スマートフォンの通話料を節約する方法として注目を集めてきているのが、ジーエーピーが提供する「G-Call」やフュージョン・コミュニケーションズの「楽天でんわ」といった格安通話サービスだ。これらのサービスでは、通話発信する際に、相手の電話番号の前にプレフィックス番号を付加することで、格安な通話料で電話をかけられるのが特長となっている。

プレフィックス番号を利用する通話サービスは、かねてより法人向けにも提供されており、先述のG-Callが法人向けにも提供されているほか、NTTコミュニケーションズが「0035ビジネスモード」を、フュージョン・コミュニケーションズが「モバイルチョイス」をそれぞれ提供している。これらの法人向け通話サービスは、通話料を節約するだけでなく、個人のスマートフォンを業務に用いるという「BYOD」(Bring Your Own Device)を導入する上でもメリットがある。本稿では、G-Callをはじめとする格安通話サービスを企業が導入することのメリットを解説するとともに、各社の法人向け通話サービスを比較してみたい。

格安通話サービスを業務に導入するメリットとは?

通話だけでなくメールや文書作成、地図閲覧など、さまざま機能を利用できるスマートフォンは、業務で利用する上でも便利な端末だ。しかし、会社がスマートフォンを用意して従業員に貸与するのは、端末購入や維持費などのコスト面の負担が大きい。実際には、BYODによって個人のスマートフォンを仕事にも利用しているケースがほとんどだと思われる。

とはいえ、仕事で電話をかけた分の通話料まで個人で負担するとなると、今度は従業員側の負担が大きくなる。仕事で利用した通話料を経費として申請すればよいが、毎月の通話料から仕事の通話と個人的な通話を区別して経費計算するのは手間がかかり、余計な事務作業を増やすことにもなりかねない。

そこで、BYODと一緒に企業が導入を検討したいのが、G-Callなどのプレフィックス番号を利用する通話サービスだ。仕事の通話をプレフィックス番号を付けて発信することで、それら通話料がまとめて会社に請求され、経費計算の作業が不要となる。個人的な通話をする際は、プレフィックス番号を付けずにいつも通り発信すればよく、1台のスマートフォンで仕事とプライベートの通話を明確に区別することが可能だ。

各社の法人向け通話サービスでは、それぞれスマートフォン向けに専用アプリが提供されており、アプリから通話発信することでプレフィックス番号を自動で付加することが可能。また、これらのサービスは従来型の携帯電話でも利用でき、手入力や携帯電話の機能によりプレフィックス番号を付けて発信すれば、サービスを利用した通話が可能になる。

法人向け通話サービスの料金を比較

BYODにおける仕事とプライベートの通話を区別し、従業員の経費計算の手間を削減できるのがG-Callなどの通話サービスを導入するメリットだが、企業にとっては通話料を節約する上でもメリットがある。それでは、G-Call、0035ビジネスモード、モバイルチョイスという3サービスの利用料金を比較し、メリットを確認してみよう。

■ 法人向け通話サービスの比較

G-Callの通話料は、個人向けサービスと同様に固定・携帯電話宛ともに10円/30秒となっている。一方、0035ビジネスモードとモバイルチョイスでは、固定電話宛が21円/1分、携帯電話宛が31.5円/1分だ。

G-CallのiPhoneアプリ。端末の連絡先やダイヤルパッド、発信履歴から通話発信できる

現在、携帯各社から販売されているスマートフォンの多くは高速通信サービスのLTEに対応したモデルだが、それらLTE対応スマートフォンでは、無料通話分がなく、1回あたりの通話料が21円/30秒と割高な料金プランが一般的だ。そのため、いずれの通話サービスを利用しても通話料の節約が可能と言えるが、とりわけ携帯電話宛の通話料はG-Callが割安となっている。とくに携帯電話宛に電話をかける機会が多い業種などの場合、G-Callを利用したほうが、より経費削減につながるだろう。

0035ビジネスモードのiPhoneアプリ。端末の連絡先のほか、ダイヤルパッドからも通話発信が可能

モバイルチョイスのiPhoneアプリ。端末の連絡先からのみ通話発信が可能

初期費用はキャンペーンを含めると、各サービスとも0円。また、月額基本料も各サービス0円となっている。なお、0035ビジネスモードの場合、NTTコミュニケーションズのひかりライン、またはNTT東日本・西日本の固定電話、ひかり電話などに加入していることが提供条件となっているため、注意が必要だ。

また、各サービスとも国際電話を利用可能だが、国際電話の通話料は発信先の国ごとに異なっている。たとえば米国宛は、G-Callが29円/1分、モバイルチョイスが50円/1分となっており、0035ビジネスモードは時間帯などによって変動があり60円~120円/1分。中国宛は、G-Callが48円/分、0035ビジネスモードが35円~40円/分、モバイルチョイスが70円/1分。

一概にはどのサービスの国際電話の通話料がお得とは言えないが、G-Callの場合、国際電話の通話料は6秒計算となるため、短時間の通話であっても無駄に多くの通話料がかからないのが特徴となっている。

G-Callの個人向け・法人向けサービスの違いは?

先述の通り、G-Callは個人向けにもサービスが提供されている。G-Callの個人向け、法人向けサービスの違いを見てみると、まず法人登録の場合、利用料金の支払い方法として、クレジットカード払いに加えて、口座振替も選択できる。また、個人登録の場合、通話明細はWeb閲覧のみ無料で、郵送は有料となっているが、法人登録の場合には通話明細や請求書を無料で郵送してもらうことが可能だ。

さらに、法人向けの管理ソフトも用意されており、従業員や部署ごとに通話の集計をしたり、発信先番号などの通話明細を確認することが可能となっている。すでに個人でG-Callを利用しているという経営者や従業員は、会社全体での利用を検討・提案してみるのもよいだろう。

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本稿でも紹介した通り、G-Callなどのプレフィックス番号を利用する通話サービスを企業が導入すれば、BYODにおけるスマートフォンの通話料を仕事用とプライベートで区別でき、経費計算の手間も削減できるといったメリットがある。また、法人向け通話サービスを比較すると、G-Callの固定・携帯電話宛の通話料がもっとも安く、より経費削減につながりそうだ。BYODを活用する際には、これらの通話サービスを同時に検討してみてはいかがだろうか。