昨年の「YAHOO!検索ワードランキング・テレビ番組部門」で3位(『あまちゃん』『半沢直樹』に次ぐ)を記録。さらに、YouTubeのスペシャル動画が再生1億回突破。Facebookの番組公式ページも約4カ月で10万「いいね!」を突破、28日には初の公式ムック本が発売されるなど、いつの間にかリアリティー番組『テラスハウス』(フジテレビ系 毎週月曜 23:00~)の人気がとんでもないことになっている。

テラスハウスに住む、歌手・住岡梨奈

当然、住人たちの躍進も目覚ましく、モデル・今井華はバラエティ番組に進出し、グラビアアイドル・筧美和子は『めざましテレビ』のレポーターとなったほかドラマ『最高の離婚special2014』への出演も決定し、菅谷哲也に至っては素人から俳優になるなど、完全に"スター登竜門"状態だ。

2012年10月のスタート時は、さほど話題にならなかった『テラスハウス』がなぜ大ブレイクしたのか。人気の秘密を4つの理由から解説していく。

【理由1】"共感&憧れ派"と"違和感&バカにしたい派"のWクチコミ

『テラスハウス』の視聴者は、「思いっきり感情移入して見る」「冷めた目で見る」のどちらかに分かれ、中間のスタンスがほとんどいない。学生や若手OLを中心にした"共感&憧れ派"は、「学校や職場などリアルな会話の場で盛り上がり」、男性やネット住民を中心にした“違和感&バカにしたい派”は、「ネットで徹底的にこき下ろす」というようにクチコミの幅が広いのだ。 特に「しょせん作り物」と思っている"違和感&バカにしたい派"は、そのコメントが強烈。見た目、言葉、行動の全てが批判の対象になり、たとえば「あの部屋着はキモイ」「カッコつけるな。リアリティーショーならトイレも見せろ!」と毒を吐きたい人にとっては、最高のネタになっている。 ともあれ、素人(タレントの卵)の恋愛バラエティは、こういう"賛否両論の図式"が一番盛り上がる。すでに、『ねるとん紅鯨団』『ねる様の踏み絵』『ウンナンのホントコ!(未来日記)』『あいのり』などのレジェンド番組に肩を並べたのかもしれない。

【理由2】「湘南ライフ」「シェアハウス」への2大憧れ

サザンオールスターズの歌詞もあって、関東だけでなく全国から憧れを集める湘南エリア。そこに人気のシェアハウスを絡めることで、「ちょっと興味がある」「一度は住んでみたい」という潜在願望をあおるシチュエーションを作り上げた。そのため映像は、海、家、車、料理など、鼻につくくらいスタイリッシュさにこだわり、いわゆる生活臭を感じるようなものはほとんど見られない。若い世代ほど希望を抱きにくい時代だけに、「泥臭いところはいらない」ということか。 また、これらにこだわって「恋愛に特化しすぎなかった」ことも、10~20代のハートをつかんだ理由の1つ。30代以上は「何でもっとガッつかないの?」と思うだけだが、気楽さと自由を求める若年層には、これくらいがちょうどいいようだ。

【理由3】ツッコミ放題! "手が届いてしまう"住人たち

番組コンセプトは、「どこにでもいそうだけど"手の届かない"男女6人」。しかし実際は、見た目こそイケてるものの、人としてはツッコミどころだらけで、その辺のサラリーマンやOLよりも薄給かつ人生経験の少ないメンバーばかり。"手が届いてしまう"等身大のキャラだからこそ、肩の力を抜いて見られるのではないか。 その証拠に現在の男性陣は、恋愛4連敗中で俳優の卵・菅谷哲也(てっちゃん)、恋愛2連敗中で駆け出し写真家の今井洋介(ようさん)、新メンバーも売れないブサイク芸人の島一平(いっぺいちゃん)と、むしろ“手が届きすぎる”レベルのメンツに落としている。 ちなみに、女性新メンバーの小貫智恵(ちーちゃん)も、現役大学4年生で彼氏ナシ。やっぱり“手が届いてしまう”路線に切り替えたのか?

【理由4】『あいのり』後、素人恋愛バラエティなし

絶大な人気を誇り、約10年間続いた『あいのり』が2009年3月に終わり、その後の素人(タレントの卵)恋愛バラエティは、ブログを使った『すごキュン』くらいで、これもわずか半年間で終わってしまうなど、空席状態だった。 一方、2000年代を振り返ってみると、お見合い旅行の『今夜はシャンパリーノ』、お互いを裁き合うサバイバル合コン『サバコン』、現役高校生の合コン『恋愛部活』と多彩だっただけに、視聴者は新たな素人(タレントの卵)恋愛バラエティを求めているのかもしれない。 『テラスハウス』が昨年10月に金曜23時から月曜23時、つまり『あいのり』の放送枠に移動したのも、当時の視聴者をつかもうとしていることの表れ。また、10代にとっては、「初めて見る素人(売れないタレント)恋愛バラエティ」であり、新鮮なのかもしれない。 『あいのり』のように予算をかけず、ほどよい素人(タレントの卵)を集め続けることができれば、まだまだ放送は続いていくだろう。


「今まさに絶好調!」の『テラスハウス』だが、必ずやってくるだろうマンネリに、どんな対策を持ってくるのだろうか。 「そこそこのビジュアルで、やる気があって、演出を受け入れてくれる」タレントの卵たちは、リアリティーショーの生命線。悪い言い方をすれば、「使い捨てされてもともとだから、何でもやってくれる」存在だけに、生放送での公開告白、(今度こそ)アイドルの恋愛、もしかしたら妊娠・出産……何だって起こりうるのだ。 まずは、6人だとイマイチ恋が盛り上がらないから、8人くらいに増やしたらグチャグチャになって楽しそうだが、予算的に無理か?! 一社提供のトヨタ車をいっぱい映して、どうか予算アップを。

木村隆志
コラムニスト、ドラマ評論家、タレントインタビュアー。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマは毎クール全作品を視聴する重度のウォッチャー。雑誌やウェブにコラムを提供するほか、取材歴1000人超のタレント専門インタビュアーでもある。著書は『トップ・インタビュアーの聴き技84』など。