複合要因があるが、今回の買収提案におけるポイントは下記の通りだ。

  • 米国はメガキャリア2社(Verizon Wireless、AT&T)の寡占状態にある

  • メガキャリア2社は引き続き契約者数を伸ばす一方で、Sprintは微減、新プランを導入したT-Mobileは復調傾向にある

  • Verizon Wireless対抗を見据えてT-Mobile買収を目指していたAT&Tは、最終的に業界他社の反対や米連邦通信委員会(FCC)の介入により買収を断念

  • 現状のSprintとT-Mobileの契約者数を加算すると、ほぼAT&Tに並ぶシェアを獲得した第3位の巨大キャリアとなる。米国は3社による競合体制へ

  • ただし携帯事業の売上でみれば、SprintとT-Mobileの2社を足してもAT&TやVerizon Wirelessと100億ドル以上の開きがある(WSJ調べによる)

もちろん金額の問題もあるが、今回の買収の最大のキーポイントは「FCCや関連機関の判断」にある。2011年にAT&TがT-Mobile買収を断念したのは、もしAT&Tの買収が成功するとライバルのVerizon Wirelessを頭1つ抜いて同社は米国で圧倒的シェアを持つ第1位のキャリアに君臨することになり、その弊害が懸念されたためだ。だがAT&Tは買収を断念したとはいえ、Verizon Wirelessと合わせて現在も加入者数を伸ばしており、市場がこの2社の寡占状態にあることには変わりない。そこで第3の勢力を用意し、この2社に戦うだけの力を与えることでさらなる競争を促す判断が出てくる可能性だ。正確な数値は不明だが、もし買収が成立すればAT&Tと同等、あるいはそれを若干上回る契約数の巨大キャリアが誕生することになる。

前回買収を妨害されたAT&Tはもちろんのこと、Verizon Wirelessや第5位以下のUS Cellular等の小規模キャリアも反対するとみられ、それでなおFCCや関連機関がどう判断するかという点が問題であり、完全に政治判断による買収の可否ということになる。買収後はSprintとT-Mobileに膨大な周波数資産が集まることになり、このあたりの売却やトレード交渉も買収を認める条件の1つになるとみられる。