OKWave総合研究所の調査によると「ブラック企業」「ブラック会社」についての質問が2013年に急上昇していることがグラフから分かる。

「ブラック企業」「ブラック会社」キーワード出現数推移

その一方で「ブラック企業」という言葉が、独り歩きして安易に使われ過ぎている気もする。「ブラック企業」とは、そもそもどういう企業なのか?

昭和の高度成長期から日本の雇用制度は、欧米に比べると特徴的だった。単身赴任や長時間のサービス残業なども、ごく一般的だった。上司や会社の先輩との就業後に飲みに半ば「強制的」に付き合うことや、全員参加の社員旅行の実施などもよくあった。そもそも週休2日の会社は少なく、土曜日も通常勤務の企業が多かった。こうした面だけをみると、戦後日本には「ブラック企業」が全体として多かったのかもしれない。

ただ近年と違うのは、ある程度の規模の企業であれば、年功序列型の賃金制度で終身(長期)雇用が保証されていた。福祉厚生(社宅や家賃補助)なども充実し、社内研修などで、社内でのキャリアアップの機会もあった。何より、日本経済全体が成長していたので、オイルショックや円高などの一時期を除けば、おおむね日本企業は成長・拡大した。社内の役職、新卒採用も活発だった。少なくとも若い社員を「使い捨て」にするというイメージはなかった。昔だって、若い社員の給料は安かったが、近年と異なるのは、「次第に給料もポストも上がっていくだろう」という「大きな物語」があった。

ところが、近年では、この終身(長期)雇用が保証されず、年功序列型の賃金の維持も困難な場合が多い。福利厚生や社内研修予算など、「売上」「利益」に即効性のある費用以外は削られることも多く、かつてのような日本経済全体の「パイ」の拡大と連動した形での企業規模の拡大やポストの増加、新人の大量採用もない。社員たちは、将来に向けた安心感のないまま、企業側の要求ばかりが「ルール」なしで課せられている。当然、若い社員らの将来設計が成り立たない。さらには非正規社員の増加により、社会全体として雇用の流動化に更に拍車がかかった。

もし自分の会社が「ブラック企業」かも…と思ったら

仮に、今、自分が「ブラック企業」にいると思ったら、私だったら以下の3つのことを自問する。

(1) その企業に長く在職したとして自分が成長できるか?
(2) 今の賃金以上に自分は会社に貢献しているか?
(3) 自分の社外での価値は、現在の賃金よりもはるかに高いか?

今はしんどいが、その企業から得られる何か(知識、ノウハウ、人脈、資格)が、いずれ自分の「財産」になると思えるかどうかがポイントとなる。(1)が満たされるが(2)と(3)が満たされなければ、しばらくは辛抱してその企業に留まるだろう。(1)が満たされずに(2)と(3)が満たされるのであれば転職を検討するだろう。


<著者プロフィール>
片岡英彦
1970年9月6日 東京生まれ神奈川育ち。京都大学卒業後、日本テレビ入社。報道記者、宣伝プロデューサーを経て、2001年アップルコンピュータ株式会社のコミュニケーションマネージャーに。後に、MTVジャパン広報部長、日本マクドナルドマーケティングPR部長、株式会社ミクシィのエグゼクティブプロデューサーを経て、2011年「片岡英彦事務所」を設立。企業のマーケティング支援の他「日本を明るくする」プロジェクトに参加。