今シーズンのフィギュアスケートでは数多くのドラマが生まれた

「世界フィギュアスケート選手権大会2014」が3月30日、閉幕した。今シーズンの主要大会はこれですべて終了となったが、2月のソチ五輪をはじめ、多くの感動をくれたフィギュアスケート。今シーズンの国際スケート連盟主催の主要大会における日本人選手たちの激闘の軌跡や、数々のドラマを簡単に振り返ってみよう。

GPファイナル初優勝の羽生選手、4度目Vの浅田選手

まずは昨年12月に開催されたグランプリ(GP)ファイナルだ。同大会は、男子では羽生結弦選手が初優勝を、女子では浅田真央選手が2年連続4度目の優勝をそれぞれ飾った。特に羽生選手は、自己ベストを一気に30点近くも更新するトータル293.25をたたき出すなど、圧巻の演技を見せた。

続く1月の四大陸選手権は、男子で無良崇人選手が優勝し、女子では19歳の村上佳菜子選手が自己ベストとなる196.91で金メダルに輝いた。

男女でドラマが起きたソチ五輪SP

2月にはソチ五輪が行われた。日本からは羽生選手、高橋大輔選手、町田樹選手、浅田選手、鈴木明子選手、村上選手の計6名が出場した。

ドラマはSPから起こった。五輪初出場となった羽生選手はSP史上初となる100点超えの101.45をマーク。昨年末に現役を引退した安藤美姫さんもツイッターで「羽生くんうんまっっ!!!」とつぶやく完璧なパフォーマンスで、世界中に「HANYU」の名を知らしめた。一方で日本女子のエースとして、メダル獲得の期待もかかっていた浅田選手はジャンプに精彩を欠き、まさかの暫定16位発進となった。

海外紙も羽生選手を大きく報道

迎えた男女それぞれのフリー。暫定1位で挑んだ羽生選手は、4回転サルコウと3回転フリップで転倒するなど決して本調子ではなかったが、トータル280.09で世界選手権3連覇を誇る実力者、パトリック・チャン選手(カナダ)を4.47点差でかわし、金メダルを獲得した。町田選手は5位、高橋選手も6位と男子全員が入賞となった。

日本男子史上初となる同種目の金メダリストを海外メディアも大きく報道。「ニューヨーク・タイムズ」「ガーディアン」「USAトゥデイ」「ウォール・ストリート・ジャーナル」などの有名紙が独自の取材や視点に基づく記事を掲載した。また、羽生選手の演技中の前後は、深夜にも関わらず東京電力管内の電力需要が高まるという現象が起こった。

女子では浅田選手の演技が多くの人の感動を呼んだ。代名詞・トリプルアクセルをはじめとする全6種類の3回転ジャンプを計8回跳び、すべて着氷に成功した。142.71というスコアは、フリーの自己ベスト(136.33)を大きく更新。最終順位は6位だったが、その演技にツイッターなどで「ありがとう」と感謝する声が多く見られた。鈴木選手は2大会連続入賞となる8位、村上選手は12位だった。

浅田選手のSP世界歴代最高記録が生まれた世界選手権

そして記憶に新しい3月の世界選手権。高橋選手に代わって出場した小塚崇彦選手以外は、ソチ五輪と同じメンバーが出場した。男子SPでは、演技直前にファンから「愛してる~」と非常識ともいえる声援が送られた羽生選手は3位発進。町田選手がSP自己ベストの98.21で暫定トップに躍り出た。

女子SPでは、トリプルアクセルを含む3度のジャンプをほぼ完璧にこなした浅田選手が、女子のSP世界歴代最高記録となる78.66で暫定1位に付けた。この浅田選手のパフォーマンス直後には、ソチ五輪の男子シングルで銅メダルを獲得したデニス・テン選手(カザフスタン)も「何てすばらしいプログラムだ!」とツイッターでつぶやいている。

羽生選手が逆転で初V、浅田選手は3度目の優勝

勝負を決するフリー。男子では、史上まれに見る激戦が繰り広げられた。SP3位の羽生選手は、基礎点10点以上のジャンプを5度すべて成功させるなどの渾身(こんしん)の演技で、SP1位の町田樹選手を0.33点上回るトータル282.59で、逆転での初優勝を飾った。羽生選手と親交のある元フィギュアスケート選手のジョニー・ウィアーさんも、その優勝を喜んだ。なお、日本人男子による同大会のワンツーフィニッシュは史上初。

女子は浅田真央選手が、SPでの勢いそのままに自己ベストとなるトータル216.69で4年ぶり3度目の優勝を飾った。また、今大会を最後に現役引退する鈴木明子選手は、情感のこもった演技でトータル193.72の6位でフィニッシュ。表彰台には届かなかったが、演技後は晴れ晴れとした表情で会場のファンに一礼をし、リンクに別れを告げた。

国際大会におけるフィギュアスケーターたちの激闘は、世界選手権にて幕を閉じた。当面、華麗な舞はアイスショーなどでしか楽しめないが、今冬にはまたあの熱い戦いが始まる。ファンは首を長くして待つとしよう。

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