巷の話題はラスベガスで開催されたCES 2014で持ちきりだ。Microsoftは2013年を最後にCESから撤退し、あまり話題のない一週間だったが、Bingの公式ブログ「Bing blogs」では、年末に増えた検索キーワードをもとに「ヘルス&ケア」のアピールを行っていた。Microsoftは以前から、健康維持や身体情報を管理するプラットフォーム「Microsoft HealthVault」を提供し、健康管理に一役買ってきた。今週はこのMicrosoftが取り組む健康管理面についてレポートする。

健康維持を実現する「Microsoft HealthVault」と「ヘルス&ケア」

治療には多大なお金がかかる。この言葉を否定する方はいないだろう。筆者も30代までは病院嫌いで、風邪を引いても市販薬で散らすような生活を送っていた。しかし、年を重ねると自身の治癒力に頼っても治らなくなり、気付くと病院通いするようになった自分がいる。定期的に病院へ通うと診察料から薬代、場合によっては交通費もかかる。"起きて働く果報者"ではないが、健康でいることの価値に今さらながら気付いたのである。

筆者の具体的な対応はさておき、健康状態の維持はセルフコントロールを入社条件に求める米国では、さらに重要視されているようだ。「Microsoft HealthVault」は、健康維持や身体情報を管理するネット上のプラットフォームとしてサービスとして、2007年10月にベータテストを開始。2010年6月から本格的にサービスを提供しているが、現時点では米国および英国だけである(図01)。

寡聞にして知ることはなかったが、すでに日本国内でもベータテストが進められているのか、試しにサインインするとコンテンツはすべて日本語化されている。加えて後述するWindowsストアアプリの「ヘルス&ケア」と連動しており、同アプリから入力した情報は、自身のプロフィールと連動していた(図02)

図01 Microsoft HealthVault。国内からアクセスすると日本語化されている

図02 画面右下には「ヘルス&ケア」から更新した情報が反映されたことを示すメッセージが現れる

今回Microsoft HealthVaultを取り上げた理由の一つが、同社公式ブログ「Bing blogs」の「Make 2014 the Healthiest Year Yet」という記事を目にしたからだ。記事では同社とImpulse Researchの共同調査により、41%のユーザーは2014年も健康な状態を高め、今よりも痩せたいと回答したという。

さらにBingでは検索キーワードとして、「healthy recipes(健康的なレシピ)」が45%、元日には60%増えたそうだ。このように健康に気を遣うユーザーが増えている中、Windowsストアアプリのヘルス&ケアをプッシュする、というのが記事のあらましだ(図03)。

図03 日本語版「ヘルス&ケア」。ローカライズの問題は、ほぼ解決している

20万以上のコンテンツを持つ同アプリは、大別すると日々摂取した食事のカロリー計算や、有酸素運動および結果管理、病状に関する情報収集の3つに分かれる。例えば「リンゴ」のカロリーを調べると、72カロリーながらも脂質は0.23グラム、炭水化物は19.06グラムという数値が示された。このように糖尿病気味で脂質摂取を制限しなければならないユーザーは、一目で食材を確認できる。ただし、一般的に我々が食する料理の詳細情報は存在せず、「フード&レシピ」もカロリーや脂質といった情報は掲載されていない(図04~05)。

図04 食材に関する情報はかなり詳しく、カロリーはもちろん食材に含まれる脂質や炭水化物、ビタミンなども示される

図03 日本語版「ヘルス&ケア」。当初心配したローカライズの問題は、ほぼ解決している

その一方で運動を目的とした「エクササイズ」や筋肉を鍛える「ワークアウト」に関しては、かなり充実した内容だ。鍛える箇所や性別による向き不向き、主な所要時間などが示される。ユーザーが必要とする箇所に負荷を与えて鍛えるのに良い教材となるはずだ(図06)。

図06 エクササイズやワークアウトの数はかなり多い。トレーニング器具さえ用意すれば自宅でもできる……はずである

例えばお腹のぜい肉を減らす「平らなお腹をつくる10のワークアウト」では、約30分となっているが、休憩を含めると1時間ぐらいは必要だろう。ただし、週2回実行するだけでよい。説明にも「2日連続して行わないでください」と注意まである。表にある各項目をクリック/タップすれば、具体的な運動方法が図で示されるため、トレーニングジムに行かなくとも自宅で十分こなせるだろう。ただし、これらの運動にはバランスボールや、足を引っかけるベンチなどが必要だ(図07~09)。

図07 ワークアウトの1つ「平らなお腹をつくる10のワークアウト」。気になるキーワードだ

図08 具体的な内容は30分程度で済む10種類のトレーニングを週2回実行するというもの

図09 トレーニングの1つ「オルタネーティング・メディシンボール・Vアップ」。運動不足の筆者には、ちょっと腰が引ける内容である

そして最後の病状に関する情報収集もいくつかの機能が用意されている。「症状セルフチェック」は文字どおり、思い当たる症状をリストから選択して、考えられる病気に関する情報を知るというものだ。例えば"最近胸焼けがする"という場合は、腹部をクリックしてリストから同項目を選択。そして他の症状として痛みや食欲不振といった症状を選ぶと、いくつかの病例が示される。もちろん素人判断は"生兵法は大けがのもと"となるので、あくまでも参考程度にとどめるべきだが、分厚い辞書のような本を見るよりも簡単だ(図10~11)。

図10 自身の症状から考えられる病気を調べる「症状セルフチェック」

図11 症状から病気の概要や具体的な症状が確認できる。疑わしき場合は病院で診察を受けるべきだ

さて、話はMicrosoft HealthVaultに戻るが、同ページの「アプリと測定器」を見ると、同プラットフォームが対応しているアプリケーションやデバイスの一覧が列挙される。医療関係に詳しくない筆者としては初見のものばかりだが、例えば「Medical Wallet for Windows Phone」というアプリケーションは、Windows Phoneで血圧測定や歩数計といった機能を備えているようだ。また、「A&D Medical UA-767PC Upper Arm Blood Pressure Monito」というデバイスは、高血圧や心疾患のチェックが可能だという(図12~13)。

図12 Microsoft HealthVaultがサポートするアプリケーションの1つ。血圧や血糖値をチェックが可能だという

図13 同じくサポート済みデバイスの1つ。高血圧や心疾患を検査できるようだ

現時点で日本マイクロソフトからMicrosoft HealthVaultに関するアナウンスはないため、日本国内での展開はまだまだ先の話なのだろう。また、医療機関や器具メーカーとの連携といったハードルもあり、簡単な話ではないことは素人の筆者でもわかる。だが、健康維持は万人が欲するものだけに、早期のローンチを期待したい。

阿久津良和(Cactus