フォトグラファー兼レタッチャーの御園生大地

ワコムは、パシフィコ横浜で開催されたカメラと写真映像の情報発信イベント『CP+(シーピープラス) 2014』にて、4名の著名フォトグラファーを講師に招いたフォトレタッチのセミナーを開催。ここでは、御園生大地氏の「作品づくりに活かせるフォトレタッチャーの技」と題したセッションの模様を紹介する。

御園生氏は、広告・イメージフォト全般を扱う撮影会社に12年勤務し、2013年からはフリーランスとして活動しているフォトグラファー兼レタッチャー。建築竣工写真や大手家電メーカー製品写真の撮影やレタッチなどを手がけながら、フォトレタッチだけを請け負うレタッチャーや、3DCGクリエイターとしても活躍している。また、Photoshopやレタッチに関するセミナー登壇や記事執筆の実績も多く、今回はプロのレタッチャーとして、ペンタブレットを使った実践的なテクニックを紹介してくれた。

ペンタブレットのメリット

御園生氏が実演で使用した環境は、液晶ペンタブレット「Cintiq」とMac版「Photoshop CC」の組み合わせ。御園生氏によると、液晶画面に表示された写真を直接操作できる液晶ペンタブレットのCintiqシリーズは、オーソドックスなペンタブレットのIntuosシリーズよりも、操作を覚える際のハードルが低いとのことで、「Intuosシリーズに挫折した人でも、Cintiqシリーズは使えると思います」と語っていた。

フォトレタッチにペンタブレット使用する理由としては、マウスよりも繊細なレタッチが行えることや、パスを素早く切ることができるといったメリットを解説。マウスでレタッチを行っていた頃は腱鞘炎になったこともあるが、ペンタブレットを導入して改善したという体験もあるそうだ。

会場には、モニタをミラーリングする大型液晶ディスプレイのほかに、御園生氏がCintiqを操る手元を映したモニターが用意されていた

プロのレタッチャーの技を披露

実演では、女性の写真の肌を補正する行程と、風景の写真から建物を切り取るパスを引く行程を披露。女性の肌の補正は、スタンプツールや修復ブラシツールを使用すると、修正したいピンポイント以外の場所にも演算がかかってしまうため、それを極力さけて、問題のある部分だけに手を加えることがポイントとのこと。

そこで、元(背景)のレイヤーのコピーをふたつ作成して、双方のコピーレイヤーに画像をぼかすフィルターをかけ、片方のコピーレイヤーに「比較(暗)」、もう片方に「比較(明)」を設定。その後、コピーレイヤーのマスクに対してペンタブレットで色を塗ることで、「比較(暗)」や「比較(明)」を設定したレイヤーを浮かび上がらせる手法を紹介した。この作業では、画像を拡大して、肌に問題があるピンポイントを塗ることになるため、繊細な作業が行えるペンタブレットの威力が発揮された。

パスを引く作業前の写真(左)と、パスを切って画像を切り抜いた後の写真

パスを引く作業では、複雑な形の建物を切り取るパスを、何も手を加えていない状態からスタートして、作業が終わるまでの実演を披露。慣れていない人だと何十分もかかるような作業だが、御園生氏は実況解説を行いながら3分ほどで完了させてしまった。Intuosシリーズで同様の作業を行うのは難しく、画面を直接操作できるCintiqシリーズだからこそ可能な速度だという。

このほか、髪の毛の色だけを変える方法や、建物を切り取った後で空や雲を描く方法などを解説。いずれも、プロのレタッチャーとして御園生氏が仕事に使っている技であり、美しく補正されていく写真の変化はもちろん、手際の良さにも感心させられたセッションとなった。