取材中、樫尾幸雄副社長に、14-Aを実際に操作していただいた。

電源を入れると、カタカタと動きだす。テンキーで数字を入れると、表示部に数字が表示される。上から「0」~「9」まで並んだ数字がバックライトで光って表示されるというものだ。数字と加減乗除のボタンを押すと、静かな音を立てながら計算結果を表示する。

実際に14-Aを操作する樫尾幸雄副社長

14-Aの表示部

計算が終わると「C(クリア)」ボタンを押せばいいが、樫尾幸雄副社長は、ひとつの計算が終わると電源スイッチを入れ直すという使い方をしており、それだけ手軽に電源のON/OFFができることも示して見せた。なお、乗算と除算の際には、前の置数および計算結果をクリアすることなく、次の計算ができる自動クリア機能も搭載している。

さらに14-Aには、決まった数を記憶させておく機能も盛り込まれた。本体の下部には、5桁ずつの定数を設定できるダイヤルが用意されており、15個のダイヤルを使用し、定数を5桁×3種類までセットできる。セットした数字は、それぞれ「X」、「Y」、「Z」のボタンを押して利用し、この数値による乗算、連乗などを行う場合にも、「X」「Y」「Z」ボタンを押すだけで計算が可能だ。為替レートの計算など、固定された数値を繰り返し使うのに重宝したという。

今日の電卓と同じテンキーを採用

定数を設定するダイアル。5桁ずつ3組設定できる

操作部のボタンには様々な機能が設定されていた

14-Aの使用説明書も読むことができる

そのほか、二乗計算がワンタッチで行える「S」キー、時間がかかる除算を途中で止める「ST」キー、置数を変更できる「W」キーなど、簡単な操作で計算の利便性を高める機能を搭載していた。また、小数点の表示も完全自動化し、分かりやすく表示するように工夫されている。

計算によっては、結果の数字表示が斜め一列にそろったり、シンメトリーになったりと、まるでデザインのように表示されることもある。樫尾幸雄副社長は14-Aの操作中に、そうした数を表示するちょっとした裏技のような使い方も披露してくれた。

計算結果がユニークなデザインとなって表れることもある

14-Aの成功は、1962年に発売する科学技術用計算機の元祖ともいえるAL-1につながっている。これは、歯車式のプログラムを用いた計算機だ。「歯」を折ってプログラムをセットしておき、歯車を交換することで、異なる計算をスムーズに切り替えることができた。

1962年に発売した科学技術用計算機「AL-1」

歯車式のプログラムを使用。歯車の形状がプログラムになっている

AL-1の本体に歯車をセットする様子

ここで、話を14-Aの開発前夜に戻そう。