「凝縮」から「拡散」へ

スマートフォンは、限られた空間に機能を凝縮することが宿命のデバイスだ。マルチタッチパネルというアイデンティティは堅持しつつ、CPU/SoCの高性能化、3Gから4G/LTEへの通信機能の進化、裏面照射型CMOSセンサーの採用といったカメラ機能の強化と、フィーチャーフォン時代を上回る勢いで前進を続けてきた。

しかし、スマートフォンを端末単体で語ることがいよいよ難しくなる、2013年はそう感じさせる出来事が多い1年でもあった。手のひらから若干はみ出る程度に機能が「凝縮」されたデバイスが、オーディオ・ビジュアル機器との連携にとどまらず、白物家電や自動車などあらゆる電化製品とコネクトする方向へ進む、その意味での「拡散」という言葉が来年以降のスマートフォンを語るうえでは欠かせない。

その拡散を支えるのが、スマートフォンが持つ「仲介役」としての機能だ。NFCにBluetoothそしてWi-Fiと複数の通信経路を持つスマートフォンならば、どのようなデジタル機器ともコネクトできる。常に持ち歩く携帯電話であるだけに、人と各種デジタル機器との仲介役には最適だ。

12月にリリースされた「Bluetooth 4.1」は、スマートフォンとの組み合わせでさらに可能性が広がる

その意を強くしたのは、12月に発表された「Bluetooth 4.1」だ(関連記事)。接続性の改善やLTEとの相互干渉抑制といった新機能もさることながら、Bluetoothデバイスがインターネットへ直接接続可能になった点に注目したい。こちらの記事にあるように、スマートウオッチとBluetoothセンサー、そしてスマートフォン(この場合スマートウォッチがハブ)を組み合わせたハブ機能も要注目だが、自律的にインターネットへ接続できることのほうが応用の幅は広い。

用途のひとつに考えられるのが、自動車の(安価な)通信インフラだ。現在一部車種は、ナビゲーションシステムに通信モジュールを搭載することで各種テレマティクスサービスを実現しているが、Bluetooth 4.1かつテザリングに対応したスマートフォンがあれば、車両側はBluetooth 4.1対応だけで通信モジュール(および通信契約)は不要となるはず。自動車に限らず、IoT(Internet of Things)が進むうえで、モバイルルータとしての機能を果たしうるスマートフォンの役割は大きいといえるだろう。

車速やエンジン回転数といったデータをインターネットへ送信するテレマティクスサービスも、Bluetooth 4.1+スマートフォンの組み合わせで普及が加速する可能性が(写真は「カートモ」)

Bluetooth 4.0対応端末限定だが、Bluetooth 4.1はソフトウェアアップデートが可能という点も見逃せない。2013年に発売されたスマートフォンの多くが4.0対応であることからすると、2014年早々に対応機器/サービスが登場しても不思議ではない。現在ある「スマート家電」も、Bluetooth 4.1でさらに拡散していくのではなかろうか。

(記事提供: AndroWire編集部)