Adobe Photoshopの進化した「シャープ機能」

最新バージョンは通算で14番目となる画像編集ソフト「Adobe Photoshop」だが、高度に進化した機能の中でも特筆されるのが「シャープの進化」だ。初めてPhotoshopに触れるユーザーはもちろんだが、久しぶりにバージョンアップしたユーザーにとってはなじみのない、新しい機能も含まれているだけに「どれをどう使えばいいのか」戸惑うユーザーも多いようだ。そこで本レポートでは、Photoshop CCでシャープについて大きな進化を遂げた三つの機能「スマートシャープ」「ぶれの軽減」「画像解像度の拡大アルゴリズムの進化」についてレポートする。

Photoshopのシャープ選択画面

Photoshopの画像解像度「再サンプル」選択画面

より細かいコントロールが可能になった「スマートシャープ」

古くからのPhotoshopユーザー、特にプリント制作や印刷入稿を手がけてきた人間にとって「少しコントラストが低い画像の救済」や「手ぶれ・わずかなピンぼけの救済」を行う際に活用してきたのが「アンシャープマスク」だ。Photoshopのフィルターとして設定されている「シャープ(ふつう・強・輪郭のみ)は画像を自動検出して処理を行うため、シャープの設定や細かい調整を行うことができない。そこでPhotoshopでシャープ処理を行う場合は、アンシャープマスクを使ってシャープの質量を設定するという処理が当然とされてきた。しかしアンシャープマスクは隣接するピクセルの間の関係性を一定のピッチで調整するのみで、状況に応じた調整を行おうとすると、選択範囲を作成するかマスクを作成する必要があった。Photoshop CS2から搭載された「スマートシャープ」は、画面のハイライトとシャドー領域のシャープを自在にコントロールできる新しいシャープ機能で、これを活用することにより、より細かいシャープの調整が行えるようになった。同一画面でハイライトとシャドーのシャープを同時にコントロールできるようになったということは、ほとんどの場合で新たな選択範囲やマスク作成の必要がなくなったことを意味する。プリント制作や印刷入稿用のデータ作成を手がける場合は、明らかに「スマートシャープ」の方が便利だ。

スマートシャープの調整画面

アンシャープマスクの調整画面

スマートシャープの調整アルゴリズムには「除去」という項目があり「ぼかし(ガウス)・ぼかし(レンズ)・ぼかし(移動)」と三つのアルゴリズムが用意されている。「ぼかし(ガウス)」はアンシャープマスクと同じ効果が、「ぼかし(レンズ)」は、画像のエッジとディテールをPhotoshopが検出し、シャープを実行するにあたっておきやすいハロー効果(境界線におけるにじみの発生)を抑える働きがある。そして「ぼかし(移動)」は、シャープ効果の角度をコントロールし設定することができるようになっている。

「除去」のアルゴリズム設定画面

「ぼかし(移動)の角度入力画面

但しシャープフィルターの弊害として、強くかけすぎると画像にノイズが発生するという問題があり、今まではアンシャープマスクやスマートシャープを使うときは、その適用量について頭を悩ませたり、目立つ部分にぼかしをかけるなどの措置が必要だったが、Photoshop CCではそれも不要になった。スマートシャープなら「ノイズを軽減」スライダーを調節することにより、シャープフィルターによって発生するノイズを減らすことができるようになったからだ。Photoshopはバージョンが進化するごとに処理のアルゴリズムが進化することを実感するが、このスマートシャープの進化を知ったら、古いバージョンに留まる理由などどこにもないことを痛感する。

