2013年12月6日、ARMは恒例である「ARM Technology Symposia 2013」を都内で開催した。本国では「ARM TechCon 2013」が10月29日から3日間掛けて開催されたが、こちらはコース数もすごい代わりにすべて有償というもの。対してTechnology Symposiaの方は1日のみのイベントで、中国・ヨーロッパ・インド・日本・韓国・台湾の6カ国で開催され、参加も無償となっている。言ってみればARM TechConのDigest版がARM Technology Symposiaと考えてよいだろう。

さて、今年は本国のTechConの方でも、あまり大きなニュースは無かった。一番大きいものはリアルタイム向けにARM v8Rアーキテクチャが発表になったことで、これを利用する形で機能安全に対応したCortex-Rシリーズの投入などが明らかになった事で、特に自動車業界向けの半導体ベンダには大きなインパクトがあるが、ただこれは自動車を含むリアルタイム制御向け以外にはあまり影響の無い話である。そんなわけで基調講演では、むしろIoT向けの話の概略に終始することになった。

アーム株式会社の新体制

まず最初に挨拶に立ったのは日本法人であるアーム株式会社の内海弦社長(Photo01)である。アーム株式会社といえば長らく西嶋貴史氏が社長を長らく勤めてこられたが、年齢的な問題から7月より内海氏にバトンタッチとなった。今回はその内海社長の、対外的には初めてのお披露目とでもいう位置づけではある。

Photo01:前職は同社の営業担当副社長であるが、ルーツを辿るとインテルジャパンなのだそうである

ただ今回の氏の挨拶は比較的穏当、というか自身のミッションを控えめに説明するに留まった。氏のミッションは「日本のビジネスをもっと盛んにしたい」ということであり、そこにARMを使って貰いたい、というのが氏の希望であるとした。これに関して最近「よく儲かるんでしょう」と聞かれる(Photo03)とし、「確かに本社は儲かってるのだけど、日本ではぼちぼちといったところ」と説明した。ARMの場合、主要な売り上げはライセンスとロイヤリティで、特にロイヤリティは顧客である半導体企業が売り上げを増やすと自動的に増えるものだから、逆に言えば国内の半導体業界があまり振るわない現状では、当然国内からのライセンス収入もそれほど多くはならないことになる。で、長期的にはもちろん売り上げを増やすのが目的であるが、そのためにはまずDesign Winを増やしてゆく事であり、そのためには国内の企業が新しい分野で新しい製品を開発してくれる事を期待している、とした(Photo04)。

Photo02:元々日本は早くからARMのライセンスを受けた企業が多く、そこから様々な製品が出てきた事を説明しながら、「次の革新的なデバイスがまた日本から出てくる」事をアーム(日本法人)だけでなくARM本社も期待していると説明した

Photo03:実のところ、アームは全社の中ではコストセンターという位置づけであり、アームそのものの売り上げというのは実はあまり重要ではない。というのは、IPライセンスは本社との直接契約になるので、アームはあくまでも営業支援と、あとはサポートを担うのみである。なので、ノルマというか目標というのは売り上げではなく、むしろライセンス数とかDesign Winの数ということになる

Photo04:ある意味残酷ではあるが、正確なものの見方だと筆者は考える。もう量産段階では台湾とか中国、あるいは途上国には到底太刀打ち出来なくなっているのが電子関連産業の現状で、その上でではどういう方向を進むべきか、という信念がここには込められていると思う

その後はARMのビジネスモデルについて簡単に説明を行った後に、当日のセッションの内容と見所についてちょっと触れて氏の挨拶は終了した。