NFCはスマートフォンに対して、タッチという明示的な動作によって通信が行える仕組みを提供する。

例えば、決済端末とスマートフォンをタッチさせて、電子マネーを使うという動作や、NFCタグが埋め込まれている商品タグにタッチしてクーポンや情報を受け取ったり、スマートフォン同士をタッチしてデータを転送したりする使い方ができる。最近では、NFCを搭載したスマートフォン向けの周辺機器が増えてきており、例えばBluetoothヘッドフォンであれば、タッチして簡単にペアリングの設定を行う、という使い方もスマートだ。

つまり、人が「データをやりとりする」という意志を持って端末を近づけることで利用できる、近接通信のための道具として利用されているのだ。特に決済は、財布からお金を出して支払う動作と、端末をタッチする動作が自然に移行できる点で、非常にわかりやすい事例となった。また、特定の場所に埋め込まれているNFCとタッチさせれば、その人の居場所も50cm(つまり腕が届く範囲)の精度でわかり、店舗内での活用も見込まれる。

ところがAppleはここまで、NFCを導入していない。iPhone 5sには、モーションコプロセッサであるM7と、指紋認証であるTouch IDを新たに追加したが、より汎用的と見られるNFCは導入するに至っていないのだ。2010年頃から、AppleはたびたびNFC関連の特許を提出したことが確認できるにも関わらず、だ。