2013年12月1日(日)に相模原市立博物館で「宇宙にいのちを探す」という公開講演会が開かれます。主催者は日本アストロバイオロジーネットワーク。聞き慣れない言葉ですね。アストロバイオロジーを日本語にすると「宇宙生物学」となります。

「いのちの種」を突き止めよ!宇宙生物学の今

「宇宙生物学(アストロバイオロジー)」とはどんな分野なのでしょうか。

大きな要素は3つあります。

1つ目は、「マイルドな環境を備えた惑星」の発見です。

私たちが暮らす地球は長い間、水が液体として存在している点、大気を持ち合わせている点などから、宇宙の中でも極めて異質で特別な存在とされてきました。しかし近年、多くの太陽系外惑星が発見され、その一部は「ハビタブルゾーン」と呼ばれる、水が液体で存在する領域で確認されています。

2つ目が、「極限環境下での生命」の研究です。

以前は、地球上の生命を支える基盤は「空気、水、光」からエネルギーを得る、光合成により行われていると考えられていました。しかし、深海底の熱水噴出口における熱やメタンからエネルギーを得る生物がみつかり、太陽光に依存しない生態系が地球上に存在することが明らかになりました。さらに、強アルカリ性や超高温など、従来の常識ではとても生物はすめないと思われているような環境にも、生物がいることがわかっています。

提供:広島大学大学院 生物圏科学研究科の長沼毅 准教授

そして、3つ目が生物学での大きなテーマの1つである「生命の起源」。私たち生命は、どこでどうやって誕生したのでしょうか?

この一見するとバラバラの3つのテーマが合わさったのが「宇宙生物学(アストロバイオロジー)」という分野です。

「宇宙にもマイルドな環境を備えた惑星がある」+「地球上のこんな過酷な環境にも生命がいる」→ならば、宇宙にも生物がいるのではないか、もしかすると、それが地球の生命の起源かもしれない…。いささか乱暴ですが、宇宙生物学を説明すると、こういうイメージです。

12月1日(日)の公開講演会では、宇宙生物学の最新のお話を伺えます。

講演には、数々のメディアでひっぱりだこ、「科学界のインディ・ジョーンズ」との呼び声もある長沢毅さんや、あの大人気キャラクター「クマムシさん」の生みの親である堀川大樹さんをはじめとする宇宙生物学を代表する研究者たちがスピーカーとして登場します。

ETの声を聞け! SETI(知的生命体探査)の可能性

映画に出てくるような宇宙人を探す研究もあります。

「宇宙人が発した電波信号をキャッチする」─そんな事を目指した一大プロジェクトがあります。SETI(知的生命体探査)です。

The Allen Telescope Array (ATA) - (Credit:SETI)

巨大なパラボラアンテナである電波望遠鏡を使い、宇宙から届くさまざまな信号の中から、周波数帯を解析することで、人工的な信号を見つけ出そうというプロジェクトです。

もし、地球外生命体の存在が明らかとなったら、私たちはどのようにその事実を受け止めるのでしょうか。社会に与えるインパクトは大きいものとなるかもしれません。

「生き物ってどうやって生まれたの?」

「私たちと同じような知的生命体は宇宙にいるの?」

そんな誰もが一度は考えるこの疑問の答えが解き明かされる時、私たちの生命観は大きく影響されることになるかもしれません。私たち生命のルーツとエイリアン存在の可能性について思いをはせてみませんか。

著者プロフィール

藤井満美子
日本科学未来館・科学コミュニケーター
専門は分子生命科学。大学院修了後、「様々な社会とパイプのある仕事がしたい」いう思いからシステムエンジニア(SE)として就職。
2012年10月より未来館へ。 科学を「伝える」だけでなく、「感動を共有」できるようになることを目標に奮闘中。