文化庁メディア芸術祭実行委員会は、「平成25年度(第17回)文化庁メディア芸術祭受賞作品展」を開催している。会期は2月16日まで、メイン会場の開館時間は10:00~18:00(金曜日は20:00まで)。東京・六本木の国立新美術館をメイン会場に、東京ミッドタウン、シネマート六本木、スーパー・デラックスをサテライト会場として展開する。今回は、会期前に行われた内覧会の様子をお届けする。

天井から垂れ下がる数多くの糸で"大きな天井"を表現することで、空間を緩やかに分け回遊を促しているという

例年、照明の明るさは暗めに設定し、映像を中心に構成されていた同展だが、今回は明るい照明の下に、原画や立体物などを中心とした作品が展示されている。加えて、従来は部門毎に区切っていた構成を取りやめ、2,000平米の広い空間をほぼ壁で区切らず、異なるジャンルの作品を取り混ぜて展示している。こうした会場構成は、建築家の中村竜治氏が担当したものだ。

会場入り口には各部門大賞作品のパネル。すべてに受賞者のサインが入っていた

受賞作品を列挙したパネルは、壁に掲示するのではなく地面に置かれている

内覧会には各部門大賞の受賞者が出席し、報道陣の取材に応えた。「ジョジョリオン」でマンガ部門大賞を受賞した荒木飛呂彦氏は、25年にもわたる「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズの制作を農業に例え、「漫画というと苦しみ、身を削って生み出すようなイメージがあるかもしれませんが、僕の場合は毎朝仕事場という畑に行き、土から何が出ているか探し育てるように、淡々と描いています。収穫の喜びという点でも、(同氏の漫画制作と農業は)似ていると思います」とコメントした。同作以降の「ジョジョ」シリーズの続編の構想について聞かれると、「現在手がけている作品に集中しているので、特に決めていません」と答えるに留まった。

荒木飛呂彦氏

荒木氏の作業机の写真。このほか、「ジョジョリオン」の生原稿やパネルも展示されている

また、アート部門大賞を受賞したメディアアート界の大御所 カールステン・ニコライ氏は、今回大賞となった「crt mgn」に関して、TVモニターに映る映像が、その上を通る振り子の磁石の力を受けて変化するさまを「見る」こと、そして電磁波の作用によって発生した音を「聴く」ことができるものと説明。「(この作品によって)自然には美しいものが潜んでいることを啓発したい」ともコメントした。

crt mgn

カールステン・ニコライ氏

アニメーション部門の大賞は、朝鮮戦争後の韓国からベルギーに里子に出された自身の体験を元にした「はちみつ色のユン」を手がけたユン氏。日本の作品では『蛍の墓』、「AKIRA」に影響を受けたという。

アニメーションに関する資料のほか、ユン氏が里子に出された際の書類なども展示されている

ユン氏

エンターテインメント部門大賞は、1989年のF1日本グランプリ予選でアイルトン・セナが樹立した世界最速ラップの走行データを用い、彼の走りを音と光で再現したプロジェクト「Sound of Honda / Ayrton Senna 1989」。電通のクリエイティブ職の面々やメディアアーティストの真鍋大度氏らがチームを組んだ取り組みで、Webサイトやアプリも展開された。

全長5,807mの鈴鹿サーキットに多くのスピーカーとLEDを設置し、再現した音を走行データに合わせて鳴らして24年前のセナの走りを再現した

会見に出席した制作チームの面々