株式会社ワンパク 代表取締役/クリエイティブディレクター 阿部淳也氏
1974年、宮城県生まれ。自動車メーカーでのユーザインターフェイスエンジニアを経て、IT 部門でデザイナー、テクニカルディレクターを経験。2004年より都内の広告代理店系プロダクションにて多くのWebサイト立ち上げや映像制作に携わった後、2008年に「ワンパク」を設立。

Web業界だけでなく、多方面で活躍していたメンバーによって、2008年に設立された「ワンパク」。当初から、Webに特化したプロダクションではなく、デジタルコミュニケーションをサポートする“クリエイティブエージェンシー”というポジショニングを意識してきた彼らに、いま多くの企業から注目が集まっている。企業のデジタルを中心としたコミュニケーション戦略の企画立案から構築、あるいはオウンドメディア(自社メディア)の立ち上げなどを数多く手がけているワンパク代表の阿部淳也さんに、企業ブランドを育てるためには何が必要か、話を聞いた。

いまワンパクが選ばれる理由

「単に“Webサイトの制作”だけを請け負うという仕事自体、いずれはごく一部のものでしかなくなると当時から思っていました。いまや誰もがPCやスマートフォンを当たり前に使うようになり、インターネットはガスや水道などのインフラに近いものになりましたよね。そのなかで、デジタル領域におけるマーケティングなくしては、生活者、消費者とコミュニケーションが取りにくくなってきているというのが大きな流れだと思います」

時間をかけて企業と併走しながら、ユーザーに価値あるコンテンツや体験を提供していくアプローチは、かつてのマス広告やキャンペーンサイトなどにおける“広告の概念”とは大きく異なるものだ。

「これまでは企業が一方的に宣伝すればモノが売れた時代でしたが、最近の若い人たちにはそういうアプローチではなかなか響かない。もはや、目立つもの、面白いものを作ればみんなが見てくれた時代でもないんですよね。より深いコミュニケーションを通して、本質的な価値をしっかり伝えていく必要があるということに、企業も気づきはじめているのだと思います」

ワンパクがクライアントに対してできることは、あくまでも“手助け”なのだと阿部さんは言う。新プロジェクトの立ち上げにあたり、企業担当者と毎週のようにワークショップを重ねながら、コミュニケーションのあり方やアウトプットの方向性をともに模索することなども少なくないそうだ。

「ブランドのことを最も理解しているのは企業側。だから、僕らが一方的な提案をするのではなく、アイデアを出し合いながら、中立的、もしくはユーザー寄りの立場でファシリテーター(進行役)を務めます。オウンドメディアやサービスには、自分たちで育てていくという観点が必要なのですが、人から提案されてもなかなか愛着は湧きにくい。一方で、自分たちが考えて作ったものには愛情も生まれるし、その次の展開も一緒に考えていけるようになるんです」

SUBARUオフィシャルスマートフォンサイト
縦方向に車のビジュアルが並ぶUIが特徴的。情報は最小限に抑え、どこまで進んでもトップページの世界観で完結する“車を見せる”ためのWebサイト。

サントリー「レシピッタ」
お酒に合うかんたんレシピの検索サイト。サントリーとして、どういう価値を提供するのかという全体設計を行った、スマートフォンファーストのプロジェクト。

企業ブランドの価値を高めるドメイン選び

そのようにしてクライアントとコミュニケーションを取りながらプロジェクトを進める阿部さんは、企業のマーケティング担当者のデジタルリテラシーが日増しに高まっているのを実感している。Webサイトを、会社の資産として長期的な視野で運用しようという意識も浸透してきている。その資産の価値を左右する大きな要素のひとつが「ドメイン」だ。

「たとえば、将来的にそのサイトをリニューアルした時のことなども考えてドメインを管理する必要がありますし、SEOにも関わってくる重要な部分ですよね。そういう意味で、以前に比べるとドメインの選定も慎重になってきていると思います。新しいプロジェクトを立ち上げる際にドメインが必要になった時には、JPドメインを提案することが多いです。使いやすいドメインだと思うし、もちろん日本の企業だからJPドメインを、ということもあります。日本で管理されている信頼感や安心感というのは絶対的にありますよね」

そして、ワンパクのWebサイトにもしっかりとこのJPドメインが使われている。実は「1pac.jp」というシンプルなドメインに、ワンパクという企業の思想がよく表されている。

「ワンパクという言葉には、元気で勢いがあって、よく食べ、よく遊び、よく寝て、仕事もバリバリやるという意味はもちろんですが、ヒト、コト、モノ、スキルを組み合わせ、ワンパッケージ(“1PAC”)にして社会に価値を提供するという意味合いもあるんです。このすごく短いドメインも気に入っていますよ(笑)。スマホで入力する時のことなどを考えると、1文字でも短いというのは利点ですよね」

(引用元:Web Designing)