Windows Server 2003/2003 R2のサポートが、2015年7月15日(日本時間)で終了する。今、同OSベースのシステムを運用している企業は、今後1年半以内にWindows Server 2012/2012 R2へとマイグレーションしなければならない。

その際に留意したいポイントは、“移行でビジネスをイノベーションできるか”である。単にOSやマシンをアップグレードするだけでは、企業にとってのビジネスメリットは少ない。移行を機にシステムの運用負荷を軽減し、業務効率向上を実現させてこそ、“価値ある移行”だと言える。そのカギを握るのが、マイクロソフトの仮想化技術である「Hyper-V」だ。

今回は、Hyper-Vを用いた独自のソリューション「AZBOX Hyper-Vモデル」を提供する富士通マーケティングで、商品戦略推進本部 AZSERVICE推進統括部 ITサービス推進部 担当部長を務める有滝和貴氏に、「業務を革新するための移行の選択肢」について話を聞いた。

中堅・小規模企業がかかえる仮想環境導入のジレンマ

富士通マーケティング 商品戦略推進本部 AZSERVICE推進統括部 ITサービス推進部 担当部長 有滝和貴氏

サポート終了を前に企業が決断すべきは、「OSやマシンをアップデートして現在のシステムを使い続けるか、移行を機にシステムを刷新するかだろう。もちろん、一定期間の“延命”をしたうえで新OSに順次移行するケースもありますが、現在の環境をそのまま延命するには、リスクが高すぎます」と有滝氏は警鐘を鳴らす。

延命で懸念されるのは、セキュリティである。サポートが終了すれば、セキュリティパッチは配布されずリスクは高まる。もう1つの懸念は、延命による作業負荷とコストの増加である。現在Windows Server 2003が稼働しているマシンの中には、2015年7月までにリプレース時期を迎えるものも少なくない。老朽化したハードウェアは故障率が高く、修理する場合でも交換部品があるとは限らない。大容量・高性能で低価格な最近の製品と比較すると、古いサーバを使い続けることは運用管理コストも含めて負担が大きい。

「中堅・中小規模企業のお客様は、ハードウェアからOS、アプリケーションまでを1つのIT基盤として『垂直的』に考えていらっしゃる。そのため、ハードウェアをリプレースするたびにシステムのバックアップ/リストアといった作業をしなければならない。これでは運用管理の手間もコストも増え、業務革新につながりません」(有滝氏)

この課題を解決するのが、仮想化技術である。ハードウェアレイヤとソフトウェアレイヤをHyper-Vの仮想化技術で分離することで、それぞれの“自由度”を確保する。これによりハードウェアをアップデートする際には、仮想化レイヤだけをリプレースすればよい。特にWindows Server 2012/2012 R2では「Hyper-V」が機能強化され、仮想マシンのレプリカやオンラインバックアップが容易に実行できるようになっている。

とはいえ、専任のIT管理者がいない中小企業にとって、仮想環境の導入は敷居が高い。物理サーバ上で仮想マシンごとに、仮想OSやアプリケーションをインストールするなど、個別に構築/設定する必要があるからだ。

「システム運用負荷の軽減や電力コストの削減、ディザスタリカバリ対策の観点からも仮想化環境へのニーズは高まっています。導入の足かせが作業負荷であれば、われわれがあらかじめ仮想環境を構築し、アプリケーションを設定/検証してご提供すればよい。それが『AZBOX Hyper-V モデル』なのです」(有滝氏)

仮想化環境の構築は一切不要、必要なアプリもすぐに追加可能

「AZBOX仮想化ベーシックセット」は、Hyper-Vによる仮想化環境を、富士通サーバである「PRIMERGY」上にあらかじめ構築し、仮想環境構築のノウハウをお持ちでないお客様でも簡単に仮想化基盤を導入できるアプライアンス型ソリューションである。この仮想化基盤上で利用する、仮想OSと業務に必要な各種アプリケーションを基本環境設定済の状態で組み込んだ仮想マシンをVHD(Virtual Hard Disk)ファイルとして提供するのが「AZBOX Hyper-V構成済アプリケーション」であり、それをHyper-Vマネージャー上でインポートするだけで簡単に運用を開始できる。これらを富士通マーケティングでは「AZBOX Hyper-Vモデル」として提供している。

アプリケーションのラインナップは、マイクロソフトの「Windows ファイルサーバ」「Active Directoryシングルサーバ」「Server Update Service」をはじめ、シトリックスの「XenApp」やサイボウズの「Office 10」「ガルーン 3」、基幹業務系では富士通の「GLOVIA smart きらら SaaS 会計/人事給与/会計&人事給与」など、業務に必要なものがそろっている。有滝氏は、「カートリッジを入れ替えるだけで異なるゲームが楽しめる家庭用ゲーム機のように、マシンを初期化することなくアプリケーションを追加できます」と、その優位性を強調する。

