【レポート】

モデルは起業家の手段!? - 「地域活性化モデル」という生き方とは?(後編)

片岡英彦
 

新潟県に「地域活性化モデル」として活躍中の、新潟ガールズ集団「Lily&Marry's」。前編に引き続き、結成者の今井美穂さんと、メンバーの山田彩乃さんへ話を伺いました。モデルであることは「手段」にすぎず、本当の「夢」は、新潟県を活性化できる「起業家」になりたいのだそうです。

後列右から山田彩乃さん、今井美穂さん

「地域活性化モデル」から見た普通の「モデル」

■今井美穂(いまい みほ)さん
1989年12月9日生まれ。新潟県見附市出身。「地方新潟の女性が輝ける場所を!!」をコンセプトにモデルタレント活動を開始。「地域活性化モデル」として、県内の女性約70名による、新潟ガールズ集団「Lily&Marry's」を結成。農業、工業、着物産業の活性化のためのコラボ商品の開発や、市町村主催のイベント等で活動

片岡:モデルさんや女優さんとかって、「私が! 私が!」と、前へ前へと出ないといけないイメージがありません? なのに「みんなで、新潟でやっていこう」とチーム活動するのとは、ずいぶん違いますよね。

今井:事務所の社長に「自分が地域活性化モデルをして、自分がモデルとしてやっていくんじゃなくって、いずれは経営者的に若い下の子たちをモデルとして出していかないと、自分が30歳になったときに何をしていると思う?」と言われたんです。自分の役割はまずは自分が突破口を切り開いて、そのあと若い子たちを送り出していくものだと感じた瞬間でした。

山田:私はもともと教師になりたかったので、自分が前にでるというよりは後から入ってくる子たちを育てていきたいという思いが最初からあります。ミス・ユニバースではファイナリストになりましたが、本当は自分じゃなくて、後輩たちがどんどん世界に出ていってくれればいいですね。

片岡:自分自身が新潟以外で有名になりたいとは、あまり思わない?

今井:有名にはなりたいです。知名度を上げたい。そうするとできることが増えますから。モデルさんタレントさんというよりも、面白い新潟の起業家の女性として有名になれれば、活動の場も増えます。だから若いうちに知名度をできるだけ高めていきたいと思います。

片岡:有名になることは目的じゃなくて手段?

山田:今やっている「地域活性化モデル」という活動も手段です。普通の女の子としてよりも、モデルとして前に出て情報発信した方が絶対にいいです。

片岡:山田さんは自分が裏方に回りたいと思っても、ミス・ユニバースでファイナルまで言ったじゃないですか。そう簡単に他の子はそこまでは到達できないですよね。でも、山田さんを目指して集まってくる子はいる。それってつらくないですか?

山田:今はまだいいんです。でも、自分が30歳のときにずっとそのままでいられるとは限らない。今、自分にできることは何だろうかと考えて、こういう方向で頑張ろうと思いました。

片岡:5年たったとき、自分がドラマなどに出演して活躍しているのと、自分と同じミス・ユニバースを目指す子を育てていく姿と、どっちのイメージがありますか?

山田:どうなんでしょう。自分が30代になって、人前にまだ立っているとしても、「教える」「育てる」ということはやめたくはないです。

片岡:今の仕事は何ですかと聞かれたら? モデル? 起業家?

山田:それは「地域活性化モデル」です(笑)

片岡:そこは、今はまだ「モデル」さんなんですね(笑)

山田:今、リリマリのメンバーたちにウォーキングを教えていったり、ダイエットとか美に関しての相談を受けたりしてます。そういうのをもっと仕事としてやっていきたいです。教育実習をして思ったのが、最近は親が基本的なことを教えないことが多いです。礼儀とか挨拶とか。親が言わないなら、誰かが言わなければいけません。「男塾」の女の子バージョンのような(笑)。私自身が成功する方法ではなく、この子をどうやって行こうとか、こっちの子はこっちでやろうとか。

震災と「地域活性化モデル」

■山田彩乃(やまだ あやの)さん
1991年1月生まれ。群馬県桐生市出身。4人姉妹の長女。新潟大学教育学部を昨年卒業後、県内のイベントや企業のイメージモデルなどとして活躍。「ミス・ユニバースジャパン 2013」ファイナリストとなる。その他活動として「日本カワイイ博 IN 新潟2012」「Tokyo Crazy Kawaii Paris」「JKEモデルグランプリ準優勝」「Noz Beauty Collection」「オンデーズイメージモデル」「ピーロートジャパンイメージモデル」「赤十字CM」等

片岡:2011年に東日本大震災が起こりました。活動の場が新潟から東北にも広がりましたね。

今井:「にいがた」を逆から読んで「たがいにプロジェクト」というのを始めました。震災が起こって1週間ほどたったときに、車に支援物資を積んで被災地に入りました。自分が想像していたよりもすさまじい光景で言葉がでませんでした。物資を持って行ったはいいものの、現地のおばちゃんたちに「またお願いね」と言われて涙がでちゃって。ふがいないなと思って。

片岡:良いネーミングですね。

今井:何をやるかまだ決めてなかったんですがtwitterやFacebookでとりあえず情報発進を始めました。賛同してくれる人が多くて、これだけ人が応援してくれるんだったら、新しいことができるんじゃないかなと思いました。今までやってきた「地域活性化」と「復興支援」をこれからもやっていこうと思っています。

片岡:新潟で始めた「たがいにプロジェクト」が、こんなにも広がっていったのはなぜですか?

