航空史上最大のミステリーになるのではないかと言われているマレーシア航空370便の失踪。3月24日にマレーシアの首相が緊急記者会見を行ったが、報道の内容を見ると、「イギリスの人工衛星の情報を分析した結果、消息を絶ったパースの西近郊は航空機が着水できる場所ではなく、海の底に沈んだと言わざるを得ない。生存者はいないと考えるべき」と、根拠や物証が語られることのない曖昧な発表だった。

軍事的な理由で情報を小出しにしているのではないかとの指摘もあるが、いずれにしろ真相はほとんど分からないままである。

あの時、マレーシア航空機に何が

事故の起こりにくい巡航時の出来事

マレーシア航空機が消息を絶ったのは高度1万メートルの上空での巡航時。離発着時のいわゆる"魔の11分"からも離れた時間帯だ。また、このボーイング777-200という旅客機は、昨年サンフランシスコで着陸時に起きたアシアナ航空機の事故が指摘されているようにパイロットの操縦ミスだとすれば、過去に故障などで死亡事故は起こしたことはない。

さらに、マレーシア航空機は主翼の端に修復歴があったが、それが原因で飛行に影響を及ぼしたとしてもいきなり墜落することはなく、少なくともパイロットが異常を察して管制に連絡する時間くらいはあったはずだ。

テロかハイジャックかとの説

そのため当初はテロかハイジャックではないかとの説が流れた。であれば、パイロットがトイレに行く時間か、客室乗務員がコーヒーなどを持って行く隙を見てコクピットに入ったということになる。

ただ、パイロットがトイレに行く時、一般の乗客は使用を禁じられ、セキュリティの厳しい航空会社ではサービスする時にもCAは客室の方を向きしっかり監視。いざとなればエマージェンシー・コールをするだろう。偽造パスポートで搭乗した乗客もいたが、いずれも政治犯とは考えにくいと発表された。犯行声明もなかった。

そして、今度はパイロットが関与した"ハイジャック"ではないかとの説も流れ、実際にマレーシア当局は機長の家を家宅捜査した。

トラブルによる墜落を指摘する声

そのうちに同機が消息を絶った約4時間後に、同機がACARSと呼ばれるデータを発信していたことが分かった。これは777をはじめとするハイテク機に装備されている航空通信システムで、運航に欠かせないデータを送信している。同機からは今回、エンジンのデータが衛星に送信されていたという。

それにより今度は、不安定な状況で飛び続けていたという見方が強まった。パイロットからの連絡がなかったため、既に操縦不能に陥っていたという見方である。考えられる状況としては、与圧システムの異常でパイロットが酸欠になったのではということ。離陸時に空気圧の足りない車輪から発火し、それを機内に格納したため煙にまかれる。そうした原因から墜落してしまった事例は過去にいくつかある。

他にも様々な情報があったが、いずれにしても今のところはどれも「憶測」にすぎない。機体が墜落したとされる海域は約3,000メートルの深さがあり、機内で何か起こったが分かるブラックボックス(フライトレコーダーとボイスレコーダーの通称)の回収には、相当な時間がかかると思われる。過去には、発見までに2年を要した事故もあった。