店内には隙間なく食器が置かれており、見事と言えるほどの重ね具合いだ

旧空港があった九龍湾エリアは、まだ香港に摩天楼がなかった頃の、昔ながらの香港に出合える港エリア。元々空港の近くだったため工場や倉庫が多かったが、現在では多くの工場が中国本土に移り、香港メイドの工房も珍しくなっている。しかし、そんな場所にこそ“穴場”があるのだ。

日本人妻やCAが訪れる理由

この倉庫街のようでもある工業団地のビルの一角、20人くらい入りそうな大きな業務用のエレベーターに乗ってたどり着いた3階の一室に、現地駐在の日本人妻やCAがこぞって訪れるという食器工房「粤東磁廠」がある。

なぜ、そんなに人が集まるのか? その理由は、ペニンシュラやエルメスなど、蒼々たるブランドの食器がここで焼き絵付けされているからだ。聞けば、日本の超人気アパレルブランドなどからも受注があるという。そして、その不合格となった品が格安で買える、というのが現地日本人の間で口コミで広がったらしい。

狭い通路には絵付け職人のスペースもあり、丁寧に描く様が見られる

“穴場”という言葉が良く合う「粤東磁廠」の入り口

粤東磁廠は創業1928年の老舗で、名入りの家族皿など個人のオーダーメイドも受けている。大量生産のものは絵柄を決めてプリントするが、現在でもオリジナルの注文に対しては、絵付け職人が一枚一枚丁寧に手描きで“作品”とも言える皿を作り続けているのだ。

ブランドの皿も無造作に重なる

店内はかばんを持って歩くと危険なほど、所狭しと食器が並んでいる。並んでいるというより、重ねられ押し込められているといった方が正しい。かのブランドの皿などが無名の皿と横並びで置かれているので、気を抜けない。

そして重ねられた皿の下から、違う絵柄が次々と出てくる。器の種類も、箸置きからカップアンドソーサー、大小の皿、人形、中国伝統模様の大壷までより取りみどり。店内一周して見ているだけでも、あっという間に30分以上経ってしまう。

ペニンシュラ模様の皿(左)で60香港ドル(約768円)。発掘するのも楽しい

きれいなペインティングを愛でるのもいいが、その中にある高級品のB級品を見つけ出す探検気分がまた楽しい。日本への贈答品や、結婚式など記念品のためのオリジナル商品の発注なども受けているので、気に入ったら注文してみるのもオススメだ。

●Information
Yuet Tung China Works 粤東磁廠
Unit 1-3, 3/F., Kowloon Bay Industrial Centre, 15 Wang Hoi Road, Kowloon Bay, Kowloon, Hong Kong, 九龍
営業時間:9:00~17:00(日曜休)
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