ドラマ「地の塩」では勤勉で人望が厚い考古学者を演じる大泉洋

「友だちになりたいタレント」を一人決めろと言われたら、誰の名前を挙げる? 筆者は迷わず大泉洋の名前を挙げたい。なぜって、そりゃあ決まってる。楽しそうじゃないか。別に彼のプライベートを知っているわけじゃないのでイメージで語るしかないのだけど、とにかく大泉洋は見ていて飽きない男なのだ。

じゃあなぜ見ていて飽きないのかというと、俳優としてとてつもない幅の広さを持った男だからだ。これまでに出演してきたドラマ・映画は数知れず。その時々で、実に様々な役を見事に演じきっている。新しい映画やドラマを見ようとして、そこに大泉洋の名前があるだけでもう、ワクワクする。今回はいったいどんな役で、どんなテンションで、どんな演技を見せてくれるのだろうと。

彼がこなせる役の幅の広さはたぶん、俳優の中でもトップクラスだと思う。WOWOWで2月16日からスタートする大泉洋主演の連続ドラマW「地の塩」公開記念ということで、今回はそんな大泉洋が主演した映画を2本ピックアップし、彼の魅力がどこにあるのかを考えてみたい。

ウザいけど憎めないヤツ-「グッモーエビアン!」

「グッモーエビアン!」は2012年に公開された映画作品だ。名古屋で母娘二人暮らしをしているシングルマザーのアキ(麻生久美子)とその娘で中学生のハツキ(三吉彩花)。そこに、海外で2年間放浪生活を送っていたヤグが突然帰ってきたことで、ドタバタ生活が幕を開けるというストーリーである。

このヤグという男を演じているのが大泉洋なのだけど、いやはや、これがむちゃくちゃな男なのだ。自由気ままで、お調子者で、働いてすらいなくて……だけど純粋で面白くて憎めないヤツなのである。ヤグとアキは夫婦みたいなものだけど、籍を入れているわけではないし、ヤグとハツキは親子ではない。色々複雑ではあるのだけど、ヤグのキャラクターに笑わされているうちに、「これも一つの家族の形だよな」と思えてしまう。それくらい、大泉洋が演じるヤグには不思議な魅力がある。

このヤグという男を魅了的に演じられるのは、大泉洋しかいないだろう。子どものようなテンションははっきり言って鬱陶しく、ともすれば不愉快になるギリギリの線を行っているようにも思える。同じ役を違う俳優が演じれば、いかにイケメンでも――むしろイケメンだからこそ――単なるウザい男になってしまうはずだ。"ウザいけど憎めないヤツ"を演じられるのは、それくらい天性の素質が必要なのである。

そこへいくと、大泉洋は絶妙だ。そもそも「水曜どうでしょう」を始めとするバラエティで大泉が見せる"愛されるウザさ"はヤグに近しいものがある。いわばヤグは大泉洋の一面を切り出して増幅させたような、そんな役なのだ。これでハマらないはずはない。「グッモーエビアン!」では麻生久美子も三吉彩花も共にすばらしい演技を見せていたが、特に大泉洋の絶妙な演技が光る作品であった。

俳優としてのキャラクターに近い役をこなす――これはこれですごいことだが、大泉洋の真骨頂はここからだ。