本連載ではAppleが取り組むiPhoneやモバイルサービス、そしてこれから作りだされる未来の生活について、ジャーナリストの松村太郎氏が深読み、先読みしながら考えていく。第6回のテーマは「Appleの音楽サービス「iTunes Radio」とその先にあるもの」について。

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皆さんは、最近、どのようにして新しい音楽と出会っただろうか? テレビで聴いて、友人に勧められて、あるいはソーシャルメディアなどで回ってきたYouTubeビデオを見て、など様々に変化しているのではないだろうか。

iPhoneが発表された2007年1月のプレゼンテーションで、Steve Jobs氏は「電話」「音楽プレイヤー」「インターネットデバイス」の三位一体としてiPhoneを披露した。既にiPodで音楽の聴き方を変化させた経験があるAppleは今後音楽の聴き方をどのように変えていこうとしているのだろうか。

音楽の「仕入れ方」

多様化している音楽の楽しみ方に合わせて、これまでのように売上で発表されてきたヒットチャートが機能しなくなるという事態も起きている。つまり、流行の曲がそこまで同世代や時代の「共通言語」にならなくなってきたのだ。同時に、どのように新しい音楽との「偶然の出会い」を果たすかも難しくなってきたのだ。

筆者は足繁く音楽ショップに通い、月に10,000円以上は必ず新しいCDを購入することに費やしていた。しかし東京からは大規模なお店も含め、筆者が気に入っていたショップがどんどんなくなっていってしまった。

大きな店構えだとしてもオンラインショップの品揃えと効率性には適わないし、そもそもデジタルプレイヤーで再生するようになって、CDで音楽を購入することが手間になってしまった。お店の消滅によって筆者の音楽との出会い方は成立しなくなってしまった。

そこで、デジタルで購入するという手段になる。MacとiPhoneを使っているので、iTunes Storeから購入するのが最適だ。確かに、iTunesで音楽を購入するメリットはある。音楽ファイルのバックアップを取る必要がなくなるからだ。

iTunes Store