以上を踏まえると、2014年時点での"第3のモバイルOS"は小粒な状況にとどまり、大きく抜きんでる存在が見えてこない状況だ。むしろ警戒すべきなのは、これら第3のモバイルOSが主なターゲットとしているミッドレンジ以下の市場について、攻略前にAndroid OSに市場を席巻されるようなことのないよう留意すべきだという点だ。これらOSはむしろ現在、市場の幅を広げて小さなムーブメントを起こす役割を担っている。例えばフィンランドでは、Sailfish OSを搭載したJollaというメーカーのスマートフォンが販売されて話題になった。Sailfish OSはMeeGoが分岐したTizenと兄弟の関係にあるモバイルOSであり、Jollaは元Nokiaの技術者らによって設立された企業だ。AndroidとiOSが引き続きスマートフォン業界を席巻する一方で、各国では地場OSとも呼ぶべき、こうしたSailfish OSのような独自プラットフォームが第3の勢力として人気を集める可能性もある。そのようにFirefox OSやTizenも特定市場ではそれなりのポジションを獲得して長く生き続けることになるかもしれない。カナダにおけるBlackBerryのように……。

2014年の注目技術は「HTML5」

HTML5はWebページの記述に用いられている標準言語の最新バージョンのことだ。実際にはJavaScriptやCSSとペアで利用されるが、便宜的に「HTML5」としておく。HTML5の大きな特徴は、従来までと比較してマルチメディアコンテンツの取り扱いに秀でていること、そして"オフライン"での利用を考慮に入れた点にある。これにより、いわゆる「携帯アプリ」的なものを実現できる。オンライン時にモバイルデバイスにHTML5のプログラムとコンテンツを取り込んでおき、電波の届かないオフライン状態でもそれらを再生/加工することが可能になる。

もともと、初代iPhoneが発売されたときにAppleはサードパーティらに「HTML5でコンテンツを記述するように」と訴えていたが、当時の技術的ハードルやパフォーマンス上の問題、ユーザーの利便性の観点から第2世代のOSにあたる「iPhone OS v2.0 (現在のiOSの旧称)」でSDK配布が行われ、ネイティブアプリ開発が認められた。このときに発表したアプリストアの先駆けとなる「App Store」が爆発的にブレイクし、特に「中小企業でも世界を相手にビジネス」「販売機会の拡大」というメリットで注目を集めることになった。現在では「アプリストアのビジネスがApple 1社の判断にすべて委ねられる」「売上の3割という高い手数料」の2点で批判されることも多いが、市場拡大に寄与したという功績は多くが認めるところだろう。実際、後続のベンダー各社がすべて同じビジネスモデルを踏襲していることからもその影響力がわかる。

これとは別のトレンドとして、最近盛り上がりつつあるのがHTML5だ。「モバイルOSの上でHTML5をアプリ記述言語として利用するのは、パフォーマンスやハードウェアアクセスの点からも問題がある」という意見もあるが、ある程度はハードウェアの進化で吸収できるようになったこと、そしてAPIなど環境整備を経て、かなり本格的な開発が可能になりつつある。またネイティブアプリを扱うApp Storeらアプリストアと異なり、HTML5ベースのものなら配布が比較的容易で、さらにクロスプラットフォーム開発に向いている。トレンド的には今後一部アプリを除いて、ネイティブアプリからHTML5へと移行していく可能性が高いというのが筆者の予測だ。