トヨタが「アクア」の車名にちなみ、「水」をテーマに発足させた参加型社会貢献プログラム「AQUA SOCIAL FES!!」(以下、ASF)。これまでに全国47都道府県で238回開催され、2万人を超える参加者が、地域の自然保護活動に汗を流してきた。3年目を迎えるASFのこれまでとこれからを、ASFを統括するトヨタマーケティングジャパンの折戸弘一氏にうかがった。

「AQUA SOCIAL FES!!」が3年目を迎える

地道な取り組みの成果を、早くも2年目で実感

「まさか2年目で具体的な成果が得られるとは思っていなかった」と、折戸氏は振り返る。ASFがめざしてきたのは、地域の人々に参加して楽しんでもらうことで、地元の環境が良くなり、エコカーである「アクア」への共感も得られるという「個人」「社会」「企業」三方良しのキャンペーン。2年目はそれぞれにおいて手ごたえを感じたという。

トヨタマーケティングジャパンの折戸弘一氏。コミュニケーション局プロモーション室第1プロモーショングループでグループマネージャーを務める

まず、「社会」面での成果。自然保護は、短期的には結果を得づらい地道な取組みだが、環境改善の兆しと受け取れる出来事は各地のASFで見られたそうだ。

たとえば、アカウミガメの産卵地である静岡県の海岸では、砂浜の減少を防ぐための垣根作りやゴミ拾いなどが2年連続で行われた。その後、アカウミガメの上陸回数の増加が認められたという。自ら全国のASFを駆けまわり、静岡でも活動に励んだという折戸氏は、「(ASFが)直接影響しているのかどうかはわからないが」と前置きしつつ、「少しは関係しているんだろうと思えるし、参加された方々もうれしいはず。『今年も産卵に来ました』と、後でご報告いただくこともあった」と笑顔を見せた。

次に「個人」面。近年、ボランティアツアーが話題となるなど、とくに若年層で社会貢献への意識が高まっているという。実際、ASFの参加者も、2年目には30代以下が67%という結果に。日頃、保護活動の人集めに苦労している各地の団体からは、「ASFは明らかに違う。若い人たちがたくさん来てくださる」と驚きの声を上げているそうだ。

これについて折戸氏は、「トヨタがやっているノリのいいイベントということで、参加しやすいのかも」と分析。ASFでは、参加者の一体感を高めるために全員分のビブス(サッカーの練習などで着けるベスト)を用意するなど、「参加者にとってその場がどれだけ楽しいものになるか」(折戸氏)に気を配ってきた。それが累計参加者2万2,682人、平均年齢28.6歳という数字に表れているのかもしれない。

そして「企業」としての面。「世界一の低燃費を誇る『アクア』が世に出れば出るほど、化石燃料の節約につながるという意識を我々は持っている。そんなブランドだからこそ、環境にいい活動をしているんだというところが伝わるといい」と折戸氏が説明するように、ASFはキャンペーンとしての側面を持つ。即効性が期待されるテレビCMなどと違い、中長期的なブランド強化という意図のプロモーションだ。早くも2年目で、環境への取組みに共感し、「アクア」を購入したというケースが耳に入ってきたとのこと。

成果はASFのFacebookページにも表れている。同ページでは、3万人以上から「いいね!」を集めているのだが、「これはトヨタのFacebookページのなかで一番多い。大量のCMを投下して集まったものではなく、『参加して楽しかったから』書き込んだという人がいて、そういうところから地道に広がっていった」(折戸氏)そう。こうした共感の広がりも、予想以上のスピードで進んでいるようだ。

「AQUA SOCIAL FES!!」は全国で開催され、多くの参加者から共感を得ているという

3年目のASFは「より地域に根差した活動へ」

3年目となるASFは、4月下旬の山口県での開催を皮切りに、全国で107回の開催を予定している。折戸氏はASFのこれからを、「より地域に根ざした活動にしていきたい。これまでも取り組んできたことではあるが、開催地域の関係者にもっと広がりを持たせたい」と語った。各地でASFを開催するにあたって、地方紙や自然保護団体、大学、自治体、販売店など、多くの地域関係者が連携している。このつながりの中で、ASFに限らず、広く関係を構築したいとの思いがあるようだ。

その事例のひとつとして、昨年、岩手県三陸海岸で開催されたASFが挙げられた。これはもともと年間スケジュールにあったものではなく、急遽追加されたプログラムだという。岩手県では、北上川でもASFが行われてきたが、その連携の輪が岩手県庁へ広がったことで、三陸海岸での追加開催につながったのだ。

「きっかけは昨年秋、三陸海岸が日本ジオパークに認定されたこと。そこで県から、『アクアと組んで何かやりたい』というオファーがあった。我々としても、岩手工場で『アクア』を生産しているという縁もあり、地元販売店の協力もあった」と折戸氏は語った。

こうした各地での「草の根的」な連携の中から、新たな「いいね!」が芽生えてくるかもしれない。なお、2014年度の「AQUA SOCIAL FES!!」サイトは3月31日にオープン。同時に山口県・鹿児島県・山梨県で開催されるプログラムも募集開始される。3年目を迎えるASFに、引き続き注目したい。

2014年度「AQUA SOCIAL FES!!」サイトオープン時に募集開始されるプログラム

開催場所 開催日 タイトル
山口県 4月27日(日) 「椹野川もり・かわ・うみ自然再生プロジェクト」
鹿児島県 5月10日(土) 「ベッコウトンボ観察会&藺牟田池ボランティアクリーン作戦」
山梨県 5月18日(日) 「富士山周辺の美しい自然を残そうプロジェクト」