攻殻機動隊ARISEの「EPISODE:[.jp]」とは?

近未来の世界を描いたアニメシリーズ「攻殻機動隊」。科学技術が非常に高度化した世界で主人公たちは物理的な戦いだけでなく、電脳世界での戦いにも挑む。大人気シリーズの最新作は、2013年11月から上映される「攻殻機動隊ARISE -GHOST IN THE SHELL-」だ。

この最新作をPRするWebサイトのドメインが11月15日に、これまでの「kokaku-a.com」から「kokaku-a.jp」へと変わった。末尾の「jp」は日本のドメインであることを示している。この「.jp」を管理しているのが日本レジストリサービス。通称JPRSだ。

Webサイト上では「EPISODE:[.jp]」という動画が公開されている。動画の中で、主人公である草薙素子が戦いながら電脳ネットワークの深部にたどり着くというシーンが登場する。これまで作品中で描かれてこなかった電脳ネットワークの深部にあるのは、作中では"遠い過去"にあたる2013年当時のデータだ。インターネットを主流としたネットワーク利用の仕組みについて、過去のテクノロジーとして現実世界における"現在"のことが語られる。

印象的なのは電脳ネットワークの深部と呼ばれるものの奥に「JPRS」のロゴが透けて見えること。そして、輸送支援車両であるロジコマが語る「今も昔もJPRSがネットを支えているんだね」という台詞だ。攻殻機動隊の世界でも、JPRSによる日本のネットワーク管理が行われていることがうかがえる内容だ。

「ロジコマ」と楽しくドメイン学習

JPRS 広報宣伝室 グループリーダー
園木 彰氏

「未来の世界まで、安全な管理をしてネットワークを支えつづけたいですね」と語るのは、JPRSの広報宣伝室 グループリーダーである園木 彰氏。「EPISODE:[.jp]」は今のインターネット基盤を支えるJPRSと、未来のネットワークで活躍する攻殻機動隊のコラボレーションムービーなのだ。

「ハードな世界観を持つ攻殻機動隊は、JPRSの活動を紹介するのに向いていると考えてコラボレーションしました。動画の中で当社の役割を解説してもらった上で、サイトでの特別コンテンツとしてドメインに関する問題に解答する『ロジコマAI学習』にチャレンジし、理解を深めてもらえるとうれしいですね」と園木氏。攻殻機動隊のキャラクターが多数登場するクイズは楽しく取り組める上に、学習度が規定に達するとオリジナルコラボ壁紙がもらえるコンテンツ。攻殻機動隊の魅力を感じながら学習できるのがポイントだ。

PCやスマートフォンで普段はほとんど意識せずに利用しているドメインについて学習しつつ、公安9課ばりとはいわないまでも、安全で確実なネットワークを維持するために日夜努力しているJPRSという組織について少し意識するきっかけになるコンテンツとなっている。

JPドメインの管理やDNS運用を手がけるJPRS

現在のJPRSが具体的にどのような仕事をしているのかも紹介しておこう。主な活動内容はJPドメインの管理、DNSの運用、インターネットルールやポリシーを定める団体の会合への参加、といった3つだ。

JPドメインは現在130万件以上登録されているが、これを管理しているのがJPRSだ。JPRSの業務として最も知られているのがこの部分だろう。JPドメインのような国別コードトップレベルドメイン(ccTLD)は、それぞれに管理している団体があり、日本ではJPRSが一手に担っている。

DNS(ドメイン・ネーム・システム)とは、URLを入力した時にそのアドレスが示すサイトへ接続するための変換作業を行っている。本来、コンピュータのアドレスは「210.154.149.53」のような数字の羅列だ。これを「mynavi.jp」のように人間が理解しやすい文字列に変換したものがドメインであり、双方の結び付けと変換を行っているのがDNSということになる。

「JPRSは創業以来13年間、無事故無停止であることを誇りに思っています。安全のために世界26拠点にサーバーを分散配置し、また、DNSの階層構造における最上位の情報を管理するルートサーバーのうちの1つも、WIDEプロジェクトという組織と共同で運用しています」と園木氏は語る。長期的に安定したDNS運用を行っているJPRSは、実はけっこうすごい存在なのだ。

マカフィーの調査で2年連続「最も安全な国別ドメイン」と評価

DNSの安定ぶりだけでなく、JPドメインそのものの安全性も高く評価されている。マカフィーが2009年、2010年と実施した国別ドメインの安全性評価がある。ここで「.jp」は世界で最も安全な国別ドメインであると評価された。ウィルスなどを配布しているサイトや、スパムに関わるサイトが最も少ないという意味であり、これはJPRSによる審査を含めた厳格な運用ルールの適用によるものだろう。

「『.jp』は日本に住所のある人しか登録できず、中でも『co.jp』は日本で法人登記している企業しか登録できません。ドメインごとにルールは違うのですが、世界中の誰でも登録できるものがある中で、『.jp』では明確なルールを設けています。こうしたルールに加えて、日本のインターネット利用者のみなさんがきちんと使ってくださる方ばかりだということもよい結果につながったのだと思います」と園木氏。

常日頃からフィッシングサイトを見つけるとセキュリティ関連組織などと連携して対応し、ネットワークの安全と安定を守っているのだ。

未来へ続くインフラとしてのインターネットを管理

JPRSは株式会社だ。しかしその役割は、インターネットという今や生活に欠かせないインフラとなったものを支えるものであり、公益的な性格も持っている。

エンジニア向けにDNS管理情報を提供したり、「BIND」などDNSソフトウェアの開発に携わったりと多彩な活動でインターネット社会に貢献する姿は、縁の下の力持ちという言葉がぴったり当てはまる感じだ。一般のユーザーからは見えづらいところで活動しながら重要なインフラを支えている姿は、犯罪を事前に察知し、被害を食い止めるために活躍する公安9課と少し似ている部分があるようにも思える。

JPRSが現在守り支えるインターネット。この延長に、もしかしたら攻殻機動隊の世界があるのかもしれない。「攻殻機動隊ARISE border:2 GhostWhispers」は11月30日に劇場上映開始となる。近未来の電脳戦を見た後には、今のインターネットを守る人々のことも少し思い出してみてはいかがだろうか。