スマートシャープ調整画面内にある「ノイズを軽減」画面

シャープ機能の進化によって実現した「ぶれの軽減」フィルター

デジタルカメラの高感度性能が大きく向上したことによって、ぶれた写真を見る機会は少なくなったが、それでも動く被写体を撮影するときや、とっさのシャッターチャンスに慌てて撮ったときなど「ぶれてほしくない」のにぶれた写真を撮った経験はないだろうか。筆者は仕事柄、他の人が撮影した写真を印刷入稿のために最適化する画像データ作成を行う機会が多いが、そんなときにピンぼけやぶれた画像の補正作業のツールとして活用してきたのが「スマートシャープ」だった。しかしぶれた画像の補正作業は、新たに登場したこのフィルターで代替できるようになりつつある。それがPhotoshop CCに搭載された「ぶれの軽減」フィルターだ。フィルターメニューの「シャープ」に含まれていることでもわかるように、このフィルターも、Photoshop CCのシャープ機能が充実したことによって実現された新しいフィルターだ。

「ぶれの軽減」フィルターの設定画面

ぶれの軽減フィルターを実際に適用するには、フィルター>シャープ>ぶれの軽減を選択し、開いた調整画面で「ぼかし予測領域」を画面内の任意の場所(ぶれを軽減したい場所)に移動させると、プレビュー機能でぶれの軽減具合を確かめることができる。補正のかかり具合を調整するには「ぼかしトレーシングの設定」内にある「ぼかしトレーシングの境界」「ソースノイズ」を調整する。この調整を行うことによって発生するノイズが気になるときは「滑らかさ」のスライダーで調整し、エッジに二線ぼけが生じる場合は「斑点の抑制」を調整することで目立たなくすることができる。

「ぼかし方向ツール」フィルターの設定画面

なおぶれの軽減フィルターにはぼかし予測ツールのほかに「ぼかし方向ツール」も用意されている。いままでスマートシャープのぼかし(移動)を使って作業してきた人にとっては、角度入力が数値で確認できるこちらの方がわかりやすいかもしれない。画像の状態に応じて使い分けるといいだろう。

画像解像度の拡大アルゴリズムの進化

今でこそ「メガピクセル」が当たり前になったデジタルカメラだが、画素数が少ないカメラで撮った過去の画像を大きく使いたいときに常に頭を悩ませてきたのが、画像の拡大作業だった。改めて説明するまでもなく、拡大すると画像の解像感(シャープネス)が損なわれてしまうからだ。Photoshopの優れたところは、バージョンが進化するごとに画像処理の計算アルゴリズムが改良されることだが、Photoshop CCでは画像拡大時のアルゴリズムにその恩恵が与えられた。「画像解像度」の設定画面で画像拡大を行う際に追加された新しいアルゴリズム「ディテールを保持(拡大)」を選択すると「ノイズを軽減」スライダーが現れ、画像拡大時につきもののノイズを減らすことができるだけでなく、ディテール感の消失が少ない点において、従来のアルゴリズムよりも優れた効果を発揮する。

画像解像度の設定画面。新しく追加されたアルゴリズムが「ディテールを保持(拡大)」だ

「ディテールを保持(拡大)」を選択すると「ノイズを軽減」スライダーが現れる(赤枠で囲った部分)

月額1,000円でPhotoshopが使えるキャンペーンを2月末まで提供

シャープの進化に限っても、これほどの進化を見せたPhotoshop CCだが、Adobeでは古くからのPhotoshopユーザー向けに新たなキャンペーンをスタートした。2014年2月28日までの限定で、「Photoshop CS3」」以降の製品所有者(Creative Suite製品に同梱されるPhotoshop CS3、Photoshop CS3 Extended含む)で、年間プラン契約者に限り月額1,000円でPhotoshop CCおよびLightRoom5が使えるCreative Cloud特別プランを提供している。Adobeではこれを「Photoshop写真家向けプログラム」としているが、特に参加資格を制限しているわけではないので、該当するバージョンのPhotoshop正規ライセンスを持っていれば誰でも参加することが可能だ。本稿でも紹介したとおり、Photoshopの真髄はバージョンの進化と共に画像処理のアルゴリズムが改良され、進化するところにある。まだPhotoshop CCに移行していないユーザーも、この機会に是非移行を検討したい。

2月末までの期間限定で用意された写真家向けプログラム