サイバーエージェント/アナリストのライブ分析で見えてきた改善点と施策

サイバーエージェント ウェブアナリスト小川氏

ウェブサイトやスマホサイトでのサービスにおいて、単純にサービスを提供するだけでは結果を生み出せないことは、多くの企業にとって課題となっている。ウェブサービスはビジネスへ参入しやすいという利点があるが、消費者が大きく主導権を握っていることから、淘汰もされやすい。この勝敗の差を生むものは何なのだろうか。それは、特殊な構造や多額の投資ではなく、ちょっとした「数字の見方」なのかもしれない――。

サイバーエージェントのウェブアナリスト/小川卓氏は2月17日、「第4回 Webクリエイターのためのスキルアップ勉強会」にて、売上を左右するアクセス解析のノウハウを惜しみなく伝えた。2時間に及ぶセミナー中、小川氏が何度も強調したのは、「なぜ、なぜ」と、顕在化している数字の要因や背景に考えを巡らせること。小川氏が手がけた解析の一端を疑似体験することで、数字の羅列から次第に改善点が浮かび上がってくるから不思議だ。取りこぼしのないようメモをとる、参加者の真剣な眼差しも印象的だった。

デバイスや購入フローに想像力を働かせる

小川氏が最初に、Webサイトを改善するうえでの3つのポイントを示した。

【ページの価値を見極める】

小川氏によると、アパレル商品は家電や物件などと異なり、購入するまでの検討期間はぐっと短くなる。こうした商品特性に着目しアクセス解析をすると、売れ筋商品が流動的に変わることが分かる。

キーワードからは、春服が1月頃から検索されており、どのページに誘導すべきかを判断できる。さらに、収益を訪問者数で除した「ページの価値」や「CV時ページの価値」を比較すると、売れ筋のページや商品が絞り込まれる。

ECサイトの事例では、「ページの価値」を指標とした際、「5,980円均一ページ」が「トップス全般」よりも値が10倍以上高いことが明らかとなった。このように小川氏は見るべき指標を決め、さらにセグメントとトレンドを比較する点をポイントにあげた。

【デバイスの特性を見極める】

さらに、小川氏が同サイトのメルマガの現状を把握したところ、受信者の半分近くがスマホユーザーであることが分かった。

スマホの特性は、テキストメールのほうがHTMLメールに比べ、流入とコンバージョン率が高いという結果に表れている。しかしながら、メールの件名や本文を目視すると、その内容はスマホに対応していないことが一目瞭然。商品画像のリンク先がTwitterに設定されていたり、ブランド名の10文字が件名フォームを占め、用件がわかりにくいという課題を抱えていた。そのため小川氏は、本文から商品画像のURLに直接リンクを貼るほか、件名に売り出し中のアイテムを表示するなどの改善策を提案した。

そうした積み重ねの結果、CV率は5ヶ月で約0.5%上昇したという。「改善点は、数字だけを追いかけていても見えない」と小川氏は言い切る。購入者の立場で、実際にさまざまなデバイスで登録してみることが必要と強調した。

【施策を見極める】

ECサイトの最たる目標は、売上を上げることにある。まずは、売上目標に対しての達成方針を明確にすること。つづいて、業務プロセスの評価指標(KPI:key performance indicator)を決定していく。

ECサイトの場合、このKPIは算式(売上=訪問者×平均訪問回数×コンバージョン率×単価)に表される。右項のいずれかの数値を上げれば売上があがることから、「訪問者を増やす」「リピーターを増やす」などの策を講じていくという。

たとえば、「単価」を増やすには、商品を複数購入する全身コーディネートを提案。リピーターの割合を特定するためには、累計2回以上購入÷累計1回以上購入の割合など指標を設け現状を把握し、既購入者にオススメメールを送るなどの個別対応を講じる。

小川氏は、「いくらKPIを設定しても、施策なくして目標は達成できない」と繰り返す。目の前の分析が何を実現するものなのか。同氏は幾度と、アクセス解析の根本を確認した。

セミナーの中では、上記ECサービスの事例以外にも様々な事例を紹介していたが、かなり具体的に突っ込んだ内容だった関係も有り、残念ながらレポートからはその紹介を割愛させていただく。

こうして各事例を見ていくと、小川氏は数値を追うだけではなく「考える」ことを尊重している。社内アナリストによるプロジェクト横断型の勉強会も、その最たる例だ。複数のアナリストが、思い込みを捨て課題に取り組むという積み重ねこそが、新しい施策を生むのだと考えさせられた。

次の時代を見据えた施策と投資を

終盤では、「ライブ分析」を通し、小川氏の視点を疑似体験することができた。小川氏があるECサイトを表示していくと、入力フォームでは電話番号やFAXなどすべてを入力しなければならない、スマホでラジオボタンを押せない……といった問題が浮かび上がる。そうした課題に対し同氏は、その場で改善策として連絡先のいずれかを入力するだけで処理できるようにしたり、プルダウンにするなどを提案した。

このように大局的にサイトを確認し、どこがよくクリックされるか、どのような動線になるかと仮説をたてて原因を特定するという流れを共有することで、問題の本質を見極める視点を学ぶことができた。

「日進月歩でデバイスもプログラムも変化する。そうした次のトレンドを見据えつつも、技術に依存しすぎず、人間が最適な施策を講じることが大切」小川氏が最後にこう締めくくると、会場からは鳴り止まない拍手。「自らの業務にどう活かせるか」と堰を切ったように質問が相次ぎ、参加者の熱気は最後まで冷めやらなかった。

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