バニラエアは、多くのLCCが使うエアバスA320での運航

昨年末、格安航空会社(LCC)のバニラエアが運航を始めた。同社は前身のエアアジア・ジャパンの出資会社であるANAとエアアジア(マレーシア本社)が提携を解消し、その後を引き継ぐ形で再スタートを切った。実際に搭乗してみると、バニラエアは前身とは全く違い、日本のLCCとして新しく生まれ変わったことを実感することとなった。

ホスピタリティあふれるサービス

早朝5時を少し過ぎた頃、成田空港・第2ターミナルにあるチェックインカウンターが開いた。手続きの準備を始めたスタッフの鮮やかな制服のブルーが、コーポレートカラーのイエローに塗られた壁との明るいコントラストをなす。真冬の沖縄行きのフライトではあるが、レジャー・リゾート路線を中心に運航するLCCらしい明るさに満ちていた。

心なしかスタッフの表情も生き生きしているように感じたが、その理由について関係者がこんな話をしてくれた。「エアアジア・ジャパンの時代にはエアアジア本社の意向もあり、日本的なきめ細かくホスピテリティあふれるサービスができなかった。それが、日本のLCCになって心おきなくできるようになったからかもしれません」。

バニラエアのスタッフの多くはエアアジア・ジャパンのスタッフだが、チェックイン時間の締め切りに遅れそうな乗客がいると、何人かでサポートをしている姿が印象的だった。

レジャー・リゾートへ行く航空会社らしいロゴマーク。「さわやかさ」「洗練」を表現。花が軽やかに咲くイメージも

予算をかけずにできるLCCらしいサービス

スタッフの気遣いは機内でも随所に感じることができた。例えば、機内食を食べ終えるとすぐに片付けに来てくれる。奇をてらったところがなく、接客が自然な感じがするのも筆者としては好感がもてた。

LCCの場合、安い運賃を出すために大手エアラインほどサービスのスキルアップに予算をかける余裕はない。とはいえ、LCCの老舗であるアメリカのサウスウエスト航空がユーモアをウリにして人気を獲得していったように、心掛けで工夫できることはいくらでもある。

バニラエアは図らずも後発だったために、これまでの他社が行ってきたサービスの良い点と悪い点を見極め、それを自社のサービスに反映できる有利さもあるだろう。外資系のウェブサイトは、外国語版を日本語にアレンジしたものが多く使いづらい傾向にあるが、バニラエアのサイトは日本語が見やすく使いやすい。デザインや操作性の良さも感じられる。

搭乗券を印刷し忘れたがカウンターで対応してくれ、手数料も不要だった。国内線では出発48時間前~2時間前までの間でウェブチェックインが可能

また、バニラエアは期間限定のキャンペーン運賃「わくわくバニラ」を除き、預け荷物を20kgまで無料にした。日本国内で飛行機に乗る際、預け荷物は無料というのが一般的だが、LCCでは預け荷物は有料ということが多い。そのため、空港に来てからの追加手数料が思ったより高額になることもあり、乗客の不評を買うケースがある。20kgまで預け荷物無料サービスは会社側がかなりの負担を追うので、同社の思い切った戦略と言えるだろう。

搭乗口にあった手作りの観光案内。けっこう詳しく見入ってしまう。搭乗券はレシートタイプ。そこはLCCらしい

バラエティに富んだクーポンタイプの機内誌

機内サービスでもうひとつ驚いたのは、旅先で使えるクーポンブックタイプの機内誌が搭載されていたことだ。LCCでは初の試みで、バスツアーや観光地、ショップ、レストラン、レンタカー会社、宿泊施設など対象となる施設はバラエティに富み、料金の割引のほか、レストランでデザートがサービスされるなど旅気分を盛り上げる工夫もされている。

全180席タイプの機内。座席のシートピッチ(前後間隔)は他社と同じ

「たびクーポン」と機内食とグッズが掲載された「フライト・キッチン」

機内食は「リゾート」「ナリタ」「リラックス」がコンセプト。「アラビックブレッドのポケットサンド」と「ライオンドリップコーヒー(バニラマカダミア)」は、セットでオーダーすると50円割引になり650円。タマゴサンドとカレー味の2種で、朝食にちょうど良い量。「バニラエア特製とろ~りクリームパン」(200円)は、甘すぎず男性でもイケル味

「パエリア風ごはん」(700円)はごはんがサラサラしていて合格点の味。ごはんがベトつかない工夫がされているのが分かる。「オニオンコンソメスープ」とセットならこちらも50円引きで850円

バニラエアは昨年12月20日に成田~那覇、台北線で運航を開始。今年1月29日からの札幌線に続き、3月1日からはソウル線を就航する。今後は香港やグアム、サイパンなどへもネットワークを広げる計画もある。

前身のエアアジア・ジャパン時代とはうって変わったホスピタリティと工夫のあとが見えるサービスで、ひとまず好評のうちに離陸したバニラエア。今後の展開にも期待が持てるLCCだと感じた。

バニラエアはANAホールディングスが100%出資。国内線のグランドハンドリング(運航にまつわる地上での作業)のいくつかもANAグループが担当し、安心感がある

(※この記事は2013年12月24日に搭乗し、その後の取材などを元に構成)