東証一部上場の精密ばねメーカーのアドバネクス。その前身となる加藤スプリング製作所で培われた製品開発力と高い加工技術をベースに、国内はもとより、欧米やアジアでも多くの生産・販売拠点を構えている。また、近年ではプラスチック加工分野にも進出し、幅広く事業展開を行っている。本稿では、自動車やOA機器に加え医療分野へも事業を展開していく同社が、NTTPCコミュニケーションズ(以下、NTTPC)のデータセンター導入に至った経緯を紹介しよう。

データセンター活用のきっかけは”法定点検”

株式会社アドバネクス 業務管理本部 情報システム部 情報システムグループ 船木将成氏

日本国内に3つの工場と、全国に営業拠点を構えるアドバネクス。NTTPCのデータセンターを利用することになった経緯は「1998年頃、社屋の法定点検でメール送受信ができなくなるという事態が発生し、問題視されたことがきっかけです」とアドバネクス業務管理本部 情報システム部 情報システムグループの船木将成氏は語る。当初は、発電機を利用して電力供給を行い応急措置としていたが、根本的な解決にはならなかったため、24時間365日安定した電力供給ができるデータセンターにメールサーバーを移設することとなった。

「データセンターを利用したのはよかったのですが、今度は回線の問題をクリアしなければなりませんでした。メールサーバーを移設した98年頃は、業務に耐えうる通信速度を満たした回線を用意しようと思うと、そもそも市場に提供されているサービス自体が少なかった上に、非常にコストが高かったという問題もありました」と船木氏。NTTPCのIP-VPNか他社のフレームリレーか検討した結果、NTTPCのIP-VPNが高速かつ安定した品質だと判断し、導入に至ったそうだ。
その後、どのような経緯を経て現在の基幹システム移管へと推移したのか船木氏に伺ったところ、「2007年頃、基幹システムのリプレースを行う時期が訪れました。以前に比べ回線スピードも上がっていたため、それらをデータセンターに移管することにしました」とのこと。「その際、競合他社に比べ、NTTPCは断然コストが安かった」と船木氏は語る。現在は一部を除いてシステムの大半は移管を終えたそうだ。今後は自社サーバーで運用している残りのシステムもデータセンターに移管する予定だという。また、仮想化技術を取り入れるなど、さらなるブラッシュアップを続けるという。

アドバネクス 業務管理本部 情報システム部 情報システムグループ マネジャーの中西健二氏は「事業構造の改革に伴い、ビジネスシーンの変化への対応力が求められるようになってきました。そのような状況で、拠点ごとに社内でサーバーを持つということはフットワークを鈍らせるリスクが考えられましたので、NTTPCのデータセンターで一元管理することにより、対応力を引き上げていく狙いがありました」とのこと。実際に工場を新たに竣工した際、NTTPCのデータセンターで既に基幹システムが一元化されていたので、スムーズに業務を開始できたという。

ワンストップですべてを任せられる魅力

株式会社アドバネクス 業務管理本部 情報システム部 情報システムグループ マネジャー 中西健二氏

1998年にメールサーバーをデータセンターへ移設以降、分散していた基幹システムをNTTPCのデータセンターへ集約を推し進めてきたアドバネクス。同社がメリットとして感じているのはコスト面もさることながら、安心感だという。
「なんと言ってもワンストップで任せられるのは大きいですね。監視保守運用サービスを利用しているので、24時間NTTPCがサポートしてくれます。何かトラブルが発生した際は、NTTPCに連絡すれば調査してくれるので、情報システム担当者としては負担が軽減され、大きなメリットとして感じています」と船木氏。
中西氏は「弊社には柏崎に工場があり、実は中越沖地震で被災しています。工場の設備が倒れるなどの被害はあったものの、回線が寸断されることはありませんでした。有事に強いという点も、魅力に感じております」とのこと。




セキュリティには細心の注意を払いたい

受注生産での部品製造というケースが多いアドバネクスが抱える課題の一つに、クライアントから要求されるセキュリティレベルの高さがあるという。
「部品を製造する過程で、お客さまから図面をお預かりしなければならない。そのため顧客企業の担当者から、”どんなセキュリティ体制を取っているのか”といったアンケートや”ホスティングやクラウドではなくアドバネクスで管理できるサーバーにデータを置いてほしい”といった制約を受けることがあります」と船木氏。ノウハウが凝縮された図面の流出は避けなければならない。自社の情報はもちろん、大切なお客さまから安心して図面を預けてもらえるようなセキュリティ環境の構築などを実現するには、多重のセキュリティや耐震構造の建物といったハード面はもちろん、VPNによる暗号化されたセキュアな通信網など、NTTPCのデータセンターテクノロジーが役立っている。

分散していたサーバーを一元管理し、コスト面でも運用面でもグッと身軽になった同社は、サーバーの集約によって業務効率化が実現されているケースとして参考になりそうだ。

左から、株式会社アドバネクス 広報IR室 白華英氏、中西氏、船木氏