バイエル薬品の「レビトラ」の真正品(左)と偽造品

バイエル薬品やファイザーなど製薬会社4社は11月14日、合同で「ネット上に流通する偽造医薬品のリスク」と題するセミナーを開催した。一般用医薬品(OTC医薬品)がインターネットで簡単に購入できるようになった時代の落とし穴とは何か。詳細をレポートする。

回答者の6割がネット上の偽造医薬品の存在を知らず

今回の4社合同セミナーでは、ネットで医薬品を購入することの意識調査や薬の真正品・偽造品の判定方法などに関する講演が行われた。

昭和大学藤が丘病院の副院長で泌尿器科に務める佐々木春明先生は「ネット上に流通する偽造医薬品のリスクをどう伝えるか?/ネットで薬を入手することに対する意識調査」との題で講演。佐々木先生は、全国の20代以上の男女3,000人を対象に、医薬品に対する生活者のネットリテラシーなどをまとめたアンケート調査を紹介。その結果を踏まえながら、偽造薬品について説明を行った。

副作用には「吐き気」「めまい」などの重い症状が

ネット上の偽造薬の認知度に関しては、約6割が「ネット上に偽造薬が出回っていることを認知していない」と回答したことを紹介。その上で、回答者の約9割がネット上で医薬品を購入した経験がないと回答したことから、今後一層OTC医薬品のネット購入が世間に浸透することによって、様々なトラブルが発生する可能性を指摘した。

その一例として、薬の副作用症状を挙げた。「患者さんに情報を与えないと、患者さんによって(様々な症状を)副作用として認識する、しない(の判断基準)がとても違う」。副作用には「頭痛」「ほてり」「鼻づまり」「動悸(どうき)」「胸焼け」「下痢」「めまい」「吐き気」などがあり、偽造品は真正品よりも副作用が出やすいという。日常生活でもよく起こる頭痛や鼻づまりやなどが、体調不良からくるものなのか、副作用なのかは専門家ではないと判断がしづらい。そのため、医師との相談の重要性を指摘した。

講演する佐々木先生

ED治療薬のネット購入者の8割は「自分で本物かどうか判断不可能」

佐々木先生は、ED治療薬の購入ルートなどに関するアンケート調査も併せて紹介した。回答したのは、直近1年間でED治療薬を病院・クリニックまたはネットで購入し、ED治療薬の使用経験がある30代以上の男性(ネット購入者276人、医療機関受診者288人)。

調査結果では、ED治療薬の偽造品がネットに出回っていることを9割以上が認識しており、ネット購入者の77%がED治療薬の真正品と偽造品を自分で区別することはできないと回答したことが明らかになったという。偽造品がネット上で横行しているにも関わらず、ネットでED治療薬を購入する人が多いことについて、佐々木先生は「病院へ行くのが恥ずかしいのではないか。医療機関の受付や薬局などで、何度も若い女性の目にさらされるだろうし」と推測した。

また、ネットでED治療薬を購入した人の約8割が、購入したものを真正品であると信じている傾向があることやネット購入者の4人に1人が副作用を経験したことがあることなども紹介。「他の人が購入したものは偽物だけれど、自分が購入した物は大丈夫だと考えている人が多いのではないか」と、ネット購入者の考え方に警鐘を鳴らした上で「本来ならば、医療機関でのED治療薬の処方が増えてこないといけない」とした。

出回る偽造品の見分け方とは

後半は日本新薬、ファイザー、バイエル薬品によるED治療薬の真贋(しんがん)を判定するためのデモンストレーションが解説を交えて行われた。また、会場内には各社が販売するED治療薬の真正品と偽造品がそれぞれ並べられ、見比べることができた。横に真正品が比較対象としてないと、真正品と勘違いしてしまいそうな偽造品も中には見られた。

偽造品に対する正しい知識がないと、区別するのは難しい

簡単に真贋(しんがん)を判断する目安として挙げられるのは、有効成分含有量の刻印や表示だという。バイエル薬品の信頼性保証本部の中東吉則偽薬対策担当部長は、同社のED治療薬「レビトラ」を例に挙げながら「(有効成分)100mgの物は製造しておりません」と解説。ファイザーの「バイアグラ」なども、100mgは海外からの個人輸入品であり、日本国内で見たら「不正規の品」という認識をもっていいという。

解説するバイエル薬品の中東部長

有効成分の含有量は、偽造品を見破る目安

劇薬などを含む一部の医薬品を除き、ほぼすべてのOTC医薬品をインターネットで購入できるようになった現在。非常に便利になった反面、医師や薬剤師などの専門家の助言を得ずに購入することには当然、リスクも伴う。その好例が今回の偽造薬品だ。副作用によっては、生命を脅かされるケースもある。ネット販売のメリットを最大限に生かすためにも、購入前に専門家の意見をきちんと聞いておくことが必要だろう。