シングルマザーといっても状況は様々

テレビや雑誌などで女性の貧困、とりわけシングルマザーの実態が取り上げられる時、シングルマザーとして生きる一人として、思うことは多い。もちろん、私自身も一例に過ぎないが、だいたいにしてメディアで取り上げられるものは、表層的な一部分にすぎない。 それはそれで仕方のないことだと思う。自分自身も違う境遇にある人々のことを部分的なことしか理解していないであろうし、同じシングルマザーでさえも、すべての人の実情を知るわけでもなく、語ることもできないのだから。むしろ危惧しているのは、表層的な捉え方をされることにより、余計にその深い部分が見えなくなってしまうのではないかということ。周囲が騒ぎ立てることにより、本質が見えなくなって思考停止状態になり、むしろ議論が退化してしまうのではないかと。

「シングルマザー」といっても様々

シングルマザーと言っても、状況は本当に十人十色だ。あくまで私自身が知る範囲、これまで関わってきた範囲だけではあるが、単純に離婚、死別、未婚(非婚)の3つに大きく分けられるし、その理由はおそらく皆さんが想像している以上に複雑で様々だ。そして生活実態に関しても、例えば十分な慰謝料、養育費、保険金、遺産で生活への不安のない人、母子家庭となる前から母一人でも十分に自活していくだけの生活力を備えていた人、夫の暴力から逃げるように裸一貫で飛び出してきた人など様々。また、実家暮らしや近くに親が住んでいて親に頼れる環境にある人もいれば、孤立無援で奮闘する人もいる。

同じシングルマザーということで、同志的な気持ちでつながるご縁もある。特に初期の頃は、心のよりどころや思いを共有できる人がほしかったり、話し相手ほしさにシングルマザーというだけで安易に結束しやすい。でも、つきあいが深まり、お互いの背景が明らかになるにつれ、状況の違いはもちろん、価値観、倫理観(例えば同じ非婚シングルでも、妻子ある男性との子を産んだ人、パートナーが亡くなった後に妊娠が発覚した人、子の認知があるかないかも様々)の差異によって、時に傷つけあってしまうこともあり、発言に気を付けたり、お互いを気遣うがゆえに疲労したり、ストレスを抱えてしまうこともある。

ただ、どんな境遇にあるにしても、シングルマザーとしての子に対する思いにはそれほど大きな差はない。どんな人であっても、子供に対しては愛情を持っているものだからだ。

我が子が"かわいそうな子"とされる苦痛

シングルマザーとして生きていく上での一番の辛さは、生活や将来の不安以上に、個人的には世間の偏見や差別だ。それは、メディアが報じるシングルマザーの実態や、テレビドラマや映画で描かれる母子家庭が、幼い子を抱えて健気に奮闘するという感情移入しやすいステレオタイプなシングルマザー像が多いせいもあるだろう。その結果なのだろうか、「母子家庭=貧困」という目で見られることが多い。

所得の状況は別にして、自分自身に向けられるそうした目線は甘んじて受け入れられたとしても、世間から我が子が"かわいそうな子"という烙印を押されることはどうしても受け入れ難いもの。私自身も、子供には決してそうした負のレッテルを貼らせまい、何より本人に自覚させてはならないと、両親が揃った家庭の子以上に愛情を注いで必死だった頃があった。今にして思えば、それは少々自意識過剰だったかもしれない。子供が小さい時は、家族連れで賑わうような場所へ母子だけで行くのが辛かった。きっと周囲の人は誰も気になど留めていないのに、自分で勝手に卑屈になっていくのが嫌になり、親切に手を差し伸べてくれる人に対してまで、心を閉ざしていた時期もあった。

身代わりがいない辛さ

一方、シングルマザーならではの悩みとしては、やはり単純に身代わりがいないこと。夫がいるママ友が「夫が家事や育児を手伝わない」と愚痴っている。しかしシングルマザーの場合は、育児は自分1人でするものだと割り切っているので、夫婦間の役割分担で不満を募らせるシーンがないのは、逆に気楽だったりもする。家事にも育児にも誰も口出しはしない。部屋が散らかっていようとも、単に自分の居心地が悪いだけの話で、誰にも咎められることはない。

ただ、自分が病気になった時はかなり辛い。だいたいにして子が病気をもらい、それが自分にもうつる。子が元気になり始める頃に、自分自身が発症して一番辛い時期と重なるというパターン。子供がインフルエンザの疑いで保育園から呼び出しがあり、急いで医者に連れていく間に、自分自身も体調の異変を感じ取っていて、子供を診てもらったついでに「私も絶対かかってると思うんです! 」と必死で医者に懇願。"保険"として処方が可能な漢方薬を出してもらったこともある。案の定、翌日には私が発症。子供は特効薬により順調に回復し、お腹を空かせてぐずっていても、私自身は台所に立つことができないというどうしようもない手詰まり感。とはいえ、それでも漢方薬と気合いでなんとか乗り切ったものだ。

ママの中には、仕事の帰りが遅く、夫が家庭にあまりいないことを嘆いて「我が家は母子家庭状態」と自虐的に言っている人もいる。きっと悪気はなく、つい口から出てしまった言葉だとはわかっているけど、真の母子家庭世帯はやはり傷ついてしまう。本当の母子家庭を経験していないから、そんなことを軽く言えるのかもしれないなと。シングルマザーにしてみれば、家にいなくてもそれなりに稼いできてくれる夫がいるだけいいと思う。万が一自分に何かあってもとりあえず身代わりがいるだけでもありがたいと思う。(次回へ続く)

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