甲州・山梨県の土産品として大ヒット&ロングセラーの「桔梗信玄餅」。食感のよい小ぶりな餅を、あっぱれと言わざるを得ない大量のきな粉と黒蜜に絡めて食べるこの人気銘菓を、一度は口にしたことがある読者も少なくはないはず。

しかし! その美味なる桔梗信玄餅に"プレミアム版"が存在していることを知る人は、この広い世界にいかほどいるのだろうか。今、声を大にして伝えたい! 「おーい、『プレミアム桔梗信玄餅吟造り』ってめっちゃすごいぞー!!!! (名前も長いぞー)」。ちなみに価格は、通常版が1個150円のところ、プレミアム版は1個197円である。手の届く"プレミアム"だ。

気品さえ漂う「プレミアム桔梗信玄餅吟造り」。通常版が1個150円のところ、こちらは1個197円

こちらはおなじみの「桔梗信玄餅」。「吟造り」とはきな粉の色にも違いがある

今回「プレミアム桔梗信玄餅吟造り」(以下、「吟造り」)について取材にご協力していただいたのは、桔梗信玄餅の生みの親であり、銘菓の老舗「桔梗屋」四代目社長・現相談役の中丸眞治さんだ。

お土産品ではなく「贈答品」として開発に着手

「『吟造り』開発のきっかけはお客様の声。ありがたいことに『桔梗信玄餅』がお土産品として世間に認知され、そこから徐々に人気商品に成長してくれました。しかし、そうなることによって一般的になりすぎてしまったんですね、『桔梗信玄餅』を手土産にしても驚きや斬新な感じがしない、と。そこでお土産品ではなく、贈答品としても喜ばれる別バージョンを作ろうということになり、開発がスタートしました」(中丸さん)。

「吟造り」の発売は2001年。山梨県下の直営店から順次発売を開始したそうだ。桔梗信玄餅という人気ブランドを抱えているのに、新たにチャレンジする精神が素晴らしい。

消費期限はたったの……

箱を開けるときれいに整列した「吟造り」が。高級感溢れるたたずまい

「発売当時、世間がお菓子に求めていた味は、あまり甘くない"ビターな感じ"でした。ですから『吟造り』もお餅やきな粉本来の持ち味を引き出すつもりでしたし、従来のものより甘さを抑える構想だったんです。ただ、砂糖を減らすということは必然的に消費期限が短くなる、ということにもつながります。砂糖はお餅の柔らかさを保つためにも大事ですし、カビの防止にも一役買う存在。そのためバランスが非常に難しかったですね。よって、『吟造り』の消費期限は5日、大冒険でしたよ」。

消費期限、短いっ!! でも、それだけ"新鮮なお菓子"ということだ。息子さんで同社専務・中丸純さんの「おいしければ手土産にも使ってもらえるはず、だからこの短期限で勝負してみよう」という熱い提案が販売に踏み切る後押しになったそうだ。結果的に、お客さんの理解も大きく、贈答品としても手土産品としても重宝されているという。

風呂敷は通常版もプレミアム版も全て手結い、この瞬間も1つひとつ丁寧に結ばれているのだろう

「砂糖を減らすだけでは商品に"面白み"がないという意見も出て、黒蜜に山梨県産の『アカシア蜂蜜』をブレンドして優しい口当たりに仕上げました。また、きな粉は丹波種の『黒大豆』を使用しています。包装にもポリシーがあり、『吟造り』の"風呂敷"を結えるのは勤務10年以上のベテラン担当者だけ。丁寧な仕事で、真心を込めて世に送り出しています。『桔梗信玄餅』は手軽なお土産品として、『吟造り』は気持ちを込めた贈答品などに、ときと場合によってお客様に選んでいただけると幸いです」(中丸眞治さん)。

おぉー! 新米社員では風呂敷にさえ触ることができないこの徹底ぶり、お見それいたしました。まさにプレミアム! 「プレミアム桔梗信玄餅吟造り」は桔梗屋のホームページからネット通販もされているので、興味のある人は一度味わってみるのもいいだろう。

(文・A4studio 東賢志)