置くだけで充電できる非接触充電規格として「Qi(チー)」がある。NTTドコモが「おくだけ充電」としていくつかの端末で対応してきたが、2014年冬春モデルでは対応機種がなくなってしまった。いくつか理由はあるだろうが、Qiは出力が小さく、充電に時間がかかる点はあげられるだろう。最近のスマートフォンは電池容量が大きくなり、3,000mAhを越える端末も一般的になった。しかも電力消費が大きいため、頻繁に充電が必要となる。

そのため、急速充電が必要になり、Qiではその要求を満たせない、というのは1つの理由だろう。また、国内メーカーの端末であれば、クレードルを同梱して設置すれば充電できるようになっており、使い勝手はそれほど変わらない。こちらはAC電源経由で急速充電が利用できるのもメリットだ。しかし、Qiにはスマートフォンの機種、メーカーを問わずに置くだけで充電できる、というメリットがある。最近のクレードルだと、同じメーカーでも違う機種だと充電できない場合があり(最新Xperiaのように、互換性のあるメーカーもある)、そういった点では標準規格であるQiにメリットがある。

GoogleのAndroid端末である「Nexus 5」と「Nexus 7」やWindows Phoneの「Lumia」シリーズのように、グローバルモデルでいくつかQi対応端末が存在している。今後の拡大に関してはやや未知数なところもあるが、対応端末を持っていれば、非常に便利に使えるのがQiだ。今回は、タブレットのNexus 7(2013)を使って、Qiの充電能力を確認してみた。

Nexus 7(2013)を使ってQi充電をテスト

テストで試用したのは、サンワサプライの「ワイヤレス充電スタンド WLC-STN11BK」。本体はスタンドとしても活用できるボディデザインにQiを内蔵しており、対応スマートフォンやタブレットを置くだけで充電され、さらにそのまま使いやすい角度で端末を利用できる。

ワイヤレス充電スタンド WLC-STN11BK」。傾斜の付いたスタンドで、スマートフォンやタブレットを置いたまま活用できる

本体はしっかりと自立し、10インチクラスのタブレットを設置しても安定する。角度はやや深めで、一般的なクレードルよりは端末は倒れた状態で設置される。下部には2本の足が出ており、ここで端末を支える形。端末を荒くタッチしても倒れることはなく、安定度は高い。

ワイヤレスキーボードを繋いでテキスト入力したり、YouTubeの動画を視聴したりといった用途にも適した角度

スマートフォンの場合は、縦向き、横向きのどちらに置いても快適に利用できる。7インチクラスのタブレットだと、縦向きに置いて画面上部をタッチすると向こう側に倒れてしまう。10インチクラスは縦向きに設置すると安定度は悪い。7インチも10インチも、横向きなら安定するので、基本的にタブレットは横向きで設置するといいだろう。

Nexus 7(2013)は、「nexus」ロゴの辺りにQiが搭載されている。だいたい真ん中に合わせるようにしておけば充電される

Qiは、電磁誘導によって電力を発生させるが、磁界を発生させるために充電台にはコイルが必要となる。そのコイルの構造にはいくつか種類があり、WLC-STN11BKでは、コイルアレイ方式を採用している。

非接触充電を生かして、ケースに入れたままでも充電でき、電池ピクトが充電中表示になる。公式サイトでは「安定して充電するために、カバーを閉じた状態で」とあるが、試した限りはカバーを開いて折り返した状態でも充電はできた

コイルアレイ方式は、基本的に充電台にコイルが敷き詰められている形で、端末が置かれた位置に近いコイルだけが動作する、という仕組み。基本的には端末の「Qi」マークと、充電台の「Qi」マークを合わせておく必要があるが、多少の位置ズレはカバーできる。スマートフォンだとあまり問題にはならないが、タブレットだと、この辺りは重要なポイントとなる。

下部には充電ランプを搭載。充電中は緑色に点灯。Nexus 7(2013)の場合、100%充電になっても消灯しないようだ

Qi対応タブレット「Nexus 7 LTE(2013)」で実際に試してみると、だいたい中心に合わせて置けば充電が開始され、あまりキッチリと位置合わせをしなくても充電できた。

充電時間は、2時間ほどのテストでは、ACアダプタ経由の充電では44%の充電が完了したが、Qiの場合は35%。通常のACアダプタで、急速充電対応であれば、さらに高速での充電が可能になるため、Qiの充電効率は確かにそれほど高くはない。とはいえ、電池切れの状態から充電台において、一晩明ければ満充電されるレベルだし、普段の利用ではそれほど問題になるようには感じない。Nexus 7のバッテリ容量が3,950mAhでの充電速度なので、普通のスマートフォンであれば特に支障はなさそう。もちろん、急速充電のように短時間で一定容量を充電する、という用途には向かない。一定速度でなだらかに充電されるので、基本的には一定時間充電する時間がある場合に有効だろう。

とはいえ、Nexus 7のようにmicroUSB経由で充電する端末は、いちいちケーブルを挿入しないと充電できないので、置くだけで充電できるQiのメリットは大きい。Nexusシリーズだと、Nexus 7とNexus 5がQiに対応している。今後、出力を向上させた規格も登場予定で、さらに使い勝手が良くなりそうだ。

(記事提供:AndroWire編集部)