北米では11月15日(現地時間)にPlayStation 4が発売されたが、本稿が掲載される週の後半となる22日(同)には、Xbox Oneも発売される予定である。Xbox Oneは日本での発売時期は未定のため、あまり盛り上がりを見せていないが、カスタム版Windows OSをハイパーバイザー形式で実装するなど興味深い箇所は少なくない。

Xbox Oneはあくまでもコンシューマーゲーム機であるため、リリース時のイニシャライズタイトルが重要だが、現時点で公開されているタイトルを見る限り、キラーコンテンツとなり得るゲームは「Halo」の最新作ぐらいだろうか。個人的にはゲームデバイスというよりも、多機能型セットトップボックスとして、またはWindows OSとの連動デバイスとして興味を引かれている。

しかし、The Vergeの記事によると、元Nokia CEOであるStephen Elop(スティーブン・エロップ)氏がCEOになると、Xbox事業などを廃止する可能性があるそうだ。何とも不安を覚える報道だが、Microsoftは今年7月の大規模な組織改編に続いて、Bing責任者やInternet Explorer責任者が交代するなど、動きが活発なだけに噂レベルと流すことはできない。

Microsoftはどこへ向かっていくのだろうか。今週はそんな同社の方針を垣間見られる開発環境のクラウド化とセキュリティ対策の強化の一端を取り上げる。

オンライン上でソースコードを編集する「Monaco」発表

日本マイクロソフトは先頃、今後のクラウドOSを構築するための基盤として、Windows Server 2012 R2やSystem Center 2012 R2、SQL Server 2014 などのサーバー製品をアップデートしたことをアナウンスする発表会を行っている。そもそもクラウドOSというキーワードがMicrosoftで使われ始めたのは2013年の初めからだ。

詳細は当時の記事をご覧いただくとして、すでにMicrosoftはWindows Azureという、クラウドプラットフォームを実現している。加えて同社のOfficeスイートも以前からWeb Appsを提供し、ユーザーはWebブラウザー1つあれば、さまざまな作業を実行できるようになった。シンクライアントマシンの普及に至らないため、クライアントOSは現状を維持していが、これすらもタブレット型デバイスの加速的普及により、役割が希薄化しつつあるのは否めない事実だ。

そしてMicrosoftはさらなる手を打ち出した。それが「Monaco」である(図01)。

図01 Internet Explorer上で動作する「Monaco」。複数のコードを開いた編集も可能である

Microsoftが11月14日(現地時間)に開催したオンラインイベント「Visual Studio Virtual Launch」で発表されたMonacoは、Webブラウザー上で動作するIDE(統合開発環境)だ。Web上で視聴できるキーノートによると、デスクトップ版Visual Studioのサブセット版に位置するものの、ソースコードの編集やデバッグも可能だという。

Monacoの開発には、オブジェクト指向開発やJavaなどのIDEとして有名な「Eclipse」の設計に大きく携わったErich Gamma(エリックもしくはエーリヒ・ガンマ)氏が参加している。デモンストレーションはデスクトップアプリ版Internet Explorerで行われたが、Windowsストアアプリ版Internet Explorerでも動作するため、タブレットで気軽にソースコードを確認できる、と同氏は述べていた(図02)。

図02 Monaco開発の中心人物であるErich Gamma氏

なお、Microsoftはチーム開発用アプリケーションとして、以前からTeam Foundation Serviceをリリースしているが、この後継版にあたる「Visual Studio Online」も同イベントで同時発表されている。

同社のコーポレートバイスプレジデントであるS.Somasegar(ソマセガー)氏によると、チーム開発を行うためのコラボレーションを主軸とし、5人以下のチーム利用となるVisual Studio Online Basicは無償だが、それ以降のユーザー追加は20ドル/月(初回特別価格は10ドル)の料金が発生するという。また、Visual Studio Online上では、同社のVisual Studioや前述したMonaco以外にもEclipseやXcodeなどが利用できるため、より幅広い場面で開発環境を向上させることが可能になりそうだ(図03~04)。

図03 コーポレートバイスプレジデントのS. Somasegar氏

図04 Visual StudioやMonacoが利用可能な「Visual Studio Online」

ソフトウェア開発者には興味深い話だが、他方でエンドユーザーにはさして興味がないのは重々承知である。ただ、開発環境までもがクラウド化するという一点に絞れば、Microsoftの目指す方向性を垣間見ることができるはずだ。これまでのローカル環境が一歩ずつオンラインに移行しつつあるなか、企業だけでなく個人も意識変化を求められる時代に入ったのだろう。