのない方にも、「進撃の巨人 for auスマートパス」を通じて大きなアピールができるのではないかと考えました。

―― 2月にオープンした「進撃の巨人 for auスマートパス」ですが、どのような利用者層を想定していますか。

「進撃の巨人」は、読者層が幅広いのが特徴です。子どもに薦められたのがきっかけで、親がハマったという例も聞いています。そのため、ターゲット層を絞るようなことは考えていません。

―― サイトのデザイン面でこだわっている部分はありますか。

雑誌やコミックスは「少年誌」というくくりですが、それに対して「進撃の巨人 for auスマートパス」はデジタルの展開を意識して、スタイリッシュなデザインを採用しています。サイトのトップは雑誌の表紙をイメージしました。「CLOSEUP INTERVIEW」として、毎回巻頭インタビューを組んでいます。

進撃の巨人 for auスマートパスのサイトから。トップには毎回、登場人物へのインタビュー記事が掲載される趣向だ(写真左)

―― 連載の読み物や記事、ユーザーが投稿して楽しめるコーナーなども設置されていますね。

例えば、"ふたりのキャラクターが雨宿りをする"というシチュエーションを想定した連載サイドストーリー「雨宿りの情景」があります。この連載には、原作にはないような"IF"の会話劇を盛り込んでいます。ユーザーさんからも好評です。

あとは「ひとコマ大喜利」ですね。こちらは、一般ユーザーさんが参加する投稿型のコーナー。こちらからは毎月3つのお題を出題し、ユーザーさんが原作に好きなキャプションをつけていきます。先日、第1回目を締め切り優秀賞の発表を行いました。わずか半月で3,000件近い投稿がありました。すでに読んでいる方はもちろん、まだ読んでない方の興味も惹けるようなコンテンツになったと自負しております。

関係者の裏話が聞けるコーナー「進撃な人々」や、「読者限定 最速掲示板」など多彩なコンテンツを提供している

作品の舞台ウラを支えるキーマンにインタビューする「進撃な人々」も、コアなファンに楽しんでいただける内容です。いま予定しているのは、コミック販売局 コミック宣伝部の担当者です。漫画がヒットした裏側でどんな活動があったのか、このコーナーで紹介していきます。

このほかにも百科事典型コンテンツの「進撃データベース」や読者同士で語り尽くせる「読者限定 最速掲示板」などを用意しています。こちらは読者同士のコミュニケーションが生まれる場になっています。サイトの更新頻度は、原則として毎週2回以上。基本的に、ずっと更新し続けていくというコンセプトで運営しています。毎日変化が楽しめるサイトですので、是非多くの方に訪れてほしいと思います。

―― サイトがオープンしてしばらく経ちましたが、ユーザーの反応について、詳しく教えてください。

どのコーナーにも良い反応が届いています。例えば連載サイドストーリーは原作の細かいネタやエピソードを、しっかり拾って書いています。その"原作愛"みたいなものがユーザーさんにも伝わっているようで、とても好評です。

先ほどお話しした投稿のコーナーには「そうきたか」と唸ってしまうものや、思わず笑ってしまうものなどが寄せられています。中には、つい「うまい」と言ってしまったものも。この先、投稿コーナーには常連さんが出てくる可能性もありますね。楽しみです。

提供するコンテンツは、今後も拡充していく予定です。様々な企画を準備しています。「進撃の巨人」は幅広い読者層を抱えているので、幅広い楽しみ方ができるようにコンテンツを揃えていきたいと思っています。その中で、皆さんなりの楽しみ方を見つけていただけると嬉しいです。

―― 直近では、どのような展開を予定していますか。

4月9日にはコミックスの新刊(13巻)、および掲載誌の「別冊少年マガジン」が発売になります。それらの表紙をスマートフォンで写す事でアクセス可能になる、特設掲示板を公開します。これにはKDDIさんが提供するARアプリ「SATCH Viewer」という技術を利用しています。読者限定で自由にコミュニケーションがとれる場として、お楽しみいただきたいと思います。

有楽町線・護国寺駅からすぐの講談社 本社で取材させていただいた

また既刊のコミックスに対しても、SATCH Viewerを活用した「進撃の巨人」ファン向けのコンテンツを提供します。内容としては、市販のDVDには、副音声で解説を行う「オーディオコメンタリー」が特典についていることがありますよね。それをテキストベースで提供するイメージです。単行本の全ページにコメントが付く前代未聞の試みで、制作サイドとしては大変ですが、全力で取り組んでいます。

このほか、4月10日、11日、12日、ミューザ川崎・ラゾーナ川崎プラザ(神奈川県川崎市)にてauスマートパスpresents「進撃の巨人」プロジェクションマッピングを開催します。これは、都市の中心に"実物大"で出現する60m級の「超大型巨人」を堪能できる催しで、同イベントをベストビューで楽しめる特別観覧チケットを「auスマートパス」会員限定(1,000組2,000名を招待)で用意しています。初日の4月10日の模様はニコニコ生放送の中継を予定しています。「進撃の巨人」の声優陣も出演し、「進撃の巨人 for auスマートパス」をお楽しみいただけるオリジナルコンテンツとなっています。その他にも、5月3日、4日の横浜スタジアムを皮切りに、全国のスタジアムで「進撃の巨人×リアル脱出ゲーム『ある城壁からの脱出』」を開催します。両イベントとも、スマートフォンの枠を超えた、リアルな「進撃の巨人」を体感できるイベントとなっているので多くの方に参加いただけたら幸いです。

―― コンテンツを作成する際に気を付けているポイントはありますか。

原作のイメージをしっかり引き継ぎ、コンテンツを制作するよう心がけています。先生の作品をお預かりしてアレンジする立場上、先生の世界観を損なわずにクオリティを保つことが最重要事項になります。それが、ひいてはファンを裏切らないということにもつながります。もちろん今回、原作者の諫山創(いさやま・はじめ)先生ご自身に監修いただいています。

「進撃の巨人 for auスマートパス」では、原作の内容に踏み込んだストーリーを展開しています。そのため当初、先生からは「許可できるかどうかは、仕上がりの質次第」と言われていました。できあがったコンテンツを見ていただいた際、先生からは「心配は杞憂でした」とのお言葉をいただき、一同ホッとした次第です。

―― 最後に、マイナビニュース読者に向けてコメントをいただけますか。

「進撃の巨人 for auスマートパス」では、これからも更新頻度を上げていく予定です。「進撃の巨人」という作品を、皆さんに深く知ってもらうきっかけになれば嬉しいです。