日本マイクロソフトは「Xbox Music」の国内展開を表明し、米Microsoftは「Xbox Video」のコンテンツをWebブラウザー上で管理・視聴できる「Xbox Video」を発表した。コンテンツ配信サービスに力を入れる同社だが、Xbox Musicが日本に上陸してもサブスクリプション型の音楽ストリーミングサービスは未提供となる。今週はこの件に関するレポートをお送りする。

先日寄稿した記事でも述べたように、ローンチ時期や詳細な内容は未定ながらも、Xbox Musicの国内展開が予定されている。米国でのサービス開始が2012年10月であったことを踏まえると、約1年遅れとなるが、比較的早期の対応と言えるだろう。まずはXbox Musicが備える機能を簡単に解説する(図01)。

図01 日本でもサービスが始まる予定の「Xbox Music」(画像は開発段階のもの)

Xbox Musicはその名のとおり、同社のコンシューマー向けゲーム機「Xbox 360」のオンラインサービスである「Xbox Live」の一つ。しかし、同社は本サービスをXbox 360に限らず、Windows 8やWindows Phone、Webサイトなどマルチプラットフォームで展開している。

サービス内容は、広告付きながらも無料視聴可能な「Free Streaming」。有償の「Xbox Music Pass」、そしてMP3形式ファイルをオンライン販売する「Xbox Music Store」の3つが軸となる。Xbox Music Passは1カ月間の試用期間が用意されているが、それ以降は9.99ドル/月の支払いが必要となる。

その他にクラウドサービスなども備えているが、日本で予定しているサービスは、曲をオンライン販売するXbox Music Storeのみ。そのため、Xbox Music Passのような、サブスクリプションサービス用のiOS/Androidアプリケーションのリリースタイミングも不明である。現在、Xbox Musicは欧米や南米など世界22カ所でサービスを提供しているが、南米数カ国ではFree Streamingは未提供だ。

各社がローンチできない国内のストリーミング配信

興味深いのは先行している他社のサービスだろう。例えば、楽曲データのオンライン販売であればAppleの「iTunes Store」、旧Google Musicなどのサービスを統合したGoogle Playの「Google Play Music」、オンラインショッピングサイトの雄である「Amazon MP3」などが先行組に数えられる。

iTunes Storeのダウンロード販売は国内でも認知度が高いので割愛するが、ストリーミング系サービスは「iTunes Radio」が米国で開始済み。無料視聴の場合はオーディオ広告が含まれるが、24.99ドル/年の音楽クラウドサービス「iTunes Match」の利用者は広告無しで使用できる(図02、図03)。

図02 iOS搭載デバイスユーザーには、おなじみの「iTunes」。ここから楽曲の購入が可能

図03 米国でサービス中の「iTunes Radio」

Google Play Musicは海外では2011年11月からサービスを開始。同名のアプリを用意しているが、楽曲の販売については日本は対象外。2013年5月にはストリーミング再生を行う「Music All Access」をスタートしているが、こちらも海外でのみ提供中だ(図04、図05)。

図04 日本国内からGoogle Playにアクセスしても、購入ジャンルに「ミュージック」は現れない

図05 「Google Play Music」もマルチプラットフォームだが、日本は対象外となる

そして、Amazonは「Amazon MP3」という名称でMP3形式ファイルのダウンロード販売を以前から行っている。また、同社のクラウドサービスである「Amazon Cloud Drive」に購入楽曲を保存し、それをWebや各デバイスの専用アプリケーション上でストリーミング再生する「Amazon Cloud Player」を提供中だ。購入楽曲以外も楽しめる他のストリーミング系サービスとは若干異なるが、今回は参考として同列に扱うことにした(図06、図07)。

図06 Amazonの楽曲ダウンロードサービス「Amazon MP3」の紹介ページ

図07 Windows版「Amazon Cloud Player」を起動した状態。購入した楽曲を再生できる

図08は列挙した各社のサービスを表にまとめたものだが、このように日本国内では楽曲のダウンロード販売にとどまり、ストリーミング配信はサービスインしていない。海外では、音楽のストリーミング配信による利益が高まりつつあるが、国によって音楽コンテンツの提供形態や利用スタイルが異なるため、一律に同じ料金体系を当てはめても成功しない(図08)。

図08 2013年11月時点における、各社の音楽コンテンツ提供サービス

また、世界的に音楽CDの売り上げが減少している一方で、日本レコード協会によると、2012年中の国内における音楽ソフト(CDやDVD、ブルーレイなどパッケージ)の売り上げは3,108億円。前年度比110%と成長している。日本にはこのような背景があるため、各社も手を出しにくいのだろう。

しかし、KDDIは「KKBOX」というサービスを980円/月で、ソニーも同額で「Music Unlimited」を提供している。このように音楽のストリーミング配信は日本でも可能だ。筆者が愚見を述べなくとも、Xbox Musicをはじめとする各社のサービスが、音楽ストリーミング配信を開始するのは遠い将来ではない。

当初は音楽ファイルのダウンロードといえば違法行為とのイメージがあったが、各社が参画することでオフィシャルなものとなり、DRM(デジタル著作権管理)でがんじがらめに保護されていた音楽ファイルもDRMフリーが一般的になりつつある。音楽を気軽に心から楽しめるようになる、早期のストリーミング配信サービス提供を期待したい。

阿久津良和(Cactus)