日本語を使う我々にとって、PCで日本語を入力するためのソフトウェアは重要な存在だ。これは「日本語IME」(Input Method Editor)や「日本語入力システム」などと呼ばれている。だが、Windows OSに標準付属するMS-IME、無償使用可能なGoogle日本語入力といった存在によって、その重要性が希薄化しつつあるのは事実だろう。このような状況下で、今年もジャストシステムから最新版の「ATOK 2014」がリリースされた。ATOKはMS-DOS時代から現代まで続く、老舗の日本語入力システムである。

「ATOK 2014 for Windows」には、ベーシック版とプレミアム版がある。概要は別記事『ジャストシステム、変換動作を高速化した「ATOK 2014 for Windows」』を参照いただきたい

ATOK 2014ではパフォーマンスの改善を筆頭に、日本語入力がオフの状態から再変換を行う機能、カタカナ語の言い換え提案など、日本語の入力に役立つ新機能の搭載(および既存機能の強化)を行った。ここでは、ATOKシリーズを常用しているユーザー、触れたことのあるユーザー向けに、新機能を紹介していこう。

新搭載「アクセルモード」とは

新たに搭載した「アクセルモード」は、PCの性能に応じてATOKの設定を自動化する機能だ。ATOK 2013と比較すると、最大25%、パフォーマンスが向上するという。アクセルモードは起動手順が紛らわしいので、ここで紹介しておこう。ATOKパレットなどからプロパティダイアログを開き、「辞書・学習」タブ-「アクセルモード設定」ボタンをクリック。「アクセルモード設定」ダイアログにて、「自動的に最適な設定で利用する」をチェックすると、アクセルモードが有効になる(図01~02)。

図01 プロパティダイアログを開き、「辞書・学習」タブの「アクセルモード設定」ボタンをクリック

図02 「アクセルモード設定」ダイアログが起動した。ここでPCの性能評価確認や同機能の有無を選択する

今回、ATOK 2014をインストールしたマシン(Intel Core i7-3770、32GBメモリ、256GB SSD、Windows 8.1 64bit版)では、パフォーマンス評価は最高値「5.0」に達していた。その結果により、辞書および省入力データのアクセススピードを高速化すると説明されている。プロパティダイアログをよく確認すると、ATOK 2013まで残されていた「オンメモリ辞書」という項目が見当たらない(図03)。

図03 こちらは前バージョン「ATOK 2013」のプロパティダイアログ。「オンメモリ辞書」という設定が用意されていた

オンメモリ辞書は、基本辞書セットをメモリ上に置くことで、変換時の遅延回避やノートPCでのバッテリ消費を防ぐというものだが、アクセルモードはこれらの設定を自動的に行っている。省入力データに関しては同様の項目は用意されていないが、同じロジックで動作するようだ。

筆者は以前のバージョンで、オンメモリ辞書の有効時に変換が正しく行われないというトラブルに見舞われたため、これまで使ってこなかった。また、ATOK 2013使用時も、OSおよびATOK 2013のインストールドライブをSSDにしていたため、今回のATOK 2014でアクセルモードが有効になっても、体感的な速度の変化は感じられない。ただ、プロパティダイアログを目にすれば分かるように、長い歴史で培われた多くの設定項目が並ぶ現状を踏まえれば、利便性の高い機能と言えるだろう。

アルファベットを日本語に再変換できる便利な新機能

変換効率を高める新機能の中でも特筆すべきが、テキストキャプチャ機能である(明確な機能名が付けられていないため、便宜上、テキストキャプチャと呼ぶ)。

誰しも一度は、日本語入力をオフの状態で文字入力を行い、英字が並んでしまった経験をお持ちだろう。ATOK 2014では、日本語入力オフの状態で入力した英字を取り込み、変換可能状態にする機能を搭載した(図04~05)。

図04 日本語入力がオフの状態でタイピングした状態。このような失敗は誰もが経験するのものだ

図05 上の「図04」の状態で「Ctrl」+「BackSpace」キーを押すと、変換可能状態に切り替わる

通常であれば、入力した英字を「Del」キーや「BackSpace」キーで削除してから日本語入力を有効にし、再入力と変換を実行しなければならない。しかし、ATOK 2014の同機能なら、「Ctrl」+「BackSpace」キーを1度押すだけで、変換可能な状態になる。漢字変換もそのまま実行できるため、キータイプ数を減らしたいユーザーには実に嬉しい機能だ(図06)。

図06 さらに「スペース」キーを数回押せば、変換候補も現れる

ロジックは不明だが、海外のスクリーンキャプチャツールを使っていると、テキストキャプチャ機能に出くわすことがある。ATOK 2014も同様のロジックを用いているのではないだろうか。メーカーの説明では、アプリケーションによっては事前に英字を範囲選択しなければならないケースがあるそうだが、筆者が試したところ、メモ帳や秀丸エディタ、Word 2013では、同機能は正しく動作した。