2013年12月、バッファローから「Windows Storage Server 2012 R2」搭載の法人向けNAS「テラステーションWSS」が登場した。今回はその中から、中規模オフィスに適した4ベイモデル「WS5400D0404WR2」の試用機が届いたので、さっそく機能面や実際の使い勝手を見ていこう。

Windowsと高い親和性を持つNAS製品

現在も4月9日に迫ったWindows XPのサポート終了の対応に追われる企業が多数見られるが、実際に、それだけWindows系OSの法人利用率は高いという裏付けにもなっている。そんな中登場した「テラステーションWSS」は、OSに最新の「Windows Storage Server 2012 R2」を搭載。Windowsクライアント端末を使用している環境下で、高い親和性を発揮してくれる製品となっている。

「TeraStation WSS WS5400D0404WR2」の主な仕様
   [搭載OS] Windows Storage Server 2012 R2 Workgroup Edition   [最大ユーザー接続数] 50   [容量] 4TB(1TB×4ドライブ、SerialATA II)   [インタフェース] 1000BASE-T対応LAN×2、USB 3.0×2、USB 2.0×2、UPS専用端子×1   [サイズ/重量] W170×D230×H215mm/約7.5kg   [価格] 17万6,000円(税別)  

「TeraStation WSS WS5400D0404WR2」は4ベイモデル。「テラステーションWSS」には2/6ベイモデルやラックマウントモデルもある

背面のインタフェース

まず操作性では、Linuxを搭載したNAS製品と比べて、普段から使い慣れたWindowsと同じUIで扱えるのがポイントだ。リモートデスクトップ接続により、簡単にNASの各種設定や管理を行うことができるため、管理者の負担も少ない。さらに、Windows Storage Serverは、Windows Serverでファイルサーバを構築するより、圧倒的に手間が少なく低コストだ。ハードウェア・ソフトウェアにかかる初期導入費用が少ないだけでなく、クライアント数に応じたライセンス(CAL:Client Access License)も必要ない。

WindowsOS搭載のメリットでは、Active Directory(AD)に対応している点も挙げられる。これにより、Active Directoryサーバに登録されているアカウント情報を利用して、テラステーション内のファイルやフォルダに対してアクセス制限をかけることができる。実際、ディレクトリサービスにADを使用している企業は非常に多く、このADと連携してアクセス管理が行えるのは、セキュリティも担保でき、システム管理者としても大きなメリットとなる。

また、NTFSクオータを設定することで、ユーザー・グループごとに利用可能なHDD容量を設定することもできる。

そのほか、WindowsOS搭載のメリットとして、「Microsoft Azure(旧名称:Windows Azure)」との連携も挙げられる。

Microsoft Azureの連携ソリューションは、ベーステクノロジーが開発する連携ソフトウェアによって実現され、高い信頼性とセキュリティに優れたバックアップサービスとなっている。同社よりNAS本体・連携ソフトウェア・導入支援サービスなどをセットとした「QuiXストレージ for TeraStation WSS」として、2014年5月上旬からの販売開始が予定されている。

これにより、クラウド上へのデータ保全によるBCP対策の強化も容易に行えるようになり、「テラステーション WSS」上の大切なデータを誤消去してしまった場合などに、Microsoft Azureのバックアップ履歴から任意の情報を復元できる。

また、インターネット経由でいつでもどこでもMicrosoft Azure上のデータにアクセスできるため、外出中の社内資料利用もより柔軟に行えるのだ。

WindowsOS搭載し、親しみやすいUIで設定・管理ができる

なお、Windows Storage Server 2012の詳細については、「中堅中小企業に導入が進む、Windows Storage Server 2012の魅力」の記事も参照してほしい。

市販のソフトウェアをインストール可能

Windows Storage Server OSの特徴的な部分が、さまざまな市販のソフトウェアをインストールできる点だ。たとえば、シマンテックの「Symantec System Recovery Server Edition」をインストールすると、システムも含むNAS内のデータを丸ごと圧縮イメージとしてバックアップすることが可能だ。スケジュール設定により、定期バックアップが行えるほか、有事の際も短時間でのリカバリができる。

また、ウイルス対策にはトレンドマイクロの「ServerProtect」が利用できる。こちらは、NAS内へファイルを保存した際に、自動でウイルスを検知・隔離・駆除してくれるソフトウェアだ。もし、ウイルスに感染したファイルがNAS内に紛れ込んでも、最近問題となっている、ネットワーク経由の二次感染の被害を抑えることができる。

「Symantec System Recovery Server Edition」をインストールすれば、NAS内のデータを丸ごと圧縮イメージとしてバックアップすることが可能

「ServerProtect」を利用すれば、共有ファイル経由でのウイルス感染を防ぐことができる

災害対策では、CAの「CA ARCserve Replication」が有効だ。このソフトウェアを使うと、複数拠点に設置したNASをインターネット経由で接続し、保存データを同期する遠隔レプリケーション環境が構築可能だ。東日本大震災の発生以降はディザスタリカバリ(DR)対策を強化する企業が増えているが、そうした中で、低予算のDR環境が構築でき、万が一の場合には、迅速なデータ復旧と業務再開ができるのは大きな強みだ。

今後、これら3つのソフトが、Windows Storage Server 2012 R2に早期対応することを期待したい。

用途に応じて選べるラインアップも魅力

今回の試用機したWS5400D0404WR2は、「テラステーションWSS」の中でも中規模オフィスに適した4ベイモデルだ。ディスク容量は4TB(1TB×4)で、Intel Atom デュアルコア 1.86GHzやDDR3 4GBメモリを採用。一般的なNASと比べてスペックが高く、複数ユーザーによる同時アクセス(最大接続ユーザー数:50)でも快適なデータ転送が可能となっている。

特徴的機能としては、仮想ディスクとシン・プロビジョニングが挙げられる。仮想ディスクでは、USBポートに接続した外付けハードディスクを組み合わせて仮想ディスクを作成し、1つのディスクとして見せることができる。

仮想ディスク

一方、シン・プロビジョニングでは、将来のデータ容量の増加を見越して物理ハードディスクの容量を超えたサイズを設定することで、容量が不足してきた段階で外付けハードディスクを増設すれば、設定なしで容量を追加できる。管理者が最初に設定しておけば、容量が不足してきた段階で、ユーザー自身で増設ができるのだ。

管理画面

実際の使用感は、Windows OS搭載モデルならではの親しみやすい操作感が印象的だ。これまで主流となっていたLinuxベースのNASも決して悪くはないのだが、一度Windowsベースの操作性を体感してしまうと、元には戻れない使い勝手の良さがある。

もし、4TBで容量不足を感じるようなら、4ベイモデルには8TBや12TBのモデルもラインナップされている。また、6ベイモデルなら最大24TB、1Uラックマウンドモデルなら最大16TBまで利用できるので、用途に応じて機種を選択すると良いだろう。

また、データ重複除去/DHCP/DNS/WINSサーバといった各種機能を利用したい場合は、同時接続ユーザー数も無制限になるWindows Storage Server 2012 R2のStandard Editionを搭載したモデルもお勧めしたい。

「テラステーションWSS」は、ファイルサーバを導入したいがWindowsサーバでは敷居が高い。ただ、企業として、しっかりしたセキュリティ対策は行いながら管理したい。「テラステーションWSS」は、そんな中小企業のニーズにフィットしたNASとなっている。