少子高齢化が進むなか、企業におけるシニア人材の活性化に注目が集まっている。そうしたなか、シニア人材と周囲がどのように協働し、職場のパフォーマンスを高めていくのか、またシニア人材がその気づきを得るためのきっかけづくりとはどのようなものなのかについて調査を行い、そのヒントを集めてきた成蹊大学福澤光啓研究室が主宰する「シニア人材プロジェクト」が、3月14日に正式に発足。それに伴い同日「シニア人材マネジメントを考える 実証研究・調査プロジェクト キックオフ会」が開催された。

産学連携先行プロジェクトの研究結果を発表

東京・吉祥寺にある成蹊大学キャンパスで行われたキックオフ会には、企業の人事・教育担当者やその支援企業担当者などが参加。人材育成支援や人事コンサルテングなどを行うアルーと共同で実施したシニア人材プロジェクトでの調査結果の報告とともに、シニア人材マネジメントのあり方についての議論も繰り広げられた。

ビジネスリサーチラボ 伊達洋駆氏

冒頭、ビジネスリサーチラボの伊達洋駆氏が、キックオフ会とシニア人材プロジェクトの趣旨について解説を行った。同社は、大学と企業の間に入り、ヒト・モノ・カネ・情報の流れを円滑にするなど、産学連携を促すような事務局的な仕事を手がける。

シニア人材プロジェクトとは、福澤研究室に拠点を置いた研究プロジェクトである。シニア人材が活躍できる環境をつくり、雇用とのバランスを取りながら生産性を向上していくことを目的に、企業と共同で様々な調査研究を手がけていく。

この日は、プロジェクト立ち上げに先行して行われた、アル-との産学連携事例の概要が紹介された。シニア人材プロジェクトでは、こうした具体的な産学連携の成果を示しながら、共に研究を進めていける企業パートナーを募集していくという。

伊達氏は、「企業の課題感と研究者のスキルの接点となるところを今後探っていきながら、産学連携での研究をサポートしてきたい」と訴えた。

生産性向上と雇用創出のバランスを取りながらシニア人材活用を

成蹊大学 経済学部専任講師 福澤氏

続いて成蹊大学経済学部専任講師の福澤氏が登壇し、プロジェクト立ち上げに際しての学術的な問題意識についての見解を述べた。福澤氏は、東京大学大学院経済学研究科 ものづくり経営研究センターでのシニア人材活用のフィールドワークで得られた知見から、ブルーカラーとホワイトカラーのシニア人材活用の共通項について言及。モノやカネなど価値を生み出す点や、そうした価値をつくるためにコミュニケーションを駆使する点などが共通しているとした。

「ブルーカラーに関してはシニア人材活用について先進的に取り組まれているが、そこでの知見やノウハウをホワイトカラーにも生かせるようにしたい。生産性向上などの効率化と雇用創出の両方をホワイトカラーにおいても可能とする方法を考えていくことが重要だと見ている」と福澤氏は言う。

シニア人材の現状については、厚生労働省の統計によると高齢者雇用確保措置を「実施済み」とした企業の割合は92.3%に達しているなど、希望者全員が65歳以上まで働ける企業の割合が大幅に増加している。過去1年の60歳定年企業における定年到達者のうち継続雇用した人の割合も76.5%となっている。

「想定通り、順調にシニア人材は増えてきており、制度面などそれを活用する環境も整ってきている」(福澤氏)

同氏は、東京大学ものづくりインストラクタースクールの事例を中心に、ものづくり現場におけるシニア人材活用の取り組みを紹介した後に、この取り組みから得られた学びをホワイトカラーの人材活用に応用することの必要性を説いた。

そして最後に福澤氏は、「どのような現場であっても、モノ・カネ・情報の流れを効率化していける知識の一般化というのは、長年培った固有の技術を有するシニア人材だからこそできるのではないか。ホワイトカラーのシニア活用に関する議論は、実践面と理論面の両方でこれからますます重要になっていくだろう。そこで我々は、経営学やその他の学問分野における知見を総動員して科学的なアプローチを進めていきたい。実務的な方々との協働がカギとなるので、関心のある方にはぜひともプロジェクトに参加していただきたい」と呼びかけた。