最近のホットなキーワードとして、ソーシャルが注目されている。

一般に「企業におけるソーシャルの活用」というと、TwitterやFacebookを活用したコンシューマユーザー向けのマーケティング活動をイメージする読者は少なくないだろう。個人でSNSを活用していると、そうしたプロモーションを目にする機会は非常に多い。しかし、いわゆる企業向けソーシャルはプロモーションではないし、Facebookのようなオープンなコミュニティを企業で活用することでもない。

企業向けソーシャルとは、SNSが持つ技術や文化を、セキュリティ対策やコンプライアンス対応が施された安全な形でビジネスシステムに統合し、社内コミュニケーションを変革し、イノベーションを起こそうという取り組みである。 企業向けソーシャルプラットフォーム「Jive」を提供する米ジャイブソフトウェアの日本オフィス代表 東貴彦氏と同マネージャー 藤武琢也氏に、企業向けソーシャルの価値と魅力について話をうかがった。

日本オフィス代表
東 貴彦 氏

日本オフィスマネージャー
藤武 琢也 氏

企業内のあらゆるコミュニケーションを統合する

従来から用いられているコミュニケーション手段としては、「電子メール」や「共有フォルダ(ファイルサーバ)」のほか、Notesやサイボウズなどに代表される「ワークフローシステム(コラボレーションツール)」があげられる。 国内では、こうしたコミュニケーション、コラボレーションツールの普及度は高く、わざわざ新しいものは必要ないという声も聞こえてくる。しかし東氏が問いかけるのは、こうした個々のツールによって従業員の労働生産性や企業の収益性などが向上しているかという点だ。

「メールは基本的な通信ツールとして1対1の“会話”には役立ちますが、1対多で良質な“コラボレーション”を生むことがないのが殆どです。1日に何百ものメールを受け取る状況では、CCされたメールを読まずにゴミ箱に捨てることもあるでしょう」(東氏)

そうしたメールの不足を補うために、世の中には共有フォルダやワークフローなどのさまざまなツール類が存在する。しかし、こうしたツールを個々に利用している状況では、さらなる問題が発生する。 「メールだけでも管理がままならないのに、そうしたツール類に分散してしまった情報をビジネスに活用しようというには無理があります。ある資料がいずれかのメールに添付されているがどこにあるかわからないという状況は、誰しもが経験していることです」(東氏)

ジャイブソフトウェアの考える理想は、企業内のあらゆる情報を1つのシステムの管理下に置くことによって企業内のすべてのコミュニケーションを実現することである。この理想を実現するのがJiveプラットフォームだ。 「コミュニケーションによって生じるすべての情報を管理して、ビッグデータとして扱うことができれば、どのようなアプローチでも適切な情報を得られるはずです」(東氏)

「人」「場所」「コンテンツ」で情報を分類・アクセス

Jiveでは、あらゆる情報を「People(人)」「Place(場所)」「Contents(コンテンツ)」という3つのカテゴリに分類し、必要な情報を探しやすい環境を実現している。 まず第一のPeople(人)、情報は人に依存していることが多い。「その情報はAさんが詳しい」「Bさんがその情報に関するレポートを書いた」というような状態だ。

第2のPlace(場所)は、様々なコミュニティを意味する。営業部、人事部などの組織的な場所を示す場合もあるし、特定の目的をもったプロジェクトを示す場合もある。 そうした人や場所から生み出されたものが、第3のContents(コンテンツ)である。上述したようなレポートであったり、映像・画像であったり、形態はさまざまであろう。

「何らかのキーワードで検索すると、“だれが詳しい・こんなドキュメントがある・このプロジェクトで議論されている”といった情報が表示されます。それが、Jiveです」(東氏)

"ドライブ"を入力した際の検索結果

非定型なコミュニケーションに貴重な情報が含まれる

Jiveが従来のコラボレーションツールと決定的に異なるのは、ソーシャルプラットフォームであることだ。

「いわゆるコラボレーションツールは、定型化された情報をシステムにアップロードすることが“情報共有”とされています。では、非定型データはどうするのでしょうか。例えば、顧客とのフランクなメールのやり取りにも、貴重な情報が含まれているはずです。“○○ならAさんが知ってるよ”というメッセージもナレッジではないでしょうか」(藤武氏)

ソーシャルであれば、コミュニティ上で質問を公開することで、情報を持った人物へつながることができる。メールの伝達で情報・人物を探すことに比べて、はるかに迅速なコミュニケーションが可能だ。Jiveは、そうしたソーシャルの利点をさらに昇華させ、人と情報のつながりやコミュニケーションという非定型知をも、ナレッジとして共有することができる。

とは言え、「なぜ自分の情報を共有しなければならないのか。ライバルに塩を送るなど」という考えのビジネスパーソンがいないわけではない。

「CRMシステムが登場したとき、そうした抵抗はよくありました。何とかしようと利用を強制したために、失敗してしまった企業もありました。ソーシャルプラットフォームが面白いのは、コミュニケーションという自然な形で情報が共有されるところにあります」(東氏)

情報共有ツールに格納される情報は最終的なドキュメント類であり、せいぜい途中のバージョンが保存されているのが関の山で、ディスカッションなどの経過情報を保存するものなどない。 例えば、何らかの製品開発に失敗があった場合、どこに問題があったのかを検討することがある。Jiveであれば、途中の議論にさかのぼって、考えそのものから見直すことすら可能だ。

「Jiveで行われたディスカッションは、まるごと保存されていますので、途中でプロジェクトに参加したメンバーも、すぐに理解することができます」(藤武氏)

コミュニティマネージャと共にソーシャル文化を育てる

Jiveで実現される機能は非常に多岐にわたり、ここで細かに解説できるようなものではない。一般的なソーシャルツールで考えられるコミュニティやタイムライン、メッセージングといったコミュニケーションツールはひと通り揃っているし、企業向けにディスカッションを統制する機能も実装されている。モバイルアプリも用意されており、ドキュメントの共同編集や写真の投稿なども可能だ。

「Jiveの最大の特徴は、良くも悪くもカバレージの広さにあると思います。例えば1時間の商談で紹介できるのは、全機能の1割にも満たないでしょう。そこで私たちは32個のユースケース(活用事例)を用意して、ビジネスニーズに最も適した使用方法を提案するという手法を採っています」(東氏)

ユースケースの一例

またユーザー側においても、従来のツールのように「ハイ使ってください」というような導入方法では効果はでない。Jiveの本質はコミュニティにあり、コミュニティを動かすのは人間であるからだ。 「Jiveでは、“コミュニティマネージャ”がコミュニケーションをガイドする役割を担います。多数のコミュニティマネージャを育成するには時間がかかります。そのため私たちは、段階的な導入をおすすめしています」(東氏)

まずは強い目的をもった開発部門などに導入し、そこで成功したら横展開を図る。それと同時に、コミュニティマネージャのスキルも普及させていく。それがJive、企業向けソーシャルを導入する際のポイントである。

ジャイブソフトウェアでは、企業向けソーシャルの導入を成功に導くため、最も重要な最初の企画・計画から支援するコンサルティングサービスも提供している。社内コミュニケーションに不満がある、既存のシステムを生かしながらよりよい情報共有が図りたいといった要望がある企業は、ぜひコンタクトを取っていただきたい。