現在はすでにメーカーも選定し、端末の開発を進めているという。例えば電話帳のフリガナやセキュリティ機能といった日本市場に適した機能の開発が必要となるなど、開発には苦労しているようだ。ただ、こういったローカライズは、これまでのAndroidでも同様で、Firefox OSだから特別なことがあるわけではないそうだ。

オープンソースのOSということで、こうして開発したコードは、OSの中に組み込まれ、ソースが公開されるため、今後開発するメーカーにとっては、新たに一から開発を進める必要がなくなる。KDDIでは積極的にそうした貢献を行っているという。

Androidと異なる点は、Web技術を取り込んだOSのため、開発言語を扱える開発者が多いことだ。「開発でやることは多いが、やるべきことを解釈して開発できる人が多いのでスムーズ」(同)。

端末の位置づけとしては、日本市場の特性を踏まえてハイエンド端末を想定。Mozillaは、ローエンド端末による新興国市場をターゲットにしているようだが、Firefox OS自体は「スケーラブルでローエンドからハイエンドまでをカバーできる。日本ではローエンドは難しいので、ハイエンドに挑戦したい」(同)という考えだ。ウェアラブルに関しては、「本当に少ないメモリで動くのは実証されているのでウェアラブルに適したポテンシャルを秘めている」と上月氏。ただ、あくまで初代のターゲットはスマートフォンだ。

こうしたKDDIの取り組みに対して、Firefox OS向けにアプリを開発しているベンダーはどう考えているのか。楽天とリクルートの担当者にも話を聞くと期待度の高さを伺わせた。

楽天の加藤雄一氏

楽天の編成部モバイル戦略課モバイルビジネス開発チームグループマネージャーの加藤雄一氏は、Firefox OS対応アプリを作った感想について、「今までのiOSやAndroidといったプラットフォームに比べると相当作りやすい」とコメント。楽天が開発したのは、楽天のサービスにアクセスできる「楽天ゲートウェイ」で、単に楽天のサイトをインラインで表示するのではなく、HTML5でレンダリングするようにしており、スマートフォンに適したUIを搭載している。

「もともと楽天はWebの会社なので、Webのデベロッパーがたくさんいる」ことから、アプリ開発に携われる人が多く、効率的に開発できたという。開発期間は「1週間もかからないぐらい」だったそうだ。「作り手側としては面白いプラットフォーム」と加藤氏。今後、端末が盛り上がれば、新しいエコシステムができあがると見る。

リクルートの宗藤和徳氏

リクルートの宗藤和徳氏も、従来のアプリ開発者に比べて「開発者が10倍ぐらいいる」ことで、アプリ開発が容易であることを指摘する。今回、iOSやAndroid向けにもリリースしているカメラアプリ「cameran」をFirefox OSに対応。

逆に、AndroidやiOSは、相対的に開発者の数が限られているため、「一気にアプリを開発する時に人が限られる」(宗藤氏)点が難しいところだったそうだ。リクルートは全体で400近いアプリを投入しており、共通のロジックを標準化して組み込むことで生産効率を上げて量産できるようになる、と話す。

ただ、Firefox OSやHTML5にはまだ「パフォーマンスに不安がある」と宗藤氏。ただ、ゲームのようなリアルタイム性が必要なわけではないので、大きく問題視はしていないようだ。ローカルとサーバー、それぞれをうまく連携させることでパフォーマンスの向上は図れるとみている。

加藤氏も、パフォーマンスの心配はあるが、デュアルコア端末の登場で「かなり改善されている」という。開発した結果、Firefox OSは十分実用的という判断をしたそうだ。

(記事提供:AndroWire編集部)