科学技術振興機構(JST)主催、学研ホールディングス、講談社の支援により、中高生向けの理系ワークショップとして、「「科学の甲子園全国大会」を体験してみよう!」が3月9日に大阪・本町の大阪科学技術館にて実施された。下は中学1年生から上は高校2年生の総勢40名(内訳:中学生25名(男子18名・女子7名)、高校生15名(男子8名・女子7名))が参加して満員という人気ぶりである(画像1)。今回はその模様をお届けする。

画像1。「『科学の甲子園全国大会』を体験してみよう!」の様子

「科学の甲子園」とは、JSTが主催する、理科・数学・情報を題材とした複合分野の競技において、高校生がチームを組んで科学の知識やその活用力をライバルチームと競い合う、理数系高校生のための競技会だ。1チーム(1校)を6~8人で組み、まずは都道府県大会に参加。野球の甲子園大会のように各都道府県で勝ち抜いた1チームが代表チームとして全国大会に参加できるという流れだ(今のところ、東京も北海道も2地区に分けられていないので、全国大会は全47校)。JSTが科学の甲子園を開催する目的は、科学好きのすそ野を広げるのと同時に、トップの生徒たちのより一層の学力伸長を目的としている。

資源のない日本を富ませるためには科学技術で常に世界をリードしていく必要があるのはいうまでもない(最近は、マンガやアニメなどのコンテンツ産業も伸びてきてはいるが)。そうした科学技術立国としての将来の日本を背負って立ってくれる世代を、ある意味、鍛える場を提供すると同時に、競技として「競い合う」という運動部の試合のような体験をさせ、また「チームでがんばる」といった楽しさなども導入することで、理数系分野での以前にはなかった楽しみ方を知ってもらい、そして理数系分野が好きな少年少女たちを増やしていこうというわけだ。

そして、その科学の甲子園の第3回全国大会が、2014年3月21日(金)から24日(月)までの期間で、兵庫県立総合体育館にて行われる。まだ3回目だが、回を追うごとに参加人数は増えており、第3回は6704名のエントリーがあった。そしてその中から勝ち抜いた猛者たち369名が全国大会に参加するという具合だ。そうした科学の甲子園を、中学生やまだ参加したことのない高校生にも体験してもらおうということで開催されたのが、今回の体験イベントなのである。

イベントは2部構成で行われた。第1部は第1回科学の甲子園全国大会でエキジビション競技として行われ、参加者を熱狂させたという「電子ブロック(学研の「大人の科学マガジン Vol.32 電子ブロックmini」)」を活用した「ミッション イン 甲子園 ~ 電子回路パズルに挑戦!」を実施。第2部は講談社の理系女子のための応援サイト「Rikejo(リケジョ)相談室」ということで理系女子OGによる中高生のための相談コーナーが開催された。

第1部で活躍した電子ブロックに関しては、30代半ばから上の男性の方なら(もちろん女性もいるとは思うが)、まず説明は不要だろう。よく覚えていない人でも、写真を見れば、「あー! あったね、これ!!」となるはずだ(画像2・3)。理数系スピリットを持って10代を過ごした人なら、小中学校の頃に1度ぐらいは興味を持ったことがあるのではないだろうか(筆者も子どもの頃に欲しかったが買ってもらえなかった/買えなかった1人)。なので、多数の人には説明不要かも知れないが、今回のイベントがターゲットとしている中高生世代はもちろんほとんど知らないと思われるので、ざっと触れさせていただく。

画像2(左):大人の科学マガジン Vol.32 電子ブロックminiのケース。「大人の科学」の付録が「電子ブロックmini」という形態の雑誌だ。画像3(右):電子ブロックmini。電子ブロックを組み合わせて50種類の回路を作ることが可能だ

電子ブロックは、「電子ブロック製造株式会社」が作り、学研がかつて販売していた電子玩具だ。実際のところ、玩具というにはあまりにも高性能・高機能で、さまざまなことを楽しみながら学べるテクノロジー系の学習教材的な意味合いも強いものだったのである。

子どもでもつまみやすいサイズのブロックが複数種類用意されているのだが(電子ブロックminiでも20種類25個ある)、それぞれがトランジスタ、LED、ダイオード、コンデンサ、抵抗といった1つの電子部品となっており、それを5×5のケース(電子ブロックminiの場合)に回路として正しくセットしていくことで、ラジオやアンプ、ワイヤレスマイクといったいくつもの電子機器(の機能を持った回路)にすることができるのである。

電子ブロックは何度でも取り外せるから、さまざまな回路を作って楽しめるのが特徴の1つ。しかも、同じ目的の回路でも自分なりのちょっとした工夫を加えられる場合も多い(同じ目的の回路は1通りではないということ)ので、創意工夫をする楽しさもある。得てして少年は機械好きなことが多いが、まさに少年の心をとらえて放さない要素を持っていた玩具なのだ。なお、電子ブロックminiの場合は、50種類の回路を作ることが可能だ。

電子ブロックシリーズは1度1986年に生産は終了したのだが、今回の教材として利用された電子ブロックminiのように、21世紀に入ってから復刻版が出された(2002年に「復刻版 学研電子ブロックEX-150」が発売され、2011年に電子ブロックminiが発売)。その結果、当時購入できなかったかつての子どもたちを中心に大ヒット。そのほか、iPad/iPhone版などもリリースされている。

ちなみに電子ブロックminiの本体価格3800円+消費税という具合で、中学生ぐらいでもちょっとお小遣いを貯めれば自分で買うことが可能だ。さらに、子どもの奥の手の「勉強したいから買って!」を使いやすい製品でもあるので、これぐらいならご両親のサイフのひももゆるむだろうというものである。筆者も子供を持つ親なので、小学生の子供にいわれたら間違いなく買っていた(ちなみに、電子ブロックminiの発売時点で筆者の息子たちはすでに大学生であった)。