従来の環境であれば、こうしたアプリケーションの導入には数ヶ月を要していた。しかし、「AZBOX Hyper-Vモデル」ならわずか1日足らずで完了する。本来の業務を滞らせることなく、アプリケーションを導入できるメリットは計り知れない。

また「AZBOX Hyper-Vモデル」を用いた仮想化基盤、既存システムの“延命”にも活用できる。Hyper-Vで既存システムを仮想環境へ移行すれば、環境を再構築せずに、アプリケーションを継続利用できる。もちろん、セキュリティリスクが低減されるわけではないが、例えば、1つのHyper-V上に既存の販売管理システムと最新の販売管理システムを共存させ、Hyper-Vを基軸として段階的に移行するシナリオも考えられる。

実際、年商約30億のアパレルメーカーでは、「AZBOX 仮想化ベーシックセット」で仮想OSと新会計システムの導入をわずか半日で終了させ、その後、CSV形式で書き出した旧会計システムのデータを新会計システムに移行して本稼働しているという。

さらに事業継続の観点からも、「AZBOX Hyper-Vモデル」はその実力を発揮する。従来はサーバ障害が発生した場合、物理マシンを交換し、OSを再セットアップしたうえでそれぞれのアプリケーションを再インストールする必要があった。しかし、「AZBOX Hyper-Vモデル」なら、こうした作業は一切必要ない。サーバ上にOSとHyper-Vを構築すれば、バックアップした構成ファイル(VHDファイル)をインポートするだけで、簡単にリカバリーできる。Windows Server 2012/2012 R2の“目玉機能”である「Hyper-V レプリカ」を活用すれば、障害時にフェールオーバーすることも可能だ。

また、仮想化による物理サーバの集約効果も見逃せない。有滝氏は「複数台のサーバ運用をされていたお客様が、『AZBOX Hyper-Vモデル』で1台に集約した結果、電気料金を約30%削減できた事例があります。運用負荷だけでなく、サーバ管理コストを見直したい企業にも最適です」と語る。

あらかじめ推奨値を設定、サポートも充実

富士通マーケティング 商品戦略推進本部 AZSERVICE推進統括部 ITサービス推進部 石原亘氏

前述したとおり「AZBOX 仮想化ベーシックセット」は導入作業が必要ない。サーバの梱包を解き、電源をオンにしたら、すぐにアプリケーションが利用できる状態で届けられる。富士通マーケティング商品戦略推進本部 AZSERVICE推進統括部 ITサービス推進部の石原亘氏は、「結線図や操作マニュアルも写真・図版付きです。ITの専門知識がなくてもマニュアルどおりに作業すれば業務が完了するぐらいわかりやすい」とそのメリットを強調する。

もちろん、導入前の作業負担も少ない。企業はヒアリングシートにユーザー固有の設定情報を入力するだけだ。「ヒアリングシートは、ITの専門知識がなくても記入できるよう詳細な解説を付けており、あらかじめ安全性を最優先にした推奨値も設定されています。ホスト名やコンピュータ名、IPアドレス/パスワードを入力すれば完了です。当然、サーバのCPUやメモリもサイジングしたうえで提供します」(石原氏)

こうしたサポートの充実は、日々顧客企業の“声”を聞いている富士通マーケティングならではのことだろう。富士通は全国に200以上のグループ拠点を擁しており、全国エリアで24時間365日のサポート体制を整えている。

さらに同社は、IT運用に特化したサポートサービス「IT用心棒」も提供している。これはサービスデスク、システム監視、トラブル対応、運用代行をするものだ。石原氏は、「マルチベンダー環境のお客様は、トラブル発生時に『どこに問い合わせてよいかわからない』という課題を抱えていらっしゃる。IT用心棒はサポートの窓口を一本化し、一次窓口としてサービスデスクが対応します。問い合わせ先ベンダーの切り分けは当社で行う。お客様にとっては『119(救急車)』のような存在です」と語る。

Windows Server 2012/2012 R2の機能を最大限に活用しつつ、運用管理の手間を極限まで排し、柔軟なIT基盤を構築する。それが「AZBOX Hyper-Vモデル」だ。最後に有滝氏は、これから移行計画を立案する企業に向け、次のようなアドバイスをした。

「Windows Server 2003が発売された当時は、業務システムはそれぞれが独立しており、システム間連携がされていませんでした。しかし、現在はERP(Enterprise Resource Planning)が主流です。例えば、販売管理と営業管理を連携させれば、受注データと売上げ見込み予測から、次の営業戦略が立案できる。単体の業務システムを最新版にしても、システム間連携ができなければ、投資対効果は半減するでしょう。アプリケーション・ポートフォリオを鳥瞰的に見直し、移行をシステム刷新の“チャンス”と捉えて事業戦略を考えて頂きたい。それを強力に支援するのが『AZBOX Hyper-Vモデル』なのです」と有滝氏は締めくくった。