舌を出したかわいらしい「ペコちゃん」は不二家さんのマスコットキャラクターとして老若男女に親しまれています。今回はペコちゃんについて株式会社不二家 広報室の板橋明子さんにお話を伺いました。

――マスコットキャラクター「ペコちゃん」はどのような経緯で制作されたのでしょうか。

張り子のペコちゃん

ペコちゃんのデビューは、『ミルキー』の発売前年の1950年(昭和25年)で、不二家の店頭人形としてお目見えしたのが最初です。当時のペコちゃんは紙の張り子でできていました。

当時の不二家の社長が、戦後の復興真っただ中の日本を少しでも明るくできないかと考えていたとき、日劇の『真夏の夜の夢』という出し物に出会いました。その中で、張り子の動物たちが出てきて踊るというシーンがあり、それをヒントに考え出されました。

ちなみに、ペコちゃんが最初に店頭に置かれたのは、不二家銀座6丁目店です。

――なるほど。店頭に置かれたのが初登場なのですね。パッケージにペコちゃんが登場したのはいつなのでしょうか?

1951年にミルキーのパッケージに登場しました。

――ペコちゃんをデザインしたのは誰なのでしょうか。

1951年発売当時のミルキーのパッケージ
(C)新関コレクション

ペコちゃんの生みの親は不二家の当時の社長です。

――ペコちゃんにはモデルはいるのでしょうか?

当時の社長が、元気で明るい女の子をイメージして考えたようです。ペコちゃんが舌を出しているのは、子どものかわいらしさを表すためとか、おいしいお菓子を食べているからなど、諸説あります。

――それは不二家さんでも解釈がいろいろなんですね。ペコちゃんの着ている服も変化したのでしょうか?

当時から、季節感のある服を着こなしているペコちゃんでした。季節の装いだけでなく、時代を反映するようなファッションも柔軟に取り入れていました。1958年ごろにはテニスウェアのペコちゃんが登場したこともあります。

――なぜテニスウェアだったのですか?

その当時、皇太子さま(現在の天皇陛下)のご成婚に日本中が沸いていました。皇太子妃となられた美智子さまにあやかってのことです。

*……皇太子さまと美智子さまは軽井沢のテニスコートで出会われたのです。

発売当時のポコちゃん
(C)新関コレクション

――なるほど! 当時からペコちゃんは人気でしたか?

はい。おかげさまで、お子さんから大人までに愛されるキャラクターです。交通安全のキャンペーンなどに参加したり、南極観測隊にお供をして南極まで行ったこともありますよ。

――大活躍ですね! 男の子のポコちゃんはいつ誕生したのですか?

ポコちゃんは、1951年ミルキーの発売と同時にデビューしました。女の子がいれば男の子もということでポコちゃんが誕生しました。

――ペコちゃんのデザインに変遷はあったのでしょうか。

デザインマニュアルが作られる1980年代より前までは、特にさまざまなペコちゃんのデザインがありました。しかし、マニュアルが作られてからは、基本的なデザインに大きな違いはありません。

イラストとしては、現在のペコちゃんは瞳がギザ目のタイプなのですが、1995年~2006年の間は、瞳が黒く塗りつぶされたタイプになっています。

――いろいろなタイプのペコちゃんが存在したのですね。

現在では「6歳」と年齢も確定していますが、マニュアルができる以前には、よちよち歩きの赤ちゃんペコちゃんもいたのです。

マニュアルのできる前に生まれた、様々なデザインのペコちゃん

ペコちゃんのオーバーオールにも変化が!

――ペコちゃんといえば、オーバーオールを着ていますが。

オーバーオールにも変遷がありました。1960年代前半までは、右足の裾に「ペコちゃん」という文字が入っていました。胸元には弊社の企業マーク「Fマーク」の入ったものが多かったです。

――不二家さんのマークは花をあしらった特徴的なものですね。

不二家のロゴマーク

このロゴマークは、アルファベットの「F」に楕円と花びらを組み合わせた、不二家の企業マーク「F(ファミリー)マーク」です。

不二家の「F」であるとともに、「Familiar(親しみやすい)」、「Flower(花のような)」、「Fantasy(夢)」、「Fresh(新鮮なアイデアに満ちた)」、「Fancy(高級な品質)」という5つの意味も表現した幸せのイニシャルです。

――デザインしたのは誰でしょうか?

レイモンド・ローウィ氏に依頼して生まれたデザインです。ローウィ氏は世界的に有名なインダストリアル・デザイナーで、たばこの『ピース』のデザインなども手掛けています。

――古びない、飽きのこないデザインですね。

ありがとうございます。このファミリーマークは1961年(昭和36年)に誕生しました。以来、お客さまに親しまれてまいりました。

――ペコちゃんに込められたデザイン意図を教えてください。

ペコちゃんが誕生したのは1950年。戦後間もない、まだ日本が貧しかったころのこと。街には活気がなく人々は希望を失っていましたが、子供たちは元気いっぱいでした。そんな子供たちのお友達としてペコちゃんが誕生しました。お菓子が家族の絆を深め、子供たちに笑顔を伝える、そんな不二家の願いを込めたのがペコちゃんです。

銀座に笑顔でデビューしてから63年、不二家のお店の前にはおいしそうな笑顔で首を振るペコちゃんが立ってお客さまをお迎えしています。ペコちゃんの年齢は「永遠の6歳」。そのかわいらしさも永遠です。

左から現在のペコちゃん、ポコちゃん、店頭用のペコちゃん

いかがだったでしょうか。ペコちゃんが誕生してからすでに半世紀以上がたちましたが、その愛らしい姿は今も多くの人から支持を受けています。ペコちゃんには、日本の子供たちを元気づけたいという思いが込められているのです。

(C)FUJIYA CO.,LTD.

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(高橋モータース@dcp)