セールスフォース・ドットコムは12月12日、東京都千代田区のJPタワーホール&カンファレンスにおいて、クラウドコンピューティングイベント「Salesforce1 Essentials」を開催した。

このイベントでは、11月に米サンフランシスコで開催した「Dreamforce 2013」で注目を集めた新サービス「Salesforce1」の詳細のほか、Salesforce1に対応した国内向けISVアプリケーションについて発表した。

基調講演に登壇したセールスフォース・ドットコムの川原均副社長は、「モバイル、クラウド、ソーシャルの最新トレンド」をテーマに、Salesforce1の概要と、セールスフォース・ドットコムが目指す法人向けクラウドサービスの方向性について説明した。

セールスフォース・ドットコムの川原均副社長

川原副社長は、「Dreamforce 2013には、13万5,000人が事前登録を行い、日本からも500人以上が参加したが、もっと詳細を知りたいという声を国内の方々からたくさんいただいた。ここで改めて、その内容を説明したいという狙いから、今回のイベントを開催した」とし、「Dreamforce 2013は、単なるソフトウェアイベントではなく、21世紀の企業経営に向けた情報を共有する場になった」と切り出した。

そして、Dreamforce 2013においては、「Internet of Customers(顧客のインターネット)」が重要なキーワードになったことを示しながら、「私たちの生活や、私たちの日常に入ってきたインターネットが、いよいよビジネスのシーンにも本格的に訪れたのが、Internet of Customersの世界である。すべてのモノにセンサーがつき、すべてのものがネットワークにつながっている。日本では、世界最高速のネットワークスピードが国の隅々にまで広がっている。これが21世紀のコンピューティングであり、コンピューティングの第3の波が訪れている状況だといえる。企業は、顧客の一人一人が発信する情報から、顧客が何をしたいのか、何を考えているのかがわかる。マスマーケティングの手法の時代が終わり、一人一人に対するOne to Oneマーケティングの時代が訪れる。個人に対して何をすべきかということがわらかないと、企業は競争から置いていかれることになる」などとした。

Dreamforce 2013の様子を写真を交えて紹介した

Dreamforce 2013では、「INTERNET OF COUSTOMERS(顧客のインターネット)」が重要なキーワードとなった

コンピューティングの第3の波が訪れている

One to Oneの新たなカタチでつながるのがSalesforce 1だとする

そして、「この流れは、多くの経営者が頭では理解している。だが、それに向けての準備はできているのか。そこに課題がある」と語りながら、「それに向けた回答がSalesforce1である」と位置づけた。

Salesforce1は、あらゆるものがネットワークでつながる時代(コネクテッドワールド)において、企業が事業活動に最新のソーシャルおよびモバイルテクノロジーを取り込み、顧客との間に新たなつながりを生み出すことを支援する包括的なクラウドサービスと位置づけており、企業の営業活動、カスタマーサービス、マーケティングのあり方を変革するとともに、ソーシャルおよびモバイルに対応した企業向けアプリケーションの構築環境を根本から変えるプラットフォームとしている。

Salesforce 1はあらゆるアプリが動作する

あらゆる人にメリットをもたらすとする

Salesforce1では、従来から10倍以上に拡充したAPIを活用することにより、旧来のプラットフォーム環境の数分の1の時間でアプリケーション構築をすることが可能になるといった特徴を持つ。

「CRMアプリケーションやChatter、カスタムアプリケーション、AppExcahngeアプリケーションが、Salesforce1ひとつでつながるようになる。ひとつのアプリが、全世界の20万社のSalesforceユーザーが利用できるようになる」と、川原副社長はSalesforce1の特徴を示した。

そして、開発者、ISV、ユーザー、システム管理者、顧客のあらゆる人に対してメリットがあることに言及し、「あらゆる利用者に対して、あらゆることが、手元のモバイルデバイスから利用できるようになる」などとした。

また、日本語アプリとして、アイネット・システムズ、Evernote Corporation、サムライシステム、日本技芸、レッティ、オークニー、セラク、チームスピリット、日本オプロ、Box Inc.の10社が、Salesforce1向けにアプリを開発し、12月から順次提供を開始することを明らかにし、「日本で作られたアプリを、すぐに利用できる。そして、全世界のユーザーに対して、これを提供できるようになる」と述べた。

ISVからビジネスアプリが提供される

国内では早くも10社からアプリが提供されることが発表された

Salesforce1の正式発表から約1カ月で、これだけのアプリが揃ったことからも、モバイルを重視した新たなプラットフォームへの移行が、短期間に推進されたことがわかる。

