J.J.エイブラムス監督が、名作SFに新たな息吹を吹き込んだ映画化第2弾『スター・トレック イントゥ・ダークネス』がこの夏公開されたことは記憶に新しい。本作のキャンペーンで来日したプロデューサーのブライアン・バークは同作のジャパンプレミアで、2014年に『スター・トレック』パート3の撮影に入ることを公言。そのため、これから『スター・ウォーズ エピソード7』の撮影に入るJ.J.エイブラムス監督はどう考えてでも次回作を監督することはできない。では、誰がメガホンを取るのは誰なのか? また、J.J.は今後、『スター・トレック』シリーズにどう関わっていくのか? プロデューサーに気になる今後について、質問を投げかけてみた。

J.J.エイブラムスはどんな人?

J.J.エイブラムス監督と数多くの作品でタッグを組んでいるプロデューサーのブライアン・バーク

バーク・プロデューサーは、J.J.の「バッド・ロボット・プロダクションズ」という制作スタジオに属し、これまで彼と二人三脚でキャリアを築いてきた。プロデュース作品は、「エイリアス」や「LOST」などの人気海外ドラマをはじめ、『クローバーフィールド/HAKAISHA』(2008年)以降、『SUPER8/スーパーエイト』(2011年)や『スター・トレック』シリーズなどのJ.J.監督作、この後も『スター・ウォーズ エピソード7』(2015年夏公開予定)や『ミッション:インポッシブル』のパート5を手掛ける予定だ。

そんなJ.J.を一番よく知る男、バーク・プロデューサーが考えるJ.J.作品の最大の魅力は「どんなタイプの作品でも、J.J.は常に人間ドラマを中心に作品を作り上げる。そこじゃないかな。とことんキャラクター重視の描き方が、彼独自のものだと思う。たとえば、『ミッション:インポッシブル』にしても、J.J.が撮った『M:i:III』(2006年)で初めて"イーサン・ハント(トム・クルーズ)に妻がいる"という設定が登場した。『SUPER8/スーパーエイト』でも子供たちと両親との家族愛が描かれたが、いわば『スター・トレック』は、それの最たるものだと思う。エンタープライズ号のクルーが、ある種ひとつの家族として団結し、それぞれの人間関係が丁寧に描かれる。そこにアクションやスリリングなアドベンチャーを加えるから、より豊かな作品になるんだ」。

確かに、今回は『スター・トレック』シリーズ初の3D作品で、アクションの迫力は言うまでもないが、余韻として残るのは、濃密な人間愛のドラマだ。肝となるのが脚本作りだが、『スター・トレック』1作目の時は、産みの苦しみが大きかったと振り返る。「5人のプロデューサーの中に、ロベルト・オーチーという筋金入りのトレッキーがいてね。他のふたりもある程度のファンだった。J.J.は今でこそファンになったが、当時はあまり見ていなかった。僕はその底辺にいて、全く『スター・トレック』について知らなかったんだ。だから、お互いにアイディアを出し合うと、ロベルトたちが勝手にべらべらとマニアックな話をし始めてしまい、全然ついていけなくて(苦笑)。また、逆に、僕が『こういうアイディアはどう?』と聞くと、『それは、『スター・トレック』の世界じゃありえない』と却下される。でも、僕も負けじと食いついていく。今思えば、とても有意義なプロセスだったと思う」。

『スター・トレック イントゥ・ダークネス』より
(c) 2013 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

なるほど、だからこそ、前作も本作も、トレッキーじゃない人が見ても、心躍るエンターテインメント作品となりえたわけだ。特に、『スター・トレック イントゥ・ダークネス』については「全く『スター・トレック』を見たことがない人でも楽しめる作品にしたい」と思ったそうだ。「今回も、みんなで意見を交えながら脚本を作ったよ。だから、前作が大ヒットした(世界興収で3億8500万ドル)にも関わらず、タイトルには敢えて“2”を入れなかったんだ」。

『スター・トレック』のパート3の監督は誰がやる?

ここで、気になる『スター・トレック』のパート3の監督について斬り込んでみると、「いま、まさに検討だから言えない」と、想定していた答えが返ってきた。「J.J.は、『スター・ウォーズ エピソード7』の撮影が始まるから監督は無理。次は製作に回る予定だ。ただし監督が誰になろうと、1作目と2作目で確立した作品のトーンはそのまま活かしていく。そこに新しい味付けが加わるだろうから、そこは楽しみでもあるんだ。だからこそ、次の監督はとても厳選している」。

続けて「本音を言えば、パート3もJ.J.にやってほしかったのでは?」という意地悪な質問も重ねてみたが、「実は僕も『エピソード7』のプロデューサーのひとりだから、そんなことは言えないね」と苦笑い。「とはいえ、『スター・トレック』は、J.J.と共に心血を注いできた大事なプロジェクトだから、十分大切に思っている。それにJ.J.は以前、『M:i:III』を監督し、続く『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』(2011年)では、他の人に監督を譲り、自分は製作として参加した。次回の『スター・トレック』もそれと似たようなものだよ」。

ちなみに、バーク・プロデューサーは、『スター・トレック』3作目と、『スター・ウォーズ エピソード7』、さらに『ミッション:インポッシブル』5作目の製作を同時進行させる。これぞ、ハリウッド最強のラインナップでは?「これから忙しくなるよ。だから僕としては今、その3作のセットを、全部同じ地域で組めないかと目論んでいる。そうすれば僕もJ.J.も行き来がしやすくなるから」。また、「それらが始まると、プライベートの時間が全くなくなってしまう。僕、独身なんだけど、次の作品に入るまでの5ヶ月間で妻を探そうと必死なんだ。日本で誰かいないかな?」とおちゃめにアピール。「日本人の妻を迎えれば、親戚みんなと引っ越してくるよ。昨日もJ.J.と、どうやったら日本に移住できるかなあと話していたんだ。日本は本当に世界最高の都市だから」。

さすがはハリウッドで第一線を行く敏腕プロデューサー。最後にリップサービスで締めるあたりも卒がない。パート3の情報についての収穫はあったが、まずは世界各国で大ヒット中の『スター・トレック イントゥ・ダークネス』を劇場へ見に行ってほしい。本作でまた、J.J.とプロデューサーの株が上昇すること間違いなしだから!『スター・トレック イントゥ・ダークネス』は現在も一部の映画館にて公開中。

撮影:石井健