最近、静電容量式タッチおよび近接ユーザインタフェースを照明アプリケーションに組み込む動きが見られます。これらのセンシング技術を使うと、インタフェースを簡素化でき、自由な形状のセンサが使え、ユーザインタフェースを密封できるといった利点が得られ、魅力的でLEDの保守に手間がかからないインタフェースを設計できます。しかし、照明とタッチセンシングでは使われる技術やテクニックが異なるため、特にコストが制限される建築照明において、設計目標に対立が生じます。本稿では、そのような対立を克服するための技術的アプローチを紹介します。

まず、静電容量式タッチセンシングの基本原理について簡単に説明します。基本的にコンデンサは、絶縁体によって隔てられた2つの導体によって構成されます。コンデンサの静電容量は、絶縁体の種類、導体の面積、導体間の距離によって決まります。式1に、関連因子と静電容量の関係を示します。Cはコンデンサの容量、Aは2つの導体が向かい合っている部分の面積、□0は自由空間の導電率、□Rは絶縁体の比誘電率、Dは導体間の距離を表します。

式1:静電容量の式

導体(極板)間の距離が静電容量に大きく影響しますが、導体間の電気力線も静電容量に影響します。図1は、2枚の極板で構成された代表的なコンデンサの電気力線の例を示しています。静電容量式タッチシステムでは、導体間の電気力線ではなく、導体から外へ放射された電気力線を使ってタッチを検出します。

図1:2枚の極板で構成されたコンデンサの電気力線の例

人間は、大量の水とさまざまな化合物で構成されています。水の分子はもともと有極性であるため、電場は水分子を非常に容易に分極できます。このため、人間の導電率は比較的高く(□R>60)、電場に対して非常に顕著に影響します。静電容量式タッチインタフェースはこの原理を利用しています(図2参照)。

図2:高□R体の影響を受けた電気力線の例

一般的に、人体の影響を受けるとセンサの静電容量は増加します。このため、静電容量式タッチまたは近接インタフェースは、導体センサパッドの静電容量の増加を十分な分解能で計測すれば良いのです。

Note:一般的に、回路の電気的グランドがセンサのもう1つの導体として働きます。AC電源で動作するシステムの場合、通常このグランドは接地されます。したがって、AC電源で動作するシステムでは、人体の近くに豊富にグランドが存在するため、高いタッチ検出感度が得られます。