米Appleが申請して1月16日(現地時間)に米特許商標庁(USPTO)によって公開されたモバイルペイメントに関する特許が話題になっている。従来のNFCとセキュアエレメントを使った非接触の"タップ"による決済だけでなく、Wi-FiからBluetoothまでさまざまなインターフェイスを使って安全に決済情報をやり取りする仕組みが興味深い。この仕組みを理解しつつ、Appleがモバイル決済に対してどのような考えを持っているかを分析してみる。

新特許の概要

同件はApple Insiderなどが報じているさらに詳しい情報はPatently Appleで参照可能だが、今回はUSPTOに提出された特許申請の中身を直接見ていこう。

特許の正式名は「METHOD TO SEND PAYMENT DATA THROUGH VARIOUS AIR INTERFACES WITHOUT COMPROMISING USER DATA (ユーザーデータの妥協なしに各種無線インターフェイスを通して決済データを送信する方法」であり、もともとは2012年9月28日に申請が行われたものだ。私見だが、この申請日が今回の特許で1つ重要な意味を持っていると筆者は考えている。

まず申請された特許の概要(Abstract)のところを見ると、次のようになっている。

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A commercial transaction method is disclosed. (商業用トランザクション手法に関する説明) The method first establishes a secure link over a first air interface by a purchasing device. (この手法では最初に購入に使うデバイスによる無線インターフェイス越しにセキュアなリンクを確立する) This secure link is between the purchasing device and a point of sale device. (このセキュアなリンクは購入に使うデバイスとPOSデバイスを結ぶものとする) The method further identifies a second air interface, which is different from the first air interface, and the second ai r interface is used to conduct a secure commercial transaction. (この手法ではさらに"2つめ"の無線インターフェイスを定義する。これは最初のインターフェイスとは異なり、セキュアな商業用トランザクションを行うために使われるものとなる)

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つまり、リンク確立用の1つめのインターフェイスと、実際にデータ転送や商業トランザクションが走る2つめのインターフェイスを定義する手法だというわけだ。2つめのインターフェイス(リンク)の確立は、最初のインターフェイスが用いられることになる。なぜ、このような形で面倒にも2段階でのリンクを確立するのだろうか? それがこの特許のポイントとなる。実際にどのようなリンクが確立されるのかは貼付の図版を見るとわかりやすい。

リンク確立に用いられる1つめのインターフェイスの概要図(出典: USPTO)

図中の102がスマートフォンなどのモバイルデバイス、116がPOSならびにPOSに付随する非接触通信(NFC)読み取り装置、118がPOSの接続先であるバックエンドサーバだ。Appleの説明によれば、最初のリンク確立には114のNear Field Communication (NFC)が用いられるという。NFCの読み取り範囲は一般的に数センチ~十数センチ程度なので、最初のリンク確立のためにPOSないし、それに準じた装置にいったんスマートフォンを"タッチ"させる必要がある。