他人の足元をまじまじと見たことがあるだろうか?  特にビジネスの現場では、他人の靴の細かなデザイン、縫い方にまで気を止めて見ることって、なかなかないのではないだろうか。

ビジネスマンの諸君、もしくはこれから革靴を履き始めるというあなた。毎日同じ靴を履いたり、紐の通し方が間違っていたり、そもそもスーツに合わない革靴を履いてしまったりしてないだろうか?  できるビジネスマンであれば最低限、ビジネスとフォーマルの違いだけは抑えておいていただきたい。ということで、他人からは教えてもらえない、しかし知らないと恥をかく(かもしれない)革靴の作法について考えていこう。

今回、革靴の作法について教えてくれるのは、REGALに勤めること30年以上、この道一筋というREGAL TOKYO店長の斉藤浩さんだ。

ビジネスシーンでの革靴選びの基本

まずは、ビジネスシーンでの革靴選びの基本を教えていただこう。 「革靴とは、ビジネスマンにとって、身だしなみの中で最後のポイントになるところ。スーツだったらスリッポンではなく、紐靴を。紐がないものにしたかったらモンクストラップをチョイスする。TPOに合わせて、靴選びをしたいですね」と斉藤さん。

ビジネスシーンでスーツに合わせるなら紐靴をチョイスしよう。紐なしならばモンクストラップがおすすめだ。(写真はダブルモンクストラップ)

「革靴は、仕事をする人にとって、仕事をアシストする大切なギアでもあります。デザインだけでなくサイズ選びを慎重にすることで、より快適な仕事ができる」。 足が痛いから考えがまとまらない、靴がガバガバで歩けないから営業に行けない、そんなことはもってのほか。自分の足にフィットしたもの、それが革靴の基本である。

「あとメンテナンス。どんなに素晴らしいスーツでも足元が汚れていると台無しです。身だしなみ、たしなみとして、足元にまで気を配るのが紳士、ビジネスマンに求められるマナーの一つ」。 どんな製法で作っているか、どんな素材を使っているかはさておき、その人のスタイルに合っているものであれば問題ない、と斉藤さん。またメンテナンスを考えると理想としては1週間5日間勤めだとして5足。黒3足、茶1足、雨の日用1足でローテーションするのがおすすめだという。

ビジネスシーンにおいては、TPO、サイズ、メンテナンス。この基本三か条には常に気を配りたいところだ。

最もフォーマルなシーンに向いているのは…

さて、冠婚葬祭をはじめとするフォーマルなシーンでの革靴。こちらは間違った知識で靴選びをしてしまっている方も多いのでは?

ストレートチップやウィングチップ、モンクストラップ、ローファー……革靴にはさまざまなスタイルがあるが、基本的に飾りのないものが最もフォーマルとされている。それは黒の内羽根式ストレートチップ である。内羽根は見た目が清楚で、ヨーロッパでは室内履きとして設えたルーツを持つ。一方外羽根は、開口部が大きく脱ぎ履きしやすく何よりもしっかりとしたフィット感で軍靴用に考案、後に狩猟用や屋外活動用に使用されたルーツを持っている。

【豆知識:整理してみよう】
内羽根式…アイレット(鳩目=靴紐を通すための穴)を乗せる皮の部分が内側に隠れているもの。見た目が奥ゆかしく清楚なので、フォーマルな場にふさわしい。
外羽根式…靴紐を解くとアイレットの下の皮が全開する。靴紐を強く結ぶことでフィット感を生むことができるので、ビジネスなら外回りなどの営業さん向き。

左から外羽根式プレーントゥ、内羽根式ストレートチップ、内羽根式ウイングチップ。

プレーントゥを基本として、後に革片(チップ)や穴飾りが付けられたり、素材——大きくはこれが値段の差となるーーを変えたりすることで、 "遊び"を含んださまざまなスタイルの革靴が登場したというわけだ。ちなみにローファーは脱ぎ履きがしやすいことから"怠け者"の意。スリッポンは文字通りSRIP ON=滑り込むで、どちらもよりカジュアルな部類に入ることもお忘れなく。

「結局オシャレというのはその人の個性でもあります。あえて狙ってやっているのであればOKということです。例えばエナメル靴。ドレスコードからすると、夜のフォ-マル以外での着用はNG。お召しになるものによっては内羽根のストレートチップを、またタキシードであればオペラパンプスとなるのですが、ただどの場合もその会の雰囲気に合っていれば問題ない。ファッションは楽しさの演出でもありますから、あえてエナメルを合わせるのもいいかもしれない。そういう意味で、昼間はいろんな場面に使い回せる、黒いストレートチップを履いておけば問題ありません」と斉藤さん。

シーンによる紐の結び方にも気を使って

そして紐にも気を使いたい。内羽根、外羽根によっても違うし、靴のデザインにもよって結び方は変わってくる。買ってきた靴をそのまま結んで履いてしまっているようなことはないだろうか?

「主な紐の通し方はシングル、パラレル、オーバーラップ、アンダーラップがあります。シングルは一番トラッドで、ビジネスシューズはもちろんドレスシューズにも最適です。よりキレイに見え、冠婚葬祭など脱ぎ履きをしないシーンではシングルです。パラレルは使い分けが微妙ですが、シングルよりスポーティで弾力性に富み長距離を歩いても疲れない。オーバーラップはフィット感がよく、キチンとしまるオーソドックスな結び方。アンダーラップは一番フィット感があって緩みにくいと言われています。マナ-として、どれが良い悪いはないです」。

シングル

パラレル

オーバーラップ

アンダーラップ

左がサテン、右が革の靴紐。靴紐で遊び心を加えるのも面白い。

日本における革靴文化のはじまりは、明治時代に入ってから。そんな歴史の浅さを考えると、日本人がスマートに革靴を履きこなすことができないのも無理はないかもしれない。しかしそんな今だからこそ、ポイントをしっかりと抑えて革靴選びをしたいところだ。 斉藤さん曰く、革靴のことが分かっている人とは「サイズが合っている、手入れされているなど、基本を抑えている方」とのことだという。まずは今一度ご自分の革靴を、愛着を持ってお手入れしよう。そしてたまには靴屋さんに足を運んで、信頼できるプロフェッショナルにいろいろ質問をぶつけてみてほしい。最高のフィット感を得られる革靴を手に入れられるはずだ。そしてTPOに合わせた革靴ライフを楽しんでいただきたい。