今井:「たがいに」という言葉どおり、各地に「つながり」ができるようにと考えました。そうしたら、新しいコラボ商品につながったり、お友達が増えたりしました。気がついたら、すごく大きな輪になっていました。

山田:今でも宮城や石巻に行って支援をしています。「たがいに自販機」というのを作って、普通にドリンクを買うんですが、その売り上げの一部が義援金としてプールされる自販機です。

「たがいにプロジェクト」の様子

なぜか農業、そしてオリンピックを目指す!?

片岡:被災地の活動というのはいい意味で「終わる」のがいいのですけど、今後どういう風にしていきますか?

今井:地域にお金が流れる仕組みをつくるのが大事だと思います。次の目標は新潟で「女性社長」になることです。「Lily&Marry's」で、地域活性化の商品を作って売れるというちゃんとした仕組みを作りたいです。「たがいにプロジェクト」では、地域のつながりが県外にもできました。全国各地に「リリマリ」という女性の団体を作って起業家としてやっていきたいです。あと、将来的にやっていきたいなと思っている分野は農業なんですね。

片岡:農業???

今井:新潟の若手農業者、例えば30代の男の子たちはおしゃれで結構面白い活動をしています。「新潟の農業ってこんなに熱いんだ」ということを伝えたいです。農業って大変だけど、これから新潟の農業をもっと学びたいなと思っています。今、県内の農業の人と共同で、縫製工場さんで「かわいい農作業着」を作り始めています。明日「農業女子」(笑)と会議をします。やっとサンプル段階までいきました。

片岡:山田さんが、今やってみたいことは?

乗馬をする山田さん

山田:私は、最近乗馬を始めたんです。7年後にオリンピックがあります。実はそれを目指しています。

片岡:馬術ですか??

今井:美人すぎる馬術師(笑)

山田:福島県の相馬方が協力してくださっていて、相馬の馬追いを広めていく企画です。もともと男性しか入れない文化らしいのですが、現在は女性も入れて、もっとPRしていきたいということでした。その一環でオリンピックを目指してみようかと(笑)。

今井:彩乃ちゃん優しいから、すぐに馬を手懐けるちゃって(笑)。

片岡:目指す方向性が随分と違いますけど…

今井:仲はいいんですよ(笑)。私は大勢の人向けにバー! とやるタイプ。彩乃ちゃんは個々にすごく力を注げるタイプ。だから、2人だとすごくバランスがいいんです。私が突破口を開いて、そのあと女の子たちを育てるのは彩乃ちゃんがみたいに。でも、ちゃんと利益のことなども自分で考えていかなければいけなりません。とりあえず後継者がいないので、私と同じモチベーションでやってくれる子を育てたいです。

「地域活性化モデル」の「後継者」問題

片岡:それって、山田さんだとダメですか?

今井:そこはまた、キャラが違うので(笑)。彼女は彼女でやってもらいたい。新しいキャラの人が入ってきたら、そこでまたラジオとかテレビの仕事をやってもらわないと(笑)。

山田:みんな今井さんに憧れて入ってきます。最初から今井さんが何でもできたわけではなく、成長していったんですが、新しく入る子は、なかなかわからないんです。「今井さんだもん、最初からできたんでしょ」みたいに思うんです。

今井:最近は「新潟を活性化するためにモデルさんを育てている」ということが大分認知されてきました。夢はこの地域に住む女の子たちの希望になることですね。

山田:今まで1個しか見てなかった自分の将来が、ここにきてこんなにあるのかというのが分かるようになりました。

今井:私は20歳まではOLでお金は自分のプライベートを充実させるためのものだと思っていたんです。まず仕事の概念が変わって、今は就業時間もお給料も不安定です。でもなんか作っていくのは楽しいなというのを思っていて。

山田:でも、お金するために仕事するって感じじゃ、今はないですね。

インタビューを終えて

私には「ふるさと」と呼べる場所がありません。正確に言いますと、この取材を行った新潟県も「ふるさと」です。生まれてから小学校の卒業までの間に、東京-神奈川-新潟と3つの土地の3つの学校に通いました。いずれの土地も「ふるさと」ではありますが、完全な「ふるさと」ではありません。

一方で、完全な「グローバル」人間かと言いますと、そうでもありません。小学校から大学までずっと日本国内に通い、最初の就職先も日本企業。途中から外資企業に務めたこともありますが、勤務と生活の拠点は基本、」ずっと日本国内です。

ネットやSNSが普及するまでは、新潟も含めた地方都市から東京に出て、東京から世界に出るという「2ステップ」が必要でした。しかし、今では全国どこからでもブログやSNSを使って、モデルさんが日本全国(全世界)に情報発信できます。

そして「地元」を愛するモデルさんにとっては、これほど良い環境はありません。ムリに東京に出ることなく、「地元」でモデルを行い、全国に情報を発信すればいいのです。むしろ、私のようなものが、東京から新潟まで新幹線で取材に行くわけです。

一方で、今井さんも山田さんも既に分かっています。新潟でモデルであるというだけでは、後々、厳しいと。最後は「起業家」あるいは「実業家」として地元の活性化に尽力していきたいという、よく考えると、とても納得のいく考えのお二人でした。あとは「地元」という限られた経済圏の中から、どれだけ広がりを生み出していけるか。成功の鍵は1つだと思います。

取材を終えた山田さん、今井さん。真ん中は片岡英彦(インタビュー)


<著者プロフィール>
片岡英彦
1970年9月6日 東京生まれ神奈川育ち。京都大学卒業後、日本テレビ入社。報道記者、宣伝プロデューサーを経て、2001年アップルコンピュータ株式会社のコミュニケーションマネージャーに。後に、MTVジャパン広報部長、日本マクドナルドマーケティングPR部長、株式会社ミクシィのエグゼクティブプロデューサーを経て、2011年「片岡英彦事務所」を設立。企業のマーケティング支援の他「日本を明るくする」プロジェクトに参加。

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