会場ではSalesforce 1のデモストレーションも行った

Dreamforce 2013の様子を紹介するコーナーも用意

そして、川原副社長の基調講演に続き、「モバイル戦略実現のための新しいプラットフォーム」と題して、セールスフォース・ドットコム プロダクトマーケティング シニアマネージャーの田崎純一郎氏と、セールスフォース・ドットコム ディベロッパープログラムマネージャーの岡本充洋氏が、国内初となるSalesforce1のデモンストレーションを行った。

セールスフォース・ドットコム プロダクトマーケティング シニアマネージャーの田崎純一郎氏

田崎シニアマネージャーは、「かつては70%のCIOが、タブレットは業務には使えないと言っていたが、2011年には、半分以上のCIOがタブレットは業務に使えると回答するようになった。それが、いまでは、PCの販売台数を超えている。では、次の3年はどうなるか、いまはモバイル化されているビジネス向けアプリは20%に留まっているが、2017年には90%のビジネス向けアプリがモバイル対応になると予測されている。Salesforce 1は、モバイルプラットフォームでもあり、クラウドプラットフォームでもある。そして、フィードファースト、APIファースト、モバイルファーストがキーワードとなる」などとした。

3年前はタブレットのビジネス利用には懐疑的な声もあった

PCの出荷台数をモバイルコンピューティングが上回っている

今後3年間で90%のビジネスアプリがモバイル対応になる

現時点では半分の企業でアプリがモバイル化されていない

さらに、「CRMアプリケーション、カスタムアプリケーション、ISVアプリケーションの3つのアプリケーションと、開発者、ISV、ユーザー、システム管理者、顧客という5つの立場の方々にメリットがある。また、PCのほか、スマートフォンやタブレット、そして、2020年には500億台がつながるとされるあらゆるデバイスという3種類のデバイスに対応することになる」と、Salesforce 1の特徴を示した。

また、「Salesforce 1が得意とするのはカスマイズである」とし、「カスタムアクションは、LINEを参考にしたものである。アプリケーションのカスタマイズや、展開をかつてないスピードで行える。モバイル向けアプリは、移動中や待ち時間などの30秒や1分間という短い時間で操作ができるようにすることが大切である。LINEは、スタンプで感情を伝えて、コミュニケーションができるようになっており、ビジネスシーンでも、簡単にタップするだけで操作できるようにするといったことが、カスタムアクションを通じて行える。業務報告をボタンひとつでできる。LINEに慣れた人では、リアルタイムで報告ができるようになるだろう」などとした。

Salesforce 1の概要

フィードファースト、APIファースト、モバイルファーストがキーワード

デモストレーションでは、LINEで提供されているようなユニークなデザインによる「受注!」、「失注...」といったボタンを用意し、これをタップするだけですぐに報告が行えるといった様子をみせた。

3種類のアプリ、5つの人たち、3種類のデバイスに対応する

モバイルデバイスからアイコンをタップしてSalesforce 1にアクセス

一方、ISVアプリのデモストレーションでは、オークニーの「地図アプリケーション」、チームスピリットの「勤怠管理・就業管理・経費精算アプリケーション」を紹介。地図上に見込み客を表示し、地図からSalesforce 1上の顧客管理データを読み出したり、勤怠管理では、モバイル端末からタイムレコーダーの打刻を行い、クラウド上で管理するといった様子をデモストレーションした。

カスタムアクションによって業務報告をボタンひとつで行える

LINEのスタンプのようなユニークなボタンで業務報告する例

さらに、システム管理者向けのSalesforce Aと、認証機能を提供するSalesforce♯についても説明。Salesforce Aでは、社員が紛失したモバイル端末へのアクセスを凍結するといった操作が、管理者が持つモバイル端末から行えるといったデモストレーションを行った。

「システム管理者向けのSalesforce Aでは、様々なアイデアを募集している。これまでにもSalesforceはお客様の声を反映して進化を遂げてきた。Salesforce Aについても、お客様が持っているアイデアを、IdeaExchangeに投稿してもらうことで、新たな機能を追加していきたい」(セールスフォース・ドットコム ディベロッパープログラムマネージャーの岡本充洋氏)とした。

チームスピリットの「勤怠管理アプリケーション」でタイムカードを打刻する

オークニーの「地図アプリケーション」と顧客情報を連動して表示

そのほか、Salesforce1 Essentialsでは、日本でも来年の提供を予定しているマーケティング支援アプリケーション「ExactTarget Marketing Cloud」によるデジタル、モバイル、ソーシャル時代のOne to Oneマーケティングの提案のほか、各種アプリケーションの紹介、プラットフォームの新機能の説明、アップデート情報の提供などを行った。また、製造業や保険業界、製薬業界などでの導入事例などを紹介するインダストリー・セッションも開催した。

チームスピリットの「勤怠管理アプリケーション」でタイムカードを打刻する

オークニーの「地図アプリケーション」と顧客情報を連